『徹底解明!ここまで違う日本と中国』
−中華思想の誤解が日本を亡ぼす
石 平 vs 加瀬英明[著]

株式会社 自由社
平成22年7月10日 初版第一刷発行
ISBN978-4-915237-56-0
1500円(税別)

まえがき

石 平

 中国には、昔から、「忘年交」という三文字熟語がある。「年齢の差を忘れた心の交遊」という意味である。たいへん僭越な言い方ではあるが、先輩の私は、本書の対談相手の加瀬英明先生とは、まさしく「忘年交」のお付き合いである。
 初めてお目にかかった時から、先生はずっと、私にとっての論壇生活の指南役であり、父親のような良き理解者であり、国際問題・外交問題を学ぶための良き指導教官でもあった。
 ときおり、公的あるいは私的な会合などでお目にかかっては、色々なことについて先生に教えを請いながら、いつも知的刺激に満ちた、当意即妙にして趣のある対話を楽しませていただいている。

 そのなかで、私がつねに感銘を受けているのは、加瀬先生の驚くほどの博学多識ぶりと、深い洞察力である。ユーモアのセンスにあふれた短い言葉で、問題の本質を一刀両断されるのは、先生のいつもの流儀であるが、その切れ味の鋭さは痛快としかいいようがない。
 それにもまして驚かされるのは、中国の歴史・文化に対する、先生の深い造詣と、中国人の深層心理に対する、鋭い分析である。
 青年期まで中国で育ち、混迷の実態を身をもって体験してきた、元中国人の私は、加瀬先生とお話ししていると、いつも心の底まで見透かされるような、裸同然の感覚に陥り、たいへんな知的緊張感におかれてしまう。
 もちろん、先生の中国論に触発される形で、私自身も「中国とは何か」について、より深く考えさせられることが、再三だった。また、「日本とは何か」についても、先生から多くのことを教わっている。

 このような経緯もあり、私はかねてから、一度「対談」の形で、加瀬先生とじっくりお話しして、先生の中国論とに日本論の真髄を余すところなく引き出すことができれば、と願っていた。
 その身のほど知らずの願望を、このたび、叶えることができた。平成二十二年、桜の咲く季節から風薫る初夏にかけ、のべ四回、加瀬先生と膝を接して、意見を交えることができたのである。
 私にとって、それはまさに知の冒険ともいうべき、えがたい体験であった。
 毎回、いろいろと準備したうえで、「決死」の覚悟で先生の御自宅へと足をはこび、戦々恐々の気持ちでテーブルをはさむ有様だった。だが、対談を終えると、冒険から「生還」した後の安堵感と、知的充足を得て無上の法悦に浸っている、別人のような自分がいた。

 この濃密な対談で、私と加瀬先生は、両国の長い歴史を念頭におき、今の現実も踏まえて、「中華思想とは何か」「中国と日本とはどう違うか」「美化された中国イメージの裏には何があるのか」などについて、心ゆくまで、縦横無尽の対話ができたと思う。
 すくなくとも、私自身にとっては、「中国」と「日本」について、もう一度深く掘り下げて考える大変貴重な機会であり、日本と中国との相違をより深く認識できた、実り多い知的交流であった。

 談論風発を楽しんだわれわれの満足感は別にして、この対談は果たして、「中国と日本」という永遠のテーマに対する理解を深めるのに、役立ったかどうか? 加瀬先生の中国論・日本論の真髄を存分に引き出そうとする、私の「企て」は、果たして成功したのかどうか?
 この判定は、本書をお読みになった、読者のご感想にまかせるしかない。
 だが、とにかく、中国問題、あるいは日中関係を理解したいと考えておられる皆様には、本書はきっとお役に立つと信じている。
 これまで語られることのなかった中国の虚飾を、誰はばかることなく剥ぎ取ってみせたからである。意外な発見の連続に、嘆声をもらされるにちがいない。友人知己の方がたにも、是非ご一読くださるよう、お奨め願えればと思う。

 最後に、私のような若僧との対談に、快く応じて下さった加瀬先生、対談の企画とセッティングから本書の編集まで、多大なご尽力をいただいた自由社の石井竜生・井原まなみの両氏、および本書を手にとって下さったすべての読者の皆様に、心からの御礼を申し上げます。
 本当に、有り難うございました!


<目次>

はじめに  石 平

1 食から知る日・中文化の違い

 食べることに執着する中国
 『狂人日記』と「尚餐」
 漢民族は「食」が宗教
 共産中国の第一印象は「太平天国」
 毛沢東はマルクスを読んでいない?
 料亭の懐石料理より下町のラーメン
 ご飯を「すませてきました」という日本人
 神社は清い水・道教は豚足スープ

2 漢字に新しい生命をあたえた大和言葉

 「BC」「AD」の新解釈
 「漢字」は悪魔の字である
 「漢字」ではなく「秦字」のはず
 ルビは傍らに立っている教師
 清いせせらぎのような仮名
 宦官と纏足を拒否した日本人
 先祖のお墓に精力剤と「愛人」
 亡母の墓には韓流スターとの「結婚証明書」
 簡体字に秘められた狙い
 「圧巻」と「官禍」が中国の発展を阻んだ

3 想いを共有する和歌と自己陶酔の漢詩

 個人の体験でしかない漢詩
 共通体験を愛でる和歌と俳句
 酔わない中国人・酔ったフリをする日本人
 似た者どうし、米・中の喧嘩
 羊と豚をつれ帰らなかった遣唐使
 龍の爪が一本足りない!
 韓国の反日は易姓革命の宿業
 天下の全財産を私有する皇帝と共産党
 天皇と国民が一つに結ばれてきた日本
 日本語を借りないと成り立たない現代中国語
 皇帝の下には使用人(官僚)と奴隷(人民)しかいない

4 「公」のある日本と「私」しかない中国

 「孝」より「忠=公」を優先した日本
 中国の「忠」は「公」に非ず、皇帝一族に対するもの
 ウソを奨励し「公」を無視した孔子
 孔子が日本に生まれ変わったら大喜びする
 十七条憲法は世界最古の民主憲法
 「大きな皿に盛った砂の山」の中国、「さざれ石が集まって巌となる」日本
 世界の常識が通じない「中華民族」というフィクション
 アメリカ人は一度も中国を分かったことがない
 儒教中華の巨大な軍事力は、ナチ・ドイツ以上に恐い!

5 地球上の国は全て自分のものとする中華の幻想

 南京条約まで国名がなかった中国
 華夷秩序を拒否した聖徳太子の快挙
 中国は戦って殺す男の論理・日本は優しく包みこむ女の理論
 日本は正邪ではなく、美しさと優しさが評価の基準
 北京料理共和国と北京ダックの国旗
 国名に「人民」とか「民主」が入っている国に、ろくな国がない
 接待上手は策略か芸術か
 人民服・総統服・詰め襟・ジャンパー姿の滑稽な努力
 西洋美術館がひとつもない中国
 茶碗ひとつと城を交換する武士の美意識

6 人民は餓死・毛沢東は連夜のジャズ宴会

 労働を嫌った中・朝の支配階級
 「毛先生」は洪秀全の生まれ変わり
 毛沢東の死を「巨星墜つ」と大書した朝日新聞
 外務省の意図的誤訳から発した国連信仰
 美しいお菓子は日本女性の自由から生まれた
 醤(人肉)を毎日食っていた孔子
 父がくれた英英辞典と分厚い漢和辞典
 老子の「小国寡民」と正反対の中国共産党
 老荘思想の譬え話“肥った猪”

7 残酷すぎる政治から精神文化は育たない

 私欲を偽装する「明哲保身」
 「春眠暁を覚えず」に騙されてきた日本のリーダーたち
 三千年にもおよぶ「役人天国」
 『源氏物語』もシェイクスピアも生まれなかった中国
 面白いだけの『三国志』・仏教の無常を説く『平家物語』
 「故宮」の雑技団的な工芸品
 「相手“に”悪い」と思う日本人・「相手“が”悪い」と思う中国人
 太平天国を絶賛した毛沢東やマルクス・エンゲルス
 ゲルマンの食人習慣がカトリックの聖体拝領に
 老子の「天は無欲」を実践している日本の天皇
 禅宗も日本で完成されて輝いた
 『三国志』がつづる劉備と曹操の人非人エピソード
 徹底した悪の精神が中国の歴史である
 庶民が主役の歌舞伎・皇帝と官僚だけの京劇

8 計算高い中国人の反日活動

 黄色人種がいちばん偉く、次は白人・黒人の順
 イスラム教・キリスト教の対立と同じ日中関係の不毛
 反省なき劣等感が生む実りのない攻撃と差別
 黒人嫌いの中国人はオバマ大統領をどう見ているか
 中国人にとり一番我慢できないのは日本人
 中国の愛国運動は他国とは相容れない「天下イズム」にもとづく
 白髪頭が一人もいない最高人民会議の奇観
 南京博覧会の翌年に滅びた清朝と上海万博後の中国の運命
 「中国で初めての国際博」と虚偽報道したNHK
 高齢化の中国より、出生率の高いアメリカが勝つ
 中国よ大帝国幻想を捨て「小国寡民」をめざせ

おわりに  加瀬英明



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