加瀬英明のコラム

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アジアを先導する日印の“和”の精神

Date : 2020/09/9 (Wed)

 武漢(ウーハン)で発生した新型コロナウイルスの感染が全世界に拡がるなかで、中国が傍若無人に振舞うために、アメリカや、ヨーロッパをはじめとする諸国で、中国を遠ざける「チャイナ・ディスタンス」が、合い言葉となっている。

 人と人の間隔をとるソシアル・ディスタンス(社会的距離)を、言い換えたものだ。

 国際的な“村八分”だ。このような流れのなかで、インドが中国に代わるアジアの超大国として、認識されるようになっている。

 これまで、インドは人口で中国に次いできた。中国は習近平政権になってから、“一人っ子政策”が少子高齢化をもたらしたために撤回したが、インドが2020年代中に中国を追い越して、世界最大の人口をもつことになる。

 インドは毛沢東政権の中国が、1950年代にチベット、ウィグル(現・新疆ウィグ ル自治区)を侵略して中国領としたために、中国と国境を接するようになった。

 狡猾な周恩来首相が「平和五原則」を唱えたのに、すっかり騙されて油断したところを、1962年に人民解放軍に急襲されて、九州ほどの面積がある領土を奪われた。そのうえ中国が、インドの天敵であるパキスタンと結んできたために、インドにとって中 国は宿敵となった。

 私は1980年代に入ってから、インドに通って、インド政府、軍と親しくしてきた。

 アメリカがソ連と対決するために、パキスタンが一員だった南東アジア条約機構(SEATO)と同盟関係にあったために、インドはソ連と結ばざるをえず、日印関係は疎 遠になっていた。私は日本とインドが手を携えてアジアを導くべきだと、信じてきた。

 それなのに、日本ではインドは“知られざる国”である。インドは中国と並ぶ古い歴史を、持っている。

 だが、中国とまったく異なっている。日本と同じ、平和な“和”の文明である。インドを理解するためには、インド神話の壮大な古代叙事詩である、『マハーバーラタ』を 知らなければならない。口伝で伝えられて、紀元前4世紀になって成立したといわれる。日本の『古事記』に当たるものだ。

 もちろん、仏教はインドで発祥した。仏教は古代のバラモン・ヒンズー教のコピペのようなものであって、今日でもほとんどの仏教語が、古代インドのサンスクリット語の 音写語である。

 日本人なら中国の行動様式を知るために、『孫子』をよく知っている。

 今日でも、インド外交の鋳型をつくっているのは、前4世紀の名宰相であったカウティリアによる、“カウティリアの実利論”といわれる、『アルタシャーストラ』である。

 アウティリアは、アレキサンダー大王がインドに残したギリシア軍を破り、ナンダ朝 を倒してマウリア朝を創立したチャンドラグァタ王の名参謀であり、後に首相となった。

 インドは、中国の集権思想である儒教にもとづく中華主義と違って、自国を世界の中心だとして他国を見下すことがない。日本のように国外の文化を尊重する。  

  私たちはヒンズー教の分派である仏教を通じて、インド人と同じ精神的な波長をもっている。

  『アルタシャーストラ』は、外交の駆け引きや、術策を説いているが、基本は平和主 義である。いまでも、カウティリアはインド人の潜在意識のなかで、生きている。

 インドは多様であるが、民主主義国家である。日本と同じ価値観を、分かち合っている。

 インドが中国を凌ぐ超大国となる。日印の兄弟関係を築きたいと思う。

 インド神話について、『マハーバーラタ入門』(勉誠出版、2019年、1800 円)という、手軽で、格好な手引き書があるので、おすすめしたい。

現行憲法では、わが国の領土「尖閣諸島」は守れない

Date : 2020/09/8 (Tue) 

 中国の重武装した海警船が、100日以上も尖閣諸島の接続海域を、我物顔に航行しているために、政府は危機感をたかぶらせている。

 中国の共産政府は尖閣諸島を長いあいだにわたって、日本領だと認めて、中国の地図 にも記載していたのに、国連経済開発委員会がこの海域に石油が埋蔵されていると発表 すると、中国の固有の領土だと主張して、海警船や、武装漁民の漁船を送り込むように なった。

 今年に入って、メイド・イン・武漢(ウーハン)のコロナウィルスが世界の関心を奪う ようになると、中国は中印ヒマラヤ国境でインド軍を襲撃し、南シナ海に不法に埋め立 てた7つの人工島を軍事基地化して、南シナ海の支配を急ぐかたわら、ベトナム、フィリピンなどの島々を脅かし、台湾に対する軍事威嚇を強めつつ、イギリスと国際条約に よって約束した香港の1国2制度を破棄して、事実上、併合した。傍若無人に振舞っている。

 尖閣諸島が危い。尖閣諸島は沖縄県石垣市に属している。私は40年以上も、尖閣諸 島最大の魚釣島に陸上自衛隊1ヶ中隊を常駐させることを主張してきたが、政府は「中 国を刺激してはならない」といって、石垣市職員も含めて、日本国民が上陸することを 禁じている。

 私は年2回、ワシントンに通っているが、ホワイトハウスの国家安全会議(NSC) や、国防省の幹部が、「なぜ、日本国民の上陸を禁じているのか、理解できない」という。私にも理解できないから、答えようがない。

 私は5年前まで海上保安庁の政策顧問を、つとめていた。自衛隊の部隊を置けないの なら、海上保安官を常駐させられないのか。

 南鳥島は本州から1800キロ離れた、太平洋にポツンと浮ぶ、小さな島だ。ここには、海上自衛隊の派遣隊が12人常駐している。なぜ、南鳥島に自衛隊を置いているのに、尖閣諸島に海上保安官を常駐させられないのか。

 現行の「平和憲法」が、日本を骨抜きにして、腰抜けの国家に変えている。いまでも 政府は「外国に脅威を与えない、必要最小限度の防衛力を保有する」といっているが、 いったい日本の領土である魚釣島に、自衛隊の小部隊を置くことが、外国に脅威を与えることになるのだろうか。

 古代ギリシアの都市国家だったアテネは、オリンピックの発祥の地だが、その富のために、しばしば周辺の諸国から脅かされた。

 デモステネスはアテネの名将で、優れた戦略家として、歴史に名を刻んでいる。

 デモステネスは紀元前353年に著わした書のなかで、「民主国家のなかでは強者も 弱者もその権利を、法律によって守られている。だが、国際関係では法は無力だ。強い 者が弱い者を、屈服させる。国内では法が正義であるのに対して、国際社会では武力が 正義を定義する」と述べて、「口先だけで平和を愛すると唱える者は、平和と人民の敵 として怖れなければならない」と、断じている。

 そうデモステネスが警告してから、2373年の歳月がたっているが、残念なことに、人類社会の基本は変わってない。

 現行憲法のもとで、「必要最小限度の防衛力を整備する」というが、護憲派の善男善 女は家族がコロナウィルスに感染した時に、病院に「必要最小限度の医療をお願いしま す」と、頼むものだろうか。

 現行憲法は日本を外国から侵略を誘う、怯懦な国家としている。改憲を急ごう。

いま、大学の将来が大きく揺らいでいる。

Date : 2020/09/2 (Wed)

私は教育問題に、深い関心を寄せてきた。これまで拓殖大学、鈴鹿国際大学客員教授、東京国際大学特命教授をつとめてきた。

 アメリカでは、コロナウイルスの感染拡大がとまらないなかで、5月から「ブラック・ライブス・マター」(黒人の生命を守れ)を求める抗議デモがひろがっているわきで、大学制度の存続が問われるようになっている。

 もっとも、コロナによるパンデミックに襲われる以前から、アメリカでは大学や大学院を中心とする高等教育に対する信頼が揺らいでいた。コロナの襲来によって、大学に対する批判が加速されている。

 6月に、トランプ大統領が「連邦政府の職員採用に当たって、学歴より能力を重視する」と述べた。

 大学のなかでも、この十数年、経営学修士号(MBA)を授与してきた、著名なビジネススクールに対する風当たりが、強まっていた。20世紀末から金融が製造業を凌ぎ、さらに情報産業が首座を占めて、産業構造が激変した。ビジネススクールで教えてきた知識が老朽化して、権威が褪(あ)せた。

 時代が求める教育とは

 このような流れのなかで、ビジネススクールを志望する学生が減っている。学位が職場で役に立たない。

 アメリカの4大会計事務所のアーネスト・アンド・ヤング社は、MBA保持者の最大の雇傭主だったが、ビジネススクールと協力して独自の経営学の教科を創設して、証書を授与するようになっている。

 高等教育の質が低下したというより、時代遅れになっている。

 といって、大学が無用になったわけではない。大学が古い殻を破って再生することが、求められている。高等教育の形とビジネスモデルが、変革を強いられている。

 デジタル技術によって電話交換手が不要になり、オンライン予約が旅行代理業から顧客を奪った。高等教育の分野でも、同じことが起ろう。

 9月の大学入学期を前にして、すでに全米で学費の値くずれが起っている。

 今日の大学の形が生まれたのは、中世のヨーロッパだが、それ以来、基本的な形が変わっていない。

 コロナウイルスによるロックダウン(外出禁止)によって、オンライン、あるいはリモート・ティーチングが行われているために、大学のありかたが見直されている。学生が登校せずに、自宅でオンラインによって講義を受けるようになってから、授業料を値下げすべきという要求があがっている。

 リモート・ティーチングが普及して、パッケージとして商品化すると、はるかに安い費用で学ぶことができる。高等教育が価格破壊の高波によって、洗われるようになろう。日本でも、大学の授業料は高い。

 ディスタンス・ラーニングとも呼ばれているが、パッケージをダウンロードして学ぶようになれば、なぜ、大学に高い学費を納めなければならないのか。

 これからは、おそらく既存の大学とオンライン・ラーニングのハイブリッドのような形になるのだろう。

 スタンフォード、エール、MIT、ハーバード、オクスフォードなどの多くの大学が、1500以上にのぼる広い分野にわたって、無料のオンライン・コースを提供している (http://www.openculture.com/freeonlinecourses.)。有料で免状も取得できる。

 リモート教育の欠陥

 もっとも、リモート教育には欠陥がある。

 教室であれば、学生たちの表情を見ながら、講義を進められる。ズームは一方的に伝えることができても、会話ができないのと同じことだ。私たちは幼時から相手の顔を見ながら、話す訓練を受けてきた。オンラインは鏡に向かって自分の顔を見ながら、話すようなものだ。

 教育は「教える」「育てる」という、2つの言葉から成り立っている。オンライン教育は同時に、数百、数千人を教えることができる。教員が精緻に組み立てられたロボットでもよいが、学生を育てることができない。

 今日の大多数の大学教授は、知識のみによって採用されているから、教えることができても、育てることができない。個性のない教授ばかりだから、個性がない学生ばかりだ。

 学生が共に学ぶことによって補完しあい、競うことによって、力を磨くことができる。オンラインではテレビを観ているように、気が散漫になって、集中することが困難だ。

 6月にアメリカで発表された調査では、ロックダウン中にオンラインで学んだ学生の75%が、強い不満を表わしている。

 豊かさが大学の数のインフレを招いた

 アメリカでは1950年代から、豊かな社会が到来したために、大学の数が爆発したように増え、その後も増え続けた。

 私は1970年代から、シカゴ大学、ペンシルバニア大学、オレゴン州ポートランドのルイス・アンド・クラーク大学(カレッジ)から、講師として招聘されたので、アメリカにおける大学教育に関心をもった。

 ルイス・アンド・クラーク大学は西海岸の名門校だが、私が敬愛する松岡洋右氏(満鉄総裁、外相)の出身校であるオレゴン大学法学部を吸収していた。松岡氏が幼時に渡米して、苦学力行したことを偲んだ。

 1965年に、アメリカの公立大学の学生は397万人を数えたが、それから僅か10年以内の1975年に、883万人に2倍以上に増えた。

 カリフォルニア大学はマンモス校として知られるが、1958年にはロスアンジェルスとバークレイの2つのキャンパスしかなかったのに、1965年までにサンタバーバラ、デイビス、リバーサイド、サンディエゴ、サンタクルス、アービンの八つのキャンパスに拡がった。

 大学の急増は学生のレベルダウンをもたらした

 大学の数が急増して、質から量の時代に入ったために、大量の“俄か教授”が誕生した。

 日本においても、大学の数のインフレが進んだ。その結果、貨幣経済のインフレによって貨幣価値が下落するのと同じように、教員、学生の質が低下した。

 この春に、私の親しい友人が、男性の孫を連れてきた。青年は緊張して固くなっていたが、東京の6大学の3年生で、私から企業に推薦してほしいということだった。

私は手渡された履歴書に目を通して、愕いた。長所の欄に「優柔不断」と、書かれていた。どういう意味かたずねたら、「優れており、柔軟で、不断の決意をもって物事に当たる」と、説明した。

 遊び心からそう解釈したのだったら、見所があると思って感心しかけたが、本人は真面目だった。

 そのうえ、誤字が多かった。さらに質問すると、当然のように「新聞も本も読みません」といった。クラスメートたちも、新聞、本を読まないということだった。新聞は読まなくてもよいし、いや、読まないほうがよいが、古来から学習と読書は一体のものだ。

 英語や、外国語にも、関心がなかった。書く力も、読解力もない。戦前であればいうまでもなく、50年前であったら、大学生として通用しなかった。

 人格の向上を求める

 多くの高校や大学の教員が教えることに終始して、学生を育てる使命感を喪失しているのだろう。青少年に人として使命感を植えつけることが、家庭と学校の役割であるはずだ。

 貧しかったころは人間が主役であったのに、豊かな社会が到来すると、安楽な生活のみ追い求めて、人にかわって金銭が主役となったために、大学が営利企業になった。

 平成に入ってから、日本が活力を失って「失われた30年」とか、「第2の敗戦」と呼ばれるようになったのは、大学が劣化したからではないか。

日本を守る⑤ バイデン大統領なら米国は左傾化

Date : 2020/08/17 (Mon)  

 バイデン大統領が実現したら、米国は左傾化することになる。

 なぜ、民主党が77歳になる“アルツハイマー老人”を担ぐことに、なったのだろうか?

 今年はじめの民主党の大統領候補を選ぶ、全米にわたる党集会で、社会主義者を自任するバニー・サンダース議員が、国民皆健康保険、大企業に対する増税、国防費の大幅削減、大学教育の無料化など、米国を北ヨーロッパ型の福祉国家にすることを看板として掲げて、広い支持を集めた。

 民主党の上層部は、トランプ大統領を敵とするより、サンダース議員を最大の脅威としてみて、「サンダース阻止」に全力をあげた。

 予備選挙ではバイデン氏は下位にいたが、鎬(しのぎ)を削っていた候補たちがレースから降りて、人畜無害で、オバマ政権の副大統領だったバイデン氏を担いだ。

 ところが、民主党はサンダース議員の支持票を確保するために、大統領選挙の公約にサンダース路線を取り組むことを強いられて、左へ傾くようになっている。今年に入ってから下院議員補欠選挙、州などの地方選挙で、サンダース派が多数選出されている。

 サンダース議員は旧ソ連時代のソ連や、キューバのシンパとして知られた。

 民主党はもともと労働者の党であってきたのに、ウォール街の大企業や、多国籍企業に奉仕する、カネまみれのグローバリズムの党となっていた。

 民主党政権が復活した場合に、時間とともに「中国総スカン」が水で薄められて、グローバリズムが力を盛りかえして、中国と「共存」しようとなる可能性が高い。

 民主党は公約では、「ヨーロッパ、日本などの同盟諸国を重視する」といいながら、土台をサンダース支持者という白蟻によって蝕まれて、内に籠るようになろう。

 世界の主要な国のなかで、米国の大統領選挙について、日本ほど一喜一憂する国はない。

 戦後、米国によって下賜された“日本国憲法”を、73年にわたって頑なに奉(たてまつ)って、国防を米国にすべて委ねてきたが、国民の多数を占める護憲派が、米国を信じて、隷属することを選んできたからである。

 日本の経済規模の半分しかない英国か、フランス並みに、核ミサイルを積んだ原潜か、空母を持っていれば、米大統領選に狼狽(うろたえ)ることはないはずだ。

日本を守る④ 77歳バイデン氏の弱点 「認知症」疑惑、セクハラ告発、札付き息子

Date : 2020/08/17 (Mon)

 11月3日に、ジョー・バイデン前副大統領が当選したら、超大国アメリカに認知症(アルツハイマー)の大統領が出現することになる。

 世界のアルツハイマー患者にとって励みとなろうが、ホワイトハウスがアニメハウスとなろう。

 すると、日本はこれまでのように米国を生命綱として縋ることができなくなって、慌てて自立することを強いられるが、時間がない。

 バイデン氏は大統領に就任すると、78歳なるから、自ら「4年1期しかつとめない」といっている。そして女性票をとるために、女性を副大統領候補に登用することを、明らかにしている。そして「ブラック・ライブス・マター(黒人の生命を守れ)」の抗議デモが、進歩的な白人も含めて全米にひろがっているのに便乗して、黒人女性を選ぶとみられる。

 バイデン氏が大統領となったら、認知症が進んで、任期中途で辞任するかもしれない。黒人女性を選んだら、米国ではじめて黒人奴隷の曽(ひ)孫の大統領が誕生することになる。

 オバマ大統領は、アフリカのケニア人を父、白人を母としたから、別格だった。奴隷の曽孫となると、アメリカを「ホワイト・スーパーパワー(白人の超大国)」として見立てまい。よくとも悪くとも、白人は世界に対して責任を負っていると考えるが、黒人たちにそういう意識はない。

 選挙は水物だから、断言するのは難しいが、私はトランプ大統領が辛勝すると思う。

 選挙戦が本格化したら、バイデン氏がボロボロ、失言する可能性が高くなる。バイデン氏にとって、これまでコロナウイルスの大規模感染が政治集会をタブーにして、自宅の地下室のスタジオからテレプリンターを読みながら演説をすることを強いられたのは、拾い物になった。

 バイデン氏は、元女性秘書から10年前以上にスカートのなかに手を入れた、セクハラで訴えられているが、息子のハンター・バイデン氏という、臑(すね)に大きな疵(きず)を持っている。

 ハンター氏は父が8年間にわたって副大統領をつとめた時に、コンサルタントとして中国、ウクライナ政府から多額のカネを貰っていた“マネー・ハンター”として、ワシントンで有名だった。

 トランプ陣営は大統領選が本格化するまで、隠し玉として温めている。

日本を守る③ 優勢バイデン氏「認知症」疑惑

Date : 2020/08/17 (Mon)

 11月3日の米国大統領選挙という時限爆弾が、チクタク時を刻む音が、太平洋の対岸から響いてくる。

 共和党のドナルド・トランプ大統領に挑戦する、民主党のジョー・バイデン前副大統領の、いったい、どちらが勝つことになるのだろうか?

 この数か月の米国の世論調査では、バイデン氏がトランプ大統領を引き離している。

 もし、トランプ大統領が破れたら、米国の対中政策がどう変わるのだろうか? トランプ政権のように、日本を重視しなくなるのだろうか?

 中国については、共和、民主両党とも、中国の鼻っ柱をヘシ折らなければならない、ということで一致している。

 オバマ大統領は、バイデン副大統領とともに、中国を巨大市場とみて甘やかしてきたが、習近平ピノキオが米国が力を衰えさせたと誤算して、やりたい放題に振舞うのに対して、米国民の堪忍袋の緒が切れたために、バイデン氏もトランプ大統領と「アンチ・チャイナ(反中国)」を競うようになっている。

 バイデン氏はコロナの大感染によって選挙集会を開けないために、自宅の地下室につくったスタジオからテレ演説を行っているが、習近平中国主席を「thug(サッグ――大悪党、大暴漢)」と呼ぶようになっている。

 私は4年前にも、トランプ氏が大統領選挙で勝つことを予想した。それには、2つの理由がある。

 8月に入ってから、民主党というと、ネバー(反)トランプ陣営の代弁新聞の『ニューヨーク・タイムズ』紙が、大統領選挙の恒例となっている、両候補の一騎打ちであるテレビ討論会を、中止するべきだと主張した。

 77歳になるバイデン氏は、かなりひどいアルツハイマー(認知症)を患っている。3月のはじめの火曜日に、13州で民主党大統領候補を選ぶ集会がいっせいに行われるスーパー・チューズデイが開かれたが、「いま、私は上院議員選挙に挑戦している」と述べ、他の会場では、「今世紀に入ってから、1億2000万人の米国民が銃によって死んだ」「私が大統領となったら、7億5000万人の働く女性を応援する」といった。米国の人口は、3億2000万人だ。

 もう一つは、副大統領時代に息子のハンター氏が中国からコンサルタントとして、多額のカネを貰っていた疑惑だ。

日本を守る② 欧米で広がる「チャイナ・ディスタンス」

Date : 2020/08/17 (Mon)

 トランプ政権のポンペイオ国務長官が、カリフォルニアのニクソン大統領記念館を舞台として選んで、中国を痛烈にこき下ろす演説を行ったのは、まさに象徴的だった。

 私がポンペイオ演説のなかでもっとも注目したのは、「アメリカの対中政策はオバマ政権に至るまで、惨憺たる失敗だった」と述べたところだった。アメリカが中国を甘やかしたために、今日の中国という巨大な妖怪をつくりだしたというのだ。

 第二次大戦後の米中関係が始まったのは、1972年にニクソン大統領が北京を訪問して、全世界を驚かせた時に始まった。そこで、ニクソン記念館を選んだのだった。

 日本にも中国という妖怪をつくりだした、大きな責任がある。

 私はそれなのに日本の大手テレビが、ヒューストンの中国総領事館の閉鎖と、ポンペイオ演説を報道した時に、「米中の覇権争いが激化している」と解説していたのを聞いて、吃驚(びっくり)した。

 いったい日本はアメリカと、中国のどっちの味方なのだろうかと、訝(いぶか)った。覇権は「権謀をもって獲得する権力」という悪い言葉で、米中をともに悪役としてみたてている。高見の見物をしている。

 習近平主席は身から出た錆(さび)、自業自得だが、追い詰められている。

 いまや、中国はアメリカでも、ヨーロッパでも“村八分”にされている。

 武漢(ウーハン)ウイルスが世界中にバラ撒かれてから、日本でも人と人との社会的距離(ソシアル・ディスタンス)をとるようになっているが、アメリカでも、ヨーロッパでも投資や、経済、技術移転について、中国と縁をぶち切ろうというチャイナ・ディスタンスが、合い言葉となっている。

 習主席は日本から尖閣諸島を奪うことによって、アメリカにひと泡(あわ)吹かせて、中国国民の喝采を浴びようとするだろうか。

 台湾を攻撃するかと、危惧されている。中国は3年前に、世界ではじめて遠い月の裏面に無人探査機を着陸させたが、人民解放軍に幅180キロの台湾海峡を渡る能力はあるまい。失敗すれば、習政権の生命(いのち)取りになろう。

 そのかわりに、台湾が南シナ海に実効支配している、小島の太平島を攻撃して奪取する可能性がある。ここには台湾軍の守備隊約200人が、駐留している。

日本を守る① 習近平 台湾、尖閣攻撃 国内支持獲得へ

Date : 2020/08/17 (Mon)

 任期をあと2ヶ月あまり残した、トランプ政権が中国共産政権の打倒へ向けて、アクセルをいっぱいにふかしている。

 7月にトランプ政権が、テキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じた翌日、ポンペイオ国務長官がカリフォルニアのニクソン大統領記念館を訪れて、「このまま中国を放置しておけば、自由世界が滅びる。世界はどちらかを選ばねばならない」という意味の、衝撃的な演説を行った。

 といって驚くことはない。トランプ政権は昨年、ペンス副大統領が中国の覇権主義を、歯に衣(ころも)を着せずに糾弾したのをはじめ、容赦せずに中国を追い詰めてきた。中国めがけて、5ノ矢、6ノ矢と、つぎつぎと矢を放ってきた。

 これは、習近平主席が招いたことだ。習主席はアメリカが力を弱めていると誤算して、舞いあがって、南シナ海の内海化を進め、周辺諸国を脅かすかたわら、ヨーロッパまで勢力圏に組み入れる、中国製シルクロードである一帯一路戦略を強行してきた。

 習主席はことあるごとに、自信満々と「中国共産党は中華民族の偉大な復興を成し遂げた」と演説し、「軍事闘争の準備を最重要視する方針を堅持する」と、訴えてきた。

 私は2年前の12月に、本誌の連載のなかで「トランプ政権の真意は、中国共産党体制を打倒することだ」と、書いた。かつてレーガン政権が、ソ連を1992年に崩壊させたように、共産中国を倒すことを目論んでいる。

 そして、私はさらに「米中対決の主役は、中国にハイテクノロジー(先端技術)が流出するのを断ち切ることだ」と、書いた。

 私の予想通りに、アメリカ“白頭鷲”と中国“暴れ龍”の決闘が最終ラウンドを迎えた。

 習主席は共産中国の歴代の指導者のなかで、もっとも愚かな最高権力者だ。

 中国にアメリカと渡りあう力がない。絶望的だ。中国はハイテクの背骨である、半導体製造装置を国外に頼っている。アメリカ、日本が80%以上を占め、オランダなどがつづいている。中国には5Gの半導体を設計する、能力もない。

 中国古代の漢籍に、「虎ノ背ヲ駆ル者ハ、降リルコトガデキナイ」という戒めがある。虎の背から振り落とされてしまったら、喰い殺される。

 そこで国内の支持をとりつけるために、台湾か、尖閣諸島を攻撃するといわれている。

人種差別問題に揺れるアメリカ社会の闇

Date : 2020/08/07 (Fri)

 アメリカ全国の都市で、「ブラック・ライブス・マター」(黒人の生命(いのち)を守れ)という、抗議デモが盛りあがっている。

 5月にミネソタ州で数人の白人警官が黒人の容疑者を取りおさえる時に、窒息死させたことが発端となったが、イギリス、フランスなどにも飛び火している。

 アメリカ各地で奴隷制の支持者や、奴隷の所有者、奴隷貿易で財をなした歴史上の人物の銅像が引き降ろされて、撤去されている。

 アメリカの3大名門大学は、ハーバード、エール、プリンストンといわれるが、私が留学したエールは創立者が奴隷商人だとか、プリンストンのウィルソン研究所は第1次大戦時のウィルソン大統領が人種差別主義者だったことから、改名する圧力が高まっている。

 首都ワシントンも、初代ワシントン大統領が数百人の奴隷を所有していたことから、名を変えるべきだという声があがっている。

 アメリカが溶解しつつあるのだろうか?

 トランプ大統領は歴史的な名前を改めたり、銅像の撤去に反対している。11月の大統領選挙で、民主党の大統領候補のバイデン前副大統領が勝ったら、どうなるだろうか?

 日本はどうだろうか? 私は有斐閣の『六法全書』を持っているが、日本国憲法の扉のページに、独立宣言文を起草したトマス・ジェファーソンによる『アメリカ独立宣言文』が、初版から今日まで掲げられている。

 編著だった我妻栄、宮沢俊義東京大学教授が占領軍の木偶(でく)で、黒人を蔑視していたためだが、ジェファーソンは多くの奴隷を所有し、奴隷の悲鳴を聞きながら、独立宣言文を書いたのだった。『六法全書』から削りたい。

 パリでも市民が連日のようにパリ最大の共和国広場を埋めて、「人種差別反対」を叫んでいる。共和国広場といえば、残虐きわまりなかったフランス革命で、無辜のマリー・アントアネット妃がギロチンによって、市民が歓声をあげるなかで処刑された場だ。

 今から101年前を振り返りたい。パリにおいて第1次大戦に勝った連合国が、敗れたドイツを裁くパリ会議が行われた。日本は連合国の一員だった。  

 アメリカのウィルソン大統領が議長だった。戦後の国際秩序を守るために、国際連盟が創設されることになり、日本全権団が連盟規約に「人種平等条項」を加えるように提案した。日本案に11ヶ国の小国が賛成し、アメリカ、フランス、イギリスなど植民地帝国の5ヶ国が反対し、多数決で採択されようとした。

  ところが、ウィルソン議長が「このような重要な決定は、全会一致でなければ認められない」といって、日本案を葬った。

 日本全権団は、今日、共和国広場を埋めた同じパリ市民から、罵声を浴びせられた。

 アメリカが奴隷制度を廃止したのは、明治元年の5年前だった。フランスが奴隷制度を廃止したのは、1848年だ。フランスはアフリカに多くの植民地を持ち、アメリカへ奴隷を輸出して巨額を儲けた。ボルドー港が奴隷貿易の中心だった。私はボルドーのワインを飲みたくない。

 アメリカの黒人の1人ひとりが、奴隷だった証しの生きた銅像だ。アフリカの黒人の肌が黒いのに対して、アメリカでは褐色をしている。奴隷の女性たちが白人の所有者によって、性的に弄(もてあそ)ばれたからだ。

 日本は中国、朝鮮半島と異なって、歴史を通じて奴隷が存在しなかった珍しい文化だ。

 初代神武天皇が橿原において即位された時に、「六合(くにのうち)(天地)を兼ねて都を開き、八紘(あめのした)(世界)をおおいて宇(いえ)(一つの家)とせむ」という、人種平等の詔勅を発せられている。

 今日、人種平等が人類の規範となったのは、日本が先の大戦で大きな犠牲を払って、数百年も白人の苛酷な支配に喘いだアジアを解放し、その高波がアフリカも洗ったからだった。

 日本は世界の光だった。私たちは大いに誇りたい

拉致被害者は現行憲法の犠牲者だ!

Date : 2020/08/04 (Tue)

 横田滋氏が、87歳で亡くなった。

 愛娘のめぐみさんが自宅の近くの海岸から、北朝鮮の工作員によって拉致されてから、43年ものむごい歳月が流れている。

 滋氏はめぐみさんが北朝鮮によって拉致されることがなかったら、幸せな家族に囲まれて、米寿を祝っていたことだろう。めぐみさんを救う戦いによって、寿命を縮められたのだった。

 滋氏は早紀江夫人と、都心のわが家に来られたこともあった。私も微力だが、拉致被害者の救出運動を手伝ってきた。

 滋氏の逝去は大手新聞・テレビによって、大きく報じられた。

 ところが、どの新聞社、テレビ局も、めぐみさんをはじめとする北朝鮮によって拉致された国民が、現行の日本国憲法の被害者だという事実に、一言も触れることがなかった。

 たしかに北朝鮮は、極悪で、無法、非道な国家だ。

 ところが、日本国憲法は日本国の安全を「平和を愛する諸国民の公正と信義」に委ねることを定めているから、日本国民に北朝鮮も、いま、日本から尖閣諸島を奪おうとしている中国も、“平和を愛好する諸国”だという妄想に、浸ることを強いてきた。

 北朝鮮はめぐみさんを日本の国土から誘拐した時には、経済が破綻した、みすぼらしい小国でしかなかった。

 もし、日本が昭和27(1952)年に、対日講和条約によって独立を回復した後に、アメリカ占領軍によって強要された日本国“偽”憲法を改正して、せめてイギリス、フランス程度の軍事力を整備していたとすれば、北朝鮮というみすぼらしい国によって、多数の日本国民が、国土から拉致されることはありえなかった。

 今日、イギリスとフランスは、それぞれ、日本のGDP(経済規模)の半分しかないが、核ミサイルを搭載した原子力潜水艦、航空母艦を保有し、国益を守るために、しばしば軍を海外に派遣して戦ってきた。

 日本はめぐみさんが日本海の海岸から、北朝鮮の諜報機関によって攫われた時に、イギリスか、フランスの経済規模を上回る経済大国となっていた。

 日本国民が北朝鮮によって拉致されたことを、専門筋が明らかにした後にも、日本社会党をはじめとする護憲政党や、大手メディアは、「そのような事実はない」といって、北朝鮮を庇(かば)っていたものだった。

 拉致被害者と、そのために毎日、悲嘆に暮れている家族は、日本国憲法と護憲派の犠牲者だ。なぜ、マスコミはこの事実に、口を閉じてきたのだろうか。

 私は声を大きくして、いいたい。めぐみさんは、日本国憲法の犠牲者だ。

 護憲派も、北朝鮮による日本国民の拉致に、手を貸してきた。

 今日、多くの心ある国民が拉致被害者を救出する運動の青いバッジを、胸につけている。

   横田夫妻に同情するシンボルマークだ。しかし、青いバッジを胸につけることで、満足してよいのだろうか。

 滋氏の死に当たって、マスコミが大きく報じた。だが、“お涙頂戴”で終えてよいものだろうか。

 私たちはその流す涙を集めて、墨をすって、国民の命と生活を守ることができる日本の憲法を、書かねばならない。

パンデミックは人類に曲り角を強いる

Date : 2020/07/31 (Fri)

 5月末に、政府が非常事態宣言を解除した。

 といって降伏式典が行われて、ウイルスが降伏文書に調印したわけでないから、戦いに勝ったのではない。

 自粛を続けると経済が崩壊するから、国民生活と両天秤にかけねばならない。

 トランプ大統領、フランスのマクロン大統領が、コロナウイルスによるパンデミック(大流行)を「戦争だ」と述べた。私もそう思う。

 パンデミックと戦争は共通している。戦争に当たっては、戦費に糸目をつけない。

 政府は国民1人ひとりに10万円を給付することを決定したが、あまりに少額だ。

 戦争だと考えれば、外出自粛によって自宅に閉じこもる人々は、感染拡大の防止に大きく貢献しているから、最前線で戦う兵士と変わらない。

 勝利へ向けて、全力をあげねばならない。コロナとの戦いも、同じことだ。

 最前線に兵器糧食を迅速に供給しなければならない。7月になっても、10万円が届いていない世帯が多い。持続化のための融資も、政府から曾曾孫(ひひまご)請けした民間会社にまかせたせいなのか、経済を支えている多くの弱小企業の救済に間に合わない。苦戦している部隊に弾薬を送るのに、煩雑な手続きを必要とするようなものだ。

 おカネがなければ刷りなさい

 戦争は帳尻を問題にしない。コロナウイルスによる危機を乗り切るために、200兆、300兆円をさらに投入するのを躊躇してならない。

 そうすれば、経済の力強いV字型回復をもたらすことになろう。

 そういうと、政府が国債を発行して借金が野放図に膨張すると、財政が破綻して国債の償還すらできなくなるというだろう。

  国が収入以上に消費すれば、借金が脹れる。読者の多くが、質実な家庭であれば支出を収入の範囲内に抑えると、心配しよう。

 5月に産経新聞が「カネがなければ刷りなさい」という、5段にわたる記事を掲載した。

 日本国民の財布やポケットには、かならず2種類の通貨が入っている。

 1つは日銀券だ。大事なお金なのに案外知られていないが、もう1つは政府貨幣と呼ばれている。

 通貨について、『通貨の単位並びに貨幣の発行等に関する法律』がある。政府が閣議によって決定すれば、天井知らずで百兆円、数千兆円と発行できる。

 政府貨幣は、これまでのところ1円から、昭和天皇御在位60年記念の10万円金貨まで、硬貨に限られているが、紙幣でも、貝殻でも、石貨でもよい。

 政府貨幣は政府の収入となる。国債を発行すると政府の借金となって、償還と利払いが発生する。デフレの時に、その範囲内で政府貨幣を発行しても、インフレを招かない。

 政府が新しい意匠の紙幣(たとえば、枯木に花を咲かせた花咲爺(はなさかじい)さん)を、発行する必要はない。政府が小切手を1枚きって、日本銀行に持ち込んで、日銀券に替えればよい。

 政府貨幣を活用しよう

 産経の記事は私の多年の戦友だった、政府貨幣を活用すべきだと説いた、丹羽春喜教授を取り上げて、「丹羽提言の検討を急げ」という小見出しを組んでいた。

 1980年代に入ってから、宍戸駿太郎、丹羽両教授を中心にして、経済学者の有志を集めて、日本経済再生政策提言フォーラムを結成して、増税、国債によらずに、政府貨幣を発行するように提言した。宍戸氏は経済企画庁計量分析官をつとめ、退官後に筑波大学副学長、新潟国際大学学長となった。

 宍戸氏がフォーラムの初代の会長となり、丹羽教授が継いだ。私が両教授のもとで理事長をつとめた。2人の敬愛する先輩を、野辺(のべ)に送ってしまった。

 日本では平成の30年間が「失われた30年」とか、「第2の敗戦」と呼ばれているが、このあいだ世界経済の年間成長率が2%から3%だったのに、日本はゼロ成長に留まった。その後も、日本経済はデフレによって苦しめられた。

 そのために日本は平成元年に、世界経済の17%を占めていた第2位の経済大国だったのに、平成30年に5.6%になって、第3位に転落した。このままゆけば、坂道を転げ落ちてゆこう。

 コロナウイルスによる外出や、営業自粛によって消費が萎縮したために物価が下がり続けて、デフレが深刻なものとなっている。

 いまこそ、政府が貨幣発行特権を行使して、巨大なデフレの穴を埋めるべきだ。

 アメリカの生き抜く取組み

 アメリカは3月に連邦議会が、政府が2兆ドル(約216兆円)を追加支出することを議決したが、コロナ危機を克服するために、さらにドルを刷っている。いまではMMT(モダン・マネタリー・シオリ―)と呼ばれており、アメリカが実践している。

 コロナ危機がいつまで続くか、わからない。

 私はコロナウイルスによるパンデミックの到来を、歓迎している。

 そんなことをいうと、顰蹙(ひんしゅく)を買うにちがいない。

 多くの人がウイルスに冒され、非正規労働者が収入を絶たれ、零細企業が倒産している。私もその1人となるかもしれないから、よく理解できる。

 コロナ危機は、1929年に始まった世界大恐慌と並ぶものといわれる。

 だが、危機を無駄にしてはならない。私たちのこれまでの生きかたに、正すべきところがあれば、改める好機としたい。

 これまで14世紀にヨーロッパを襲って、ヨーロッパの人口の3分の1が死んだといわれる黒死病(ペストとされる)から、第2次世界大戦まで、世界が大きな危機に見舞われるたびに、社会のありかたが大きく改まった。

 これまで世界は、人々の限りなく膨れあがる欲望を満たすことが、目標となってきた。目がまわるような速度で、息急(いきせ)切って疾走してきた。

 外出自粛は息切れした人々に、立ち停まって、息を整えることを強いたと思う。欲望に駆られて驀進してきた社会が、スローダウンした。そうすることによって、周囲をあらためて眺めることができる。

 コロナ危機が社会文化の変化をもたらす

 コロナ危機が終息した後に、社会文化のありかたが大きく変わることとなろう。

 どうなるのだろうか。テレワークが普及するかたわら、感染症の犠牲になる危険が高い人口密集地を避けて、地方の時代が本格化するのかもしれない。

 テレワークは、よい意味で自己中心の社会をもたらそう。かえって働く人の創造力が高まり、生産性があがるのではないか。

 数ヵ月にわたった外出自粛は、時間が停まったような異常な体験だった。社会が日常を取り戻した時に、長い眠りから覚めたか、浦島太郎が故郷に帰ったように感じられよう。

 これから変化が加速して、早送りしたように変わってゆこう。

 高齢化が進んで、これまでの性急な青年型の文化が、落着いた成人型の文化へ移ってゆこう。

 欲望より必要を大事にしよう

 私は欲望よりも、必要を大事にする社会が到来することを願っている。

 これまでの欲望をみたすことを優先してきた社会は、人の心ではなく、数量によって動いてきた。人の精神が軽視されたために、歪(いびつ)な社会をつくっている。

 技術と富があいなって、全世界にわたって人々の生活水準が向上した。そのかたわら、恵まれた階層と恵まれない階層に、所得格差が拡がっている。

 これは資本主義が悪いわけではない。資本主義は共産主義のようなイデオロギーでも体制でもない。人の性(さが)から生まれたものだ。

 つい7、80年、100年前まで、アメリカも、日本も、人類は貧しかった。そのために際限のない欲望に駆られて、ひたすら量を追求する社会をつくってきた。

 だが、これから量よりも質を求める社会に、転換しなければならない。

後世に伝えたい政治家

Date : 2020/07/14 (Tue)

 外交の評論など文筆によって生きていると、政治家と接する機会が多くなる。

 秦野章氏とは東京知事選に立候補した時に、『秦野ビジョン』の一部を書いたことが、出会いだった。日大夜間部を卒業して警視総監をつとめた苦労人で、よくクラブに誘われた。演歌をうたうと、小節がきいて胸をうった。

 中曽根内閣の法相になった。私はロッキード裁判を批判していた。いつものように秦野氏と午前1時ごろまで飲んだ席で、「ロッキード裁判について対談しましょう」と促した。

 料亭で『文藝春秋』誌のために行ったが、秦野氏が「政治家に徳を求めるのは、八百屋で魚を求めるようなものだ」と発言して有名になった。同席した法務省の秘書官は下戸らしく盃をとらなかったが、しだいに蒼ざめた。

 秦野氏は口癖のように、「今の世の中はあまり苦労する必要がないから、ヤワになったな。苦労せず成功する人もいるから、努力と正比例しない。でも、苦労はけっしてムダではないことだけは間違いない」といった。

 田中角栄氏も忘れられない。私が27歳の時から盆暮れに、私のもとに木樽に入った新潟の漬物が届いて、面識がない田中氏が送り主となっていた。数年後に、田中氏の秘書と出会ったのでたずねたら、その年に私が『新潟日報』に連載を書いたのを読んで、送るように指示されたということだった。

 私は田中首相が大新聞に煽られて、昭和47年に日中国交正常化を急いだのに、強く反対した。今日の歪んだ日中関係をつくった。

 それでも、田中首相は私が主宰する会に出席してくれた。児玉誉士夫に会いたいと頼んだら、児玉氏がホテル・オークラまで来てくれて、昼食をとった。

 中川一郎氏とは、国家観について意気投合した。このころの政治家は飾ることがない、野人が多かった。中川氏がわが家に寄ると、愚妻がつくる水割をつぎつぎと乾した。中川内閣が生まれたら、外務大臣になってくれという辞令を貰った。中川氏も土性骨があった。

 中曽根康弘首相も、優しかった。私は首相特別顧問として、対米折衝を手助った。アメリカから親しい友人が来ると、短い時間会ってもらった。黒人のスチュアート全米大学評議会議長が、その1人だった。官邸の執務室で会った。すると、中曽根氏が「きのう、こんな俳句を詠みましたよ」といって披露した。

 スチュアート氏が芭蕉を知っていると答えたところ、執務机まで誘って抽出してから、何枚か自分で描いた俳画の色紙を取り出して並べ、「1枚、差しあげます」といった。

 それ以来、スチュアート氏は日本と中曽根総理の熱烈なファンとなった。

 園田直官房長官(外相、厚相)、三原朝雄防衛庁長官、春日一幸民社党委員長をはじめ、親しかった政治家の姿が走馬灯のように浮ぶ。あのころの日本は、空気のなかに人情が微粒子のように飛んでいた。

 中曽根蔦子夫人は甲斐甲斐しかった。官邸に遅く報告にゆくと、待っても首相が帰ってこない。すると夫人が大学ノートを持って「主人が戻っても疲れているでしようから、私から伝えます」といって、一言一句筆記した。

パンデミックは奇貨となるだろうか

Date : 2020/07/02 (Thu)

 ようやく全国に外出自粛を強いていた、緊急事態宣言が解除された。

 といっても、相手は疫病神(えやみがみ)だからまだ安心できない。しばらくはマスクを着用して、人々とのあいだの距離をとることになるのだろう。

 武漢(ウーハン)ウィルスの大流行という奇禍によって、自宅と近くの事務所を往復して逼塞する日々を過していたが、自分の時間を落ち着いて持つことができたのは、珍しい財貨――奇貨というものだった。

 予想もしなかったが、おとなになってから、はじめて長い休暇に恵まれたと思った。

 インスラ、アウタルキア

 2つの小さな島に似た、自宅と事務所に籠るうちに、英語で「孤立、隔離」を意味するアイソレーションの語源が、海外に留学した時に学んだラテン語の島の「インスラ」insulaであるのを思い出した。英語のアウタルキー(自給自足)の語源が、ラテン語の「アウタルキア」autarkiaだったと、頭に浮んだ。

 自粛中は人出や、交通量が大きく減ったから、喧噪が失せて静かだった。

 仕事や会合や、絶え間ない都会の騒音によって、関心がつねに散らされて、自分をおろそかにしていたが、案じることから感覚まで自給自足するようになった。

 自宅が表通りの裏の路地に面しているが、狭い庭に集まったスズメの囀りや、近くの皇居の森から飛んでくる野鳥が鳴きかわす声が、はっきりと聞えて嬉しい。

 街が静かになったからだ。玄関を出入りする時に、家人が植えた花の甘い香りに気がついて、狼狽(うろ)たえた。喧騒のなかで視覚や聴覚を酷使していたために、五感が鈍ってしまったのだと思った。

 つい、4、50年前までは、私たちは東京に住んでいても、自然が心身の一部になっていたから、自然を身近に感じたものだった。

 だから樹木が芽をふくころに、屋根や緑を静かに濡らす雨は、春雨(はるさめ)だったし、5月に入ると五月雨(さみだれ)、秋から冬にかけて降る雨や、通り雨は時雨(しぐれ)といった。

 春なら霞(かすみ)、秋は霧といったのに、いまでは環境が人工的になったためか、心が粗削(あらけず)りになってしまったためか、1年を通してただ霧としか呼ばない。

 英語は季節感が乏しいので、霞も、霧もすべて「フォッグ」fogか、「ミスト」mistか、「ヘイズ」hazeであって、季節によって呼び分ける繊細さを欠いているから、味気ない。

 自然との一体感

 英語では、ヨーロッパ諸語も同じことだが、チェリー(桜)、ピーチ(桃)、プラム(スモモ)、オレンジというと、私たちはすぐに花を思い浮べるのに、心より胃袋が先にくるので、食用のさくらんぼ、桃、プラムの実や、オレンジの果実を連想する。こんなことにも、異文化に出会うとカルチャーショックとなって、眩暈(めまい)を覚える。

 そこでチェリー・ブロッサムとか、ピーチ・ブロッサム、オレンジ・ブロッサムというように、あとにブロッサム(花)をつけないと、花として鑑賞する対象にならない。花より団子なのだ。

 アメリカやヨーロッパで、邸宅や、高級レストランに招かれると、季節外れの同じ油絵が、1年中掛けられている。日本であれば、それぞれの季節に合わせて掛け軸をとりかえるのに、興を殺がれる。

 『源氏物語』を読む

 私は『源氏物語』、川端文学の優れた訳者として有名な、エドワード・サイデンステッカー教授と昵懇(じっこん)にしていた。

 「サイデンさん」と呼んだが、下町をこよなく愛していたので、山の手で育った者として、下町文化のよい案内役をえた。永井荷風文学をよく理解できるようになった。

 サイデンさんが米寿になった時に、拙宅において40人あまりの男女の友人が集まって、祝った。

 全員で相談して、米寿の祝いに浅草で和傘を求めて贈った。洋傘が普及したために、残念なことに、幼い時に母がさしかけてくれた和傘の油紙を打つ、調子(ここち)よい雨の音が聞かれなくなった。

 サイデンさんはその6年後に、東京で亡くなったが、生前愛していた上野池端の会館でお別れの会が催され、丸谷才一氏、ドナルド・キーン氏など、500人以上の親しかった人々が参集した。私が献杯の辞を述べた。

 私は『源氏物語』を、サイデンさんの知遇をえるまで、製紙、香料の産業史の本として読んでいたが、サイデンさんの導きによって、王朝文学として親しむことができた。

 香りは舞台回し

 『源氏物語』には数えたことがないが、50種類あまりの紙が登場する。溜漉(ためす)きの紙は中国で発明されたが、源氏に「唐の紙はもろくて朝夕の御手ならしにもいかがとて、紙屋(かんや)を召して、心ことに清らかに漉かせ給へるに」(鈴虫)と、述べられている。

 流し漉きの丈夫な和紙は日本で発明されたが、物語のなかで紙が重要な役割をつとめている。

 さまざまな香り――薫香が、もう1つ物語の進行を取りしきっている。名香に、梅花香、侍従、黒方(くろぼう)、荷葉(かよう)、薫衣(くのえ)香、百歩香などという名がつけられているが、おそらく6、70種類の薫香が舞台回しのように出てくる。

 香りはくらしに密着していた。屋内にくゆらしただけでなく、袖や、紙、扇に香りをたきしめた。それも、自分なりの芳しい香りを工夫して、四季にあわせて調合した。

 今日の日本では、クラブのホステスや、名流婦人が、不粋なことに1年を通して同じ西洋香水をつけているのには、辟易させられる。大量生産された安いガラス瓶に、はいっている。

 源氏の世界では自分だけの香の壺を、四季にあわせてもっていた。

 香りは清めであり、人々ははかない香りに感傷を託して、宇宙の静寂を感じた。

 西洋の香水は、今日、日本の家庭に普及している除臭剤とかわりがないが、源氏の世界の香りは、優美なものだった。

 自然は静かだが、人間は煩さすぎる

 「匂」という字は、もとの中国にない。日本でつくった国字だ。よい香りがたつことだけを意味していない。

 日本刀の小乱れした刃紋も「匂う」と表現するが、美しく輝いていることをいう。「朝陽に匂う山桜哉(かな)」という句がよく知られているが、山桜が朝の光をいっぱいに受けて、輝いているという意味である。

 『源氏物語』のなかで、女性が「匂ひやか」というと、美しいことを表している。

 桜の花は馨らない。光源氏が桜の花が美しいのに、香りがないことを慨嘆している(若菜)。

 香を賞(めで)るというが、香りと静けさは1つのものだ。心を落着かせて集中しないと、身心を香りにゆだねることができない。

 ゆとりがなければ、香を賞でることができない。香を嗅ぐことによって、ゆとりが生まれた。人生に間をはかることが、大切なのだ。

 世間で“引きこもり疲れ”とか、“自粛疲れ”という言葉が流行っているが、自分を取り戻すよい機会だろう。

 2020年は、文明開化の成れの果て

  私たちは明治の開国から、文明開化の号令のもとで西洋を模倣するのに努めるうちに、四季のゆるやかなうつろいに背いて、いたずらに慌(あわただ)しい社会をつくってきた。欧米に憧れて、モダン――スピード感、刹那的、享楽的なもの――を追い求めてきた、成れの果ての時代に生きている。

 今日、私たちが洋装をまとっているのは、日本を守るための手段であったはずだったのに、利便な文明開化に身を窶すあまり、いつの間にか目的にかわってしまった。

 サイデンさんはキーン氏と同じ海軍日本語学校の卒業生で、硫黄島の攻略戦に加わった。

 日本では先の大戦中に英語を「敵性語」として使うことも、学ぶことも禁じたが、アメリカは今日でも敵国の言葉を積極的に学ぶ。やはり、覇権国家なのだ。

日本国憲法のために、亡国の危険にさらされている

Date : 2020/07/02 (Thu)

 5月末に、全国民に外出自粛を強いていた緊急事態宣言が、ようやく解除された。

 といっても、相手は厄介なウイルスだから、まだ安心することはできない。ここしばらくはマスクを着用し、人とのあいだの距離を置かなければならないだろう。

 中国の武漢で、昨年発生したコロナ・ウイルスが、世界を震撼させるとは誰も予想できなかった。

 人類史を振り返ると、人間社会は戦争と疫病の流行によって、しばしば襲われている。

 戦争と疫病は、誰も予想できないというが、平時から国防を固めて平和を守り、疫病の襲来に備えなければならない。

 政府が緊急事態を宣言して、国民に外出を自粛するように求めたが、日本では憲法が緊急事態の規定がないために、諸外国のように違反者に罰則を課することができない。パチンコ店が要請を無視したのが、よい例である。

 私はこの連載で、日本国憲法が緊急事態に対応できないことを指摘してきた。

 コロナ・ウイルスによる不意打ちも、有事だった。

 現行憲法は有事を想定していない。大型台風や、激しい地震にまったく耐えられない家屋に、住んでいるようなものだ。

 コロナ・ウイルスの感染を防止するために、「3密」を避けることが強調された。

 そのなかで、現行憲法の意外な欠陥が、もう一つ露わになった。

 憲法第56条である。「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」と、規定している。

 この規定によると、議員本人が議場に出席しなければならない。

 だが首都直下型地震や、敵性国による攻撃を蒙って、3分の1の議員が集まれなかったらどうなるのか。日本が麻痺してしまう。

 以前、女性議員が出産のために、オンラインによって票決を行いたいと求めたが、56条の規定によって認められなかった。

 仮に3分の1が出席できたものの、与党議員ばかりだったら、どうだろうか。

 今日では、テレビ会議や、オンライン授業が行われるようになっている。56条を改めるべきだ。

 日本国憲法は、「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とうたっているが、まっ赤(か)な嘘だ。日本は占領下で主権を失っており、アメリカ占領軍が日本の主権を握っていた。

 現行憲法は総司令部の部員が、法律の専門家が1人もいなかったのに、日本のためを考えずに、アメリカの都合だけにあわせて、大急ぎで起草した。そのために、杜撰(ずさん)きわまりなく、欠陥だらけだ。このような憲法に国民の安全と生命を、預けてよいのだろうか。

 世界諸国のなかで、有事に備えていない憲法を持っているのは、日本だけである。

 当時のアメリカは、日本が独立を回復した後に、日本がひとり立ちすることができないように、アメリカの属国とすることを狙ったのだった。

 この憲法のおかげで、いまでも国防をアメリカに委ねている。

 歴史を振り返ると、地図から消えてしまった国が多い。国際環境が激変するなかで、このままゆくと、日本国憲法のために日本が亡びる危険にさらされている。

武漢ウイルスで露呈したグローバリズムの虚構

Date : 2020/06/04 (Thu)

 新型コロナウィールスは、第2次大戦後の世界に最大の恐怖をもたらしている。まだ出口が見えないが、終息後に世界のありかたが大きく変わっていよう。

 グローバリズムと、世界的な流行であるパンデミックが発生した中国が、最大の敗者となるだろう。

 グローバリズムがこの半世紀以上も世界を支配してきたが、そのもとでヒト、モノ、カネ、ウィールスが国境を越えて自由に動いてきた。

 国際人とか、地球市民、多文化、多国籍といった言葉が、人のあるべき姿としてもて囃(はや)されてきた。

 私は典型的な“英語屋”だ。29歳で『ブリタニカ大百科事典』の最初の日本語版の初代編集長をつとめ、30代からアメリカの有名なシカゴ大学、トランプ大統領の母校である名門フィラデルフィア大学などから講師として招かれて、教鞭をとった。

 40歳の時に、福田赳夫内閣の首相特別顧問として、その後、外相、防衛庁長官顧問、中曽根内閣首相特別顧問として、対米外交の第一線に立った。

 だが、私は「国際人」と呼ばれることを嫌ってきた。国よりも“国際”を優先する風潮がおぞましかった。

 グローバリズムは巨大な多国籍企業が金儲けの夢にとりつかれて、つくりだした妖夢だ。

 グローバリズムは企業が金儲けのために、中国をはじめとする低賃金の発展途上国に巨額の投資を行ったことによって、危険なビールスのように全世界に広がった。

 ところが、中国の武漢(ウーハン)から始まったコロナビールスが、財物の豊かさだけを追求する世界経済を破壊した。

 1960年代に発足したヨーロッパ共同体(EU)が、よい例だ。今日、25ヶ国によって構成されているが、国境を取り払って、ヒト、モノ、カネが自由に動ける体制をつくりだした。ところが、ウーハン(武漢)ウィールスに襲われると、EU加盟国は「ヨーロッパは一つ」という建て前をあっさり捨てて、そろって国境を封鎖した。

 やはり、国民は国家しか頼ることができないのだ。

 19世紀末に西洋で生まれた、文化人類学という学問がある。西洋から見て未開だと見下した部族を研究対象としてきた。文明に浴している人々が民族として扱われるのに対して、部族と呼ばれてきた。

 いまでも部族は英語でトライブtribe、フランス語でtribus、ドイツ語でStama、イタリア語、スペイン語でtribuと呼ばれるが、差別語とされている。

 だが、部族は、同じ血、同じ言語、価値・道徳観、生活習慣、同じ信仰と、代々にわたる長い歴史を分かち合って、成り立っている。部族は外に対して自分たちの生活を守るために、団結してきた。

 文化人類学は、白人・キリスト教徒の傲りから、部族を未開な存在としてきたが、近代国家だって、部族とまったく変わらない。

 部族も、国家も、構成する人々の生活の基盤となっている。グローバリゼーションが人々を根なし草にしたが、コロナ危機は国家しか頼れないことを明らかにした。

 現行憲法は日本が長い歴史を通じて紡いできた、誇るべき伝統を否定している。

 国民を結束させる憲法に、改めたい。

危機と躾

Date : 2020/05/29 (Fri)

 「躾」は日本でつくった国字だが、「馴れている」「身についている」を意味する、「しつく」の名詞だ。

 武道、書道、茶道から日常の身のふりかたまで、動じる――動揺することなく、慌ててはならない。つねに落ち着いていることが大切だ。私は空手道6段を允許されているが、試合に臨んでは技が身についており、どのような状況にも馴れていることが求められる。

 中国から始まった新型コロナウィルスが、全世界にひろがるなかで、人々が浮き足立っている。不安が先き立って落ち着かないので、足が地を踏んでいない。焦燥感に駆られると、判断力と認知機能が低下する。

 全国でトイレットペーパーの買い占め騒ぎが起ったが、トイレットペーパーはウイルスの感染予防には何の役にも立たないはずだ。 躾けを欠いた人々は、自律神経を冒されたように付和雷同する。

 昨年は異常な気象によって全国に大きな被害が発生したが、人類の歴史を振り返ると、地球温暖化や冷却化によって翻弄されてきた。

 このところ、人間活動が二酸化炭素(CO2)の排出量を増しているために、気候変動をもたらしていると、ひろく信じられているが、人はそれほど大きな力を持っているだろうか。コロナウィルスにも、対応できない。思い上がりだ。

 青森県の三内丸山遺跡はよく知られているが、今日よりも海岸線が接近していた。科学調査によれば、当時の気温は現在より2度以上も高く、海面が上昇していた。あの時代に日本列島に工場がひしめき、まだ自動車も走っていなかった。

 およそ2万8000年前の最終氷河期の中期から、温暖化によって海水が増加して、6000年前あたりに海面が4、5メートルも上昇した。

 西暦1550年から約300年にわたって小氷河期が訪れ、日本では1833年から天保の飢饉に襲われ、全国にわたって餓死、行倒れがあいついだ。

 今回のウイルスが、太陽の外層に輝く部分に似ているので、「コロナ」と名づけられている。太陽のコロナは黒点が極大、極小期によって、地球に飛来する電子の強弱が変わって、地球の気象をもてあそんできた。

 愚かな人々が妄動して、人間活動が気候変動を招いていると、全世界にわたって空ら騒ぎに耽っている。スーパーにおけるトイレットペーパー騒動によく似ている。

常任理事国承認と在韓米軍撤収

Date : 2020/05/19 (Tue)

 福田赳夫内閣が昭和51(1976)年12月に発足した前月に、アメリカの大統領選挙で民主党のジミー・カーター前ジョージア州知事が当選していた。

 私は40歳だったが、首相特別顧問の肩書を貰って、対米交渉に当たった。

 本誌から、外交交渉の裏話を書くように求められたから、差支えない範囲内で披露しよう。

 福田首相にとってはじめての日米首脳会談が春に行われることになったが、“目玉”がなかった。園田直官房長官を通じて献策を求められたので、カーター大統領に日本が国連安保理事会の常任理事国となることを支持するといわせることができると、メモを提出した。

 私はカーター政権の国家安全会議(NSC)特別補佐官となったブレジンスキ・コロンビア大学教授、新大統領が師として仰ぐハンフリー元副大統領と親しかった。12月に訪米したときに、カーター大統領当選者の郷里の村で、政権準備事務所が置かれたジョージア州プレインズで半日を過した。

 前もってハンフリー上院議員(になっていた)から電話を入れてもらったので、カーター氏の母親のリリアン夫人、溺愛していた美しい妹のルース(キリスト教の神霊治療師(フェイスヒーラー)だった)、ホワイトハウスの官房長となったハミルトン・ジョーダン氏などが歓迎してくれた。

 私はブレジンスキ教授、ハンフリー上院議員に来たるべき日米首脳会談で、アメリカ側から日本が国連安保理常任理事国となる資格があると表明すれば、日米の絆が強まると話して賛同をえていた。もっとも安保理事会常任理事国である中国、ソ連が反対しようから、実現しないのを承知していたし、アメリカとして口先でいえばすむことだった。  私は東京から電話で確認していたので、総理一行が到着する前日にワシントンに入って、ホワイトハウス、国防省、議会などをまわって、翌日、ホワイトハウスの脇にある迎賓館のブレアハウスで、総理、鳩山威一郎外相と合流して、首尾がよかったことを報告した。

 もう一つ、私は福田首相から密命を授けられていた。

 当時、日米間の最大の懸案が核燃料再処理問題だった。

 私は核燃料についてまったく無知だったので、出発前に東海村の原子力研究所で講義を受けた。私は核武装論者だったが、研究所幹部から夕食の席上で「国民が核武装を決意したら、2年以内に核爆弾を完成させます」といわれて、大いに励まされた。

 私はワシントンへ出発する前日、国会院内で短時間、福田総理と打ち合わせた。カーター大統領は選挙戦中に、在韓米軍の撤退を公約の柱の一つとして掲げていた。朴正煕大統領は清廉だったが、韓国の政府、軍などの腐敗があまりにもひどかったので、アメリカの世論が“韓国切り捨て”を望んでいた。

 この時に、福田総理から「何とか在韓米軍の撤収をとめられないか」と、懇請された。しかし、日本政府からそのように要請したら、アメリカから責任分担することを求められようから、できなかった。

 私はカーター政権を囲む人々に、あくまでも「私見」だと強調したうえで、「もし在韓米軍が撤収したら、日本は核武装することを強いられる」と警告した。政府の役職にある者がいえることではなかった。

 私はワシントンへ向かう前に、「役割分担でゆきましよう」と外務省に話したが、なぜか外交が専管事項だと思い込んでいたから、敵視された。外務省がいう「二元外交」という言葉は、日本語にしか存在しないのではないか。

 ほどなく、カーター政権は在韓米軍撤収の公約を取り下げた。私は韓国の金鍾泌(キムジョンピル)首相(当時)と親しかったが、韓国の諜報機関から情報をえたのか、後に在韓米軍の撤収を思いとどめさせたことに感謝して、流暢な日本語で、「そのうちに勲章をあげましよう」といわれたが、固辞した。もし「親韓派」という烙印を押されたら、私は活動できなくなった。

 第1回福田・カーター首脳会談から20年たって、国防省、国務省で1974年から日本を担当した、ロナルド・モース氏が来日して、麗澤大学教授となった。私は教授と対談して、(『21世紀日本は沈む太陽になるのか』、廣済堂出版)を出版した。

 この時に、モース教授が20年前に「もし日本がアメリカの合意なく、核燃料再処理を強行したら、在日米軍が出動して東海村を占領する計画があった」と打ち明けたので、慄然とした。

 その後、私は福田、大平内閣で園田外相の顧問、中曽根内閣で首相特別顧問として、対米折衝を手助った。

 中曽根内閣では、谷川和穂防衛庁長官の顧問をして、谷川・ワインバーガー防衛技術交換協定の交渉を手助った。ワシントンの防衛駐在官事務所は、ニクソン大統領が失脚したことで有名になった、ウォーターゲート・ビルにあった。  防衛駐在官は戦前の駐在武官と違って、大使の指揮下にあった。交渉の機微を大使館に知られると妨害されるので、移動に駐在官の自分の車を使ったし、東京との連絡は大使館の公電を使わなかった。

 日本の外交官は能吏であるものの、ごく僅かな例外を除いて、任地国の人々と親しい関係を結ぶ能力がない。宮仕えに汲々としているから、相手の地位、役職と付き合うことがあっても、志(こころざし)や、夢を欠いているために、心を通わせることができない。

 戦後の日本から国家として、志や、理想が失われたからだろう。

 外務省だけではない。国の芯が失われてしまったために、日本人が小粒になったのだ。

パンデミックが示したグローバリズムの弊害

Date : 2020/05/12 (Tue)

 2月にギリシアで、東京オリンピック大会のための聖火の採火式が行われた。テレビのニュースで観たが、ナチスの式典だということに触れることがなかった。

 古代ギリシアのオリンピア大会でも、1896年に近代オリンピック大会が始まってからも、1936年のベルリン大会まで聖火リレーが行われなかった。

 ヒトラーのナチス・ドイツがこの年にベルリン大会を主催したが、すべての道がベルリンに通じることを示威するために、ゲベルス宣伝相が発明したものだった。

 いま新型コロナウィルスが、イタリアで猛威を振っている。1922年にファシスト・イタリアの独裁者となったムソリーニが政権を握ると、真っ先に「非衛生的だから握手の悪習を廃止して」、ローマ帝国時代の敬礼だった右手を前に高く掲げる、「サルート・ロマーノ」(ローマ式敬礼)にかえるように求めた。

 1918年からスペイン風邪が全世界に流行して、数千万人の死者が発生したからだった。ヒトラーがナチス党の党首となると、ファシスト・イタリアを模倣して、ローマ式敬礼を採用した。

 中国武漢(ウハン)から広まった新型コロナウィルスが、米ソ冷戦の終結後に人類の世界体制となったグローバリズムを、粉砕した。ウハン・ウィルスによるパンデミック(世界的流行)が、いつ終息するか分からないが、そのもたらした衝撃があまりに大きいだけに、終息しても、世界がもとに戻ることはないだろう。

 グローバリズムは世界を一つのものとしてみて、投資、製造、人や物品の移動から国境をなくしてしまった。

 2002年にサーズ(重症急性呼吸器症)が、やはり中国広東省から始まった時に、中国は世界経済の4%にしか当たらなかったが、2020年に16%を占めるようになった。

 中国が問題だ。先進諸国は中国に過度なまで部品や素材のサプライチェーンを依存してしまったために、国内の工場の操業や供給が停まって、経済が大きな打撃を蒙っている。

 サーズは、中国人が麝香猫(じゃこうねこ)科のハクビシンを、好物として食べることから起ったといわれる。中国政府の発表によっても新型コロナウィルスも、人々が爬虫類科のセンザンコウや、ハクビシン、蝙蝠を食べているために発生した。武漢では市場でこれらの野生動物が食用として売られていたが、ウハン・ウィルスが発生してから、中国政府がはじめて禁止した。

 トランプ政権が中国の覇権主義に掣肘を加えるようになったものの、中国は世界経済システムのなかに組み込まれ続けた。だが、今回のパンデミック騒動のなかで、中国の信用が大きく傷ついた。中国に対して、新疆ウィグル、香港に対する圧政、外国企業に対する不当な干渉によって、すでに嫌気がさしていたが、中国がウハン・ウィルスの発生後に2ヶ月近く隠蔽していたことが、中国のイメージに止めを刺した。

 私は今回の新型コロナウィルスによるパンデミックを境として、「チャイナ」と「グローバリゼーション」の二つの言葉が持つ意味が、大きく変わったと思う。

 グローバリゼーションはそれぞれの国の固有な文化による箍(たが)を弱めて、人々を無国籍にしたために、放縦になって快楽を追求させてきた。その結果、先進諸国における死因は生活習慣病によるものが、大多数を占めるようになっている。私は人々が国境が果してきた役割に、再び目覚めることになるのを期待している。

 今回のウハン・ウィルスによるパンデミックが、いつ終息するか分からないが、世界のありかたに冷水を浴びせたことは間違いない。

 もう一つよいことがあるとすれば、中国人が悪食(あくじき)の習慣を改めれば、センザンコウが絶滅から救われることになろう。

今こそ無法な憲法を改正し、日本を建て直そう

Date : 2020/05/12 (Tue)

 ついに政府が、新型コロナウィルスの爆発的な感染拡大を防ぐために、全国に「非常事態宣言」を発した。

 もっと早い時期に発するべきだったか、意見が分かれるところだろうが、国民の危機意識を引き締めるのに、役立っただろう。

 今回の非常事態宣言は、横浜港に接岸した大型クルーズ客船『ダイヤモンド・プリンセス』によって、コロナウィルス騒ぎが始まってから、急いで国会を通した「新型インフルエンザ等対策特別措置法」にもとづいて、発したものだ。

 ところが、日本では「非常事態宣言」を発しても、住民や、国民に強制することができないために、政府が呼びかけて「要請」するほかない。

 アメリカや、ヨーロッパ諸国では、非常事態宣言が発せられると、そのもとで、食料や生活必需品を買う目的で家を出るのを除いて、外出した場合に高額の罰金を科しているが、日本では要請するだけで、罰則がない。

 私は都内の千代田区に住んでいるが、千代田区では区の条例によって、路上で喫煙すると罰金を科せられる。区でさえ、条例によって罰金を科すことができるのに、国家的危機を乗り切るために「非常事態宣言」を発したはずなのに、どうして罰金を科すことができないのだろうか。

 現行の日本国憲法には、アメリカをはじめどの国の憲法にもうたわれている、非常事態条項が欠落しているために、重大な危機に立ち向うことができない。

 現行の日本国憲法はアメリカの軍事占領下で、無抵抗だった政府と国会に強要されたものだから、一国の憲法にとうてい値しない代物(しろもの)だ。

 アメリカが占領下の国に、基本法である憲法を改めることを強いたのは、国際法の重大な違反だった。そのために、アメリカは憲法を押しつけたことを偽装して、日本国民が自らの手で制定したように見せ掛けた。

 日本国憲法の原文は、護憲派の憲法学者たち全員が認めているように、英文である。世界の憲法のなかで、原文が外国語で書かれているのは、日本国憲法だけである。

 アメリカは現行憲法を、日本国民のためを思って、強要したのではなかった。日本を罰するためと、日本が未来永劫にわたって再びアメリカの脅威とならないように、アメリカのためだけを思って、強要したものだった。

 日本は占領下で独立を奪われていたから、講和条約によって独立を回復するまでは、国家でなかった。

 それなのに、現行憲法が「日本国憲法」と呼ばれているのは、“偽物の憲法”であることを示している。

 日本を憲法第9条によって完全に非武装化して、アメリカの保護下でなければ生きられないように丸裸にしたのは、日本を二度と独立国としないためだった。

 護憲派は現行憲法を、まるで家宝のように扱って後生大事にしているが、宝物どころか、危機に当たって役立たない偽物のガラクタでしかない。

 新型コロナウィルスによる試練は、戦後、未曽有のものだ。

 いったい、いつになったら終息するのだろうか。全国民が暗然としている。

 ただ、意気消沈しているより、この無法な憲法を改正して、日本を建て直す好機だと考えたい。

危機意識が欠落した国家のままでよいのか

Date : 2020/04/03 (Fri)

 中国生まれの新型コロナウィルスが、全世界を不安に陥れている。

 日本はあきらかに対応が、大きく遅れた。

 アメリカからモンゴルまで多くの諸国が、日本より数週間も早く中国からの入国を禁じたのに、日本では3月に入っても、湖北省、浙江省だけから入国を禁じていた。

 全面入国禁止にすると、中国政府に遠慮したのか、1月末に始まった春節(旧正月)中に来日する中国人観光客を当てにしたのか、いずれにせよ、危機意識が欠落していた。

 私にとって不思議なのは、連日、マスクの供給が足りないと報じられたが、どうして女性たちがハンケチや手拭いを使って、マスクを作ることをしなかったのだろうか。

 4、50年前なら、急拵(きゅうごしら)えのマスクを作ったはずだ。いまでは家庭にミシンがないし、女性たちが縫い物をしないからなのだろう。

 かつて女性たちだけでなく、子供たちも軍人に深い敬意を払った。誰もが胸のなかで、「兵隊さん有難う」と思ったものだった。国を護ることが、何よりも大切だと知っていた。

 今回は、海外からコロナウィルスの侵略を蒙った。

 日本国憲法が前文で、外国が日本に脅威を及ぼすことがないとうたっているために、外国に対する警戒心が失われたのだろう。

 日本国憲法にはどの国の憲法にもある、大型地震、台風などの天災、パンデミック(地球規模の感染症)に襲われた場合に、国民の生命財産を守るために、国民の一部の権利を一時的に制限する緊急事態条例がない。

 阪神淡路大震災では、消防車や救急隊が瓦礫を撤去しなければ通行できなかったのに、私有権が立ちふさがって、多くの人命が失われた。

 現行憲法はアメリカが占領下で、日本が再び独立国とならないように無力化するために、強制したものだ。国家が国民を護るために存在しているという基本中の基本が、すっぽりと抜け落ちている。

 だが、「だからこそ、現行憲法が『平和憲法』だ」と信じている多くの軽率な国民が、“護憲教”というカルトを形成している。平和とは何か、真剣に考えたことが、あるだろうか。

 識者と自民党のなかから、今回のコロナウィルスの危機を教訓として、憲法に緊急事態条項を加えるべきだという声があがっている。

 それに対して、立憲民主党の枝野幸男代表が、「国民の生命を梃(てこ)として、改憲を主張するのは筋違いだ」と、批判した。

 だが、憲法は国民の生命と安全を守るために、存在している。国民の安全を守ることができなければ、人権を守れない。安全と人権は、同じ言葉だ。

 湖北省から邦人を乗せた、政府仕立てのチャーター機から降りた二人が、検診と観察下に置かれることを拒否した。

 平和憲法の制約によって、「必要最小限、周辺諸国に脅威を与えない」防衛力しか保有できないとしている。感染症や、気候変動による大型台風や、洪水に対しても「最小限」の備えがあればよいのだろうか。

 今回の新型コロナウィルスによる危機が、一刻も早く終息することを祈っているが、また新しい強力なビールスが登場しよう。

 国家はつねに危機感を持たねばならない。憲法が危機に備えられないなら、改めるべきだ。

“世界終末”の詐話によって騙されまい

Date : 2020/04/03 (Fri)

 1月にスイスのダボスで、「ダボス会議」として知られる「世界経済フォーラム」が開催された。

 ダボスはスイス東部の深い渓谷の底にある保養観光地で、トーマス・マンの小説『魔の山』の舞台になった。

 1971年以後、毎年、ダボスにマスコミが“グローバル・エリート”と呼ぶ、2000人以上の多国籍企業経営者や、政治家、知識人などが集まって、「世界が直面する重大な問題」を討議することになっている。

 今年は「地球温暖化による気候変動」が、重要な議題だった。

 17歳の“環境問題活動家”として時めいている、グレタ・トゥーンベリ嬢が基調講演を行い、「地球を救うのには、あと8年しか残されていない」と訴えた。

 グレタさんは15歳で「気候のための学校ストライキ」を呼びかけ、100万人以上の学生が参加したことで有名になり、両親に二酸化炭素(CO2)を排出する飛行機旅行をやめさせたり、肉を食べないよう説得して“時代の寵児”となった。

 地球に残された時間が、8年だって? だが、裏付けがあるのだろうか?

 50年前、「ローマ・クラブ」が一世を風靡した

 私はグレタさんの託宣をきいて、1970年に『ローマ・クラブ』が世界の著名な科学者、経済学者、経営者などの“叡知”を集めて、『成長の限界・人類の危機』というレポートを発表したことを、思い出した。『ローマ・クラブ』の六人の常任委員会には、日本から経済学の大宗として持て囃された、大来多三郎氏が加わっていた。

 『ローマ・クラブ』の報告書は、世界が経済成長を続けてゆくと、環境汚染が悪化し、クローム、鉄、アルミ、錫、鉛、金、銀、水銀、石油などの鉱物・化石資源が枯渇するから、「経済成長をゼロ」にすべきだと主張して、一世を風靡した。

 この報告書は常識から大きく逸脱した、噴飯物だった。もし経済成長をとめたら、汚染がもっとひどくなる。中学生でも環境を浄化するためには、カネがかかることが分かっている。

 久し振りに『成長の限界』を読み返すと、「限界、危機、破局」というおどろおどろしい言葉を連発している。

 グレタ少女による怪しい神託の類(たぐい)といえば、枚挙に遑(いとま)がない。

 最近では、2013年にケンブリッジ大学の教授が、2年後の2015年に北極の氷が消えてしまうと、警告していた。

 1968年に、著名な環境学者のポール・ヒアリッヒ教授が、ベストセラーになった『人口爆弾』によって、地球人口がこれ以上増えれば、人類が滅亡すると警鐘を鳴らした。

 その2年後の1970年の世界人口は、36億人だった。『成長の限界』レポートも「爆発的な人口増加」を、切迫する「人類の危機」として取りあげていた。今日、世界人口は2倍以上に増えている。

 グレタ少女は妖しい巫女だ

 日本大学の季刊誌の春季号に、牧野富夫日本大学名誉教授が、グレタ少女を「スウェーデンの十代の少女グレタ・トゥーンベリさんの活動に世界が驚き注目している。国連などで地球の危機を訴える弁舌は説得力があり、大人を圧倒する。素晴らしい。質疑でも、縦横・機敏に対応し、彼女が『自分の考え』をもっていることを、物語っている」と、手放しで激賞している。

 資源が枯渇するのではなく、軽はずみな人々が絶えることがない。 

 グレタ少女から『ローマ・クラブ』まで、人心を乱す邪しまな占い師だ。

 私は占いを好む女友達たちに、「『占い』の語源は『裏付けがない』ですよ」と戒めている。占い師は吉か凶といって、客を脅すことを生業(なりわい)としている。

 神社の御神籤(おみくじ)は遊びだから罪がないが、『成長の限界』のような報告書は、人間の脳が危ふさと、暗いことにもっとも強く反応するのに乗じている。

  私は『成長の限界』が発表された年に発表した著書で、「資源が枯渇することはない。石が枯渇したために、石器時代が終わったというのとかわらない」と批判した。青銅器時代が終わって鉄器時代に移ったのは、銅が枯渇したからではない。

 青森県の三内丸山遺跡といえば、よく知られている。縄文人の集落だが、科学調査によれば、当時の気温は今日よりも2度も高かった。海面が上昇していたから、海岸線が三内丸山遺跡に接近していた。

 7、8000年あまり前に、日本列島に一酸化炭素を排出する工場がひしめき、上空を旅客機が頻繁に飛んでいたはずがない。

 気候変動は自然現象

 地球の気候は科学調査によれば、およそ18000年前の最終氷期の中期から温暖化が進み海水が増加して、6000年前あたりに海面が4、5メートル上昇していた。

 西暦1550年から約300年にわたって寒冷な小氷期が訪れ、ロンドンのテムズ河が完全に氷結して、氷のうえに市場が開かれていた。凶作の時代だった。日本では小氷期に、1180年から81年まで「天明の飢饉」、1833年から36年まで「天保の飢饉」が起っている。

 もちろん、このような気候変動は主として太陽活動によるもので、今日の地球温暖化も自然の力によるものだ。人為的にもたらされているのではない。

 グレタ少女は飛行機に乗らず、肉食をいっさい拒んでいるというが、スウェーデンから鉄道にも、自動車にも乗らず、どのようにしてダボスに来たのか。革靴も履かず、皮製のソファに腰掛けないのだろうか。

 牛や、羊を放牧するために森林を伐採することによってCO2が増加しているが、エビの養殖のために広大なマングローブ林が消滅しているほうが、地球環境をはるかに損ねていると非難されている。グレタ少女はエビも、口にしないのだろうか。

 「政経同志会」50周年の祝宴

 この原稿を書いている途中で、都心の帝国ホテルに本部を置く、エリート経営者団体の『政経同志会』の50周年を祝う晩餐会に招かれた。

 同会の奥山忠代表は、人望が高い。ホテルの大広間を埋めて、1000人あまりの善男善女がテーブルに着席して、会の半世紀を賑々しく祝った。  

帝国ホテルの洋食といえば、日本で最高峰として知られる。

 「黒毛和牛フィレ肉のポワレ ジュヴ・シャンベルタンのソース」を中心とするフルコースに、舌鼓をうった。

 私はふと50周年というと、『ローマ・クラブ』がレポートを発表したのも、同じ半世紀前だったと思った。もし、このレポートの警告が当たっていたとしたら、この大広間の和やかな盛宴はなかったはずだった。

 今日では、『成長の限界』の報告書が枯渇すると警告した鉱物資源は、すべて国際価格が暴落している。

 『ローマ・クラブ』をはじめとするレポートは、人心を惑わしただけだったから、罪は重い。

 トーマス・マンの警告

 トーマス・マンといえば20世紀を代表する作家だが、1933年にナチスが台頭すると57歳でドイツから亡命して、第2次大戦後、スイスに住んだ。マンは「多くの人々が傍観していたことが、ナチス時代を招いた。『ノー』といわねばならない時には、『ノー』とはっきりといわねばならない」と警告している。

 『人口爆発』や、『ローマ・クラブ』のように世間を誑(たぶら)かすレポートは、人災である。

 黙って傍(はた)で見ていると、まったく不必要な混乱に手を貸すことになる。「ノー」といわねばならない。

 そういえば、その後、『人口爆弾』の著者も、『ローマ・クラブ』の6人の常任委員も、1人として過ちを犯したことについて謝罪していない。良心を欠いた人たちだ。

正気を失いつつある日本外交

Date : 2020/03/09 (Mon)

 1月に日米両政府が東京において、現行の日米安保条約の60周年を盛大に祝った。

 60年前にワシントンにおいて、安倍首相の祖父・岸信介首相と、アイゼンハワー大統領が改定された日米安保条約に調印した。

 60周年を祝う式典には、安倍首相、麻生副総理、外相、防衛相、米国側はアイゼンハワー大統領の孫娘、新任大使が着任していないので代理大使、在日米軍司令官などが出席した。

 式典の一部をテレビで観て、私は感慨深かった。私は1980年に現行の安保条約が20周年を迎えた時に、2年前に防衛庁が設立した、日本初の民間の安全保障研究所の理事長だったが、米国の有力シンクタンクのヘリテージ財団と共催して、20周年を記念する会議を行った。

 米国からフォード前大統領を団長として、多くの上下院議員、戦略研究所の幹部が来京した。岸元首相とフォード前大統領が基調講演を行った。鈴木善行首相が来臨として挨拶したが、あくまでも民間の会議だった。

 私は日本の安全保障にとって台湾が重要であることから、台湾総統府の国家安全会議の議長一行をオブザーバーとして招いた。政府も反対しなかった。今日なら中国を恐れて、台湾から高官を招くことはありえない。

 この4年前に福田赳夫内閣が発足したが、私は翌年に首相特別顧問という肩書をもらって、対米外交の第一線に立った。

 その2年後に、三原朝雄防衛庁長官から日本初の民間の安全保障研究所をつくるように求められた。この時、設立趣意書に米国が一方的に日本を守る保護条約を、対等な共同防衛条約に改めたいと述べて、福田総理、三原長官にはかったが、反対されなかった。今日でも、日本より力がない韓国、フィリピンも、米韓、米比共同防衛条約を結んでいる。

 新聞各紙が日本安全保障センターの発足を報じたが、サンケイ(現・産経)新聞が「きなくさい日本安全保障センター」と見出しを組んだほかに、朝日新聞も非難しなかった。 日本はまだ多分に正気を保っていた。  

    1992年に、宮沢喜一内閣が翌年に天皇御訪中を目論んでいたが、天皇御訪中について有識者14人を選んで、首相官邸に招いて、個別に30分ずつ意見を聴取した。私はその1人として招かれたが、3人が反対意見を述べ、多数が賛成するという出来レースだった。私は有識者が招かれるのでなく、政府が招くから有識者になると揶揄(やゆ)した。

 各紙が報じたが、読売新聞は木村尚三郎東大名誉教授、私、平山郁夫画伯、作曲家の黛敏郎氏、清水幹夫毎日新聞論説委員長の順で顔写真を並べて、取り上げた。黛氏、私、3人が反対し、木村、平山氏など10人が賛成した。毎日新聞の清水論説委員長は、「意見がない」と述べた。意見がないのに、なぜ招きに応じたのか、分からない。

 私は「天皇陛下が外国に行幸されるのは、国民の祝福をお伝え下さるためだ。中国は人権を蹂躙しており、陛下が行幸されるのに価しない」と述べて、反対した。

 中国は3年前に天安門広場で大虐殺を行って、先進諸国から経済制裁を蒙っていたために、天皇御訪中によって国際イメージを改善することを狙っていた。御訪中後、諸国は対中制裁を撤回した。

 政府は4月に、習近平主席を国賓として招くことを決定している。私は18年前と同じ理由で、強く反対している。

 中国は新疆ウィグル自治区で100万人以上のウィグル人を強制収容所に送り込んで、チベット、内モンゴルで民族浄化を強行している。香港でも人権を蹂躙している。そのために国際的に孤立している。

 習主席が国賓として来日すれば、答礼として天皇陛下が御訪中になられることとなる。

 天皇陛下を人身御供として差し出して、よいのものだろうか。

欠陥だらけの憲法を大事に戴いていいのか

Date : 2020/03/03 (Tue)

 読者諸賢に質問したい。

    仮に、天皇陛下が国会の開院式に臨まれて、「日本国憲法の規定に従って、国会を解散する」と仰言せられたとしたら、読者諸賢はどう思われることだろうか?  もちろん、陛下がこのようなお言葉を述べられることは、ありえない。

 憲法第7条【天皇の国事行為】は、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」と述べ、「一、憲法改正、法律、法令及び条約を公布すること」から、「十、儀式を行ふこと」まで10項を規定している。

 天皇陛下がご自分の意志によって、政治に関与されることはあってはならない。

  読者諸賢は国会を解散できないし、衆議院は解散できるが、参議院を解散することができないことを、承知されていよう。

 ところが、憲法第7条は「四、国会議員の総選挙の施行を公示すること」と、規定している。

 中学生でも、「総選挙」が衆議院議員選挙についてのみ、行われることを知っていよう。

 したがって憲法第7条4項は、大きく間違っている。

 恥しいことに、現行の日本国憲法は欠陥だらけだ。第7条はその一例にしかすぎない。

 いうまでもなく、憲法は国の最高法規である。その憲法に明白な間違いがあるのを放置して、よいのだろうか。

 私たちはこのようなトンチンカンな憲法を73年にもわたって、後生大事に戴いてきた。

 トンチンカンは漢字で「頓珍漢」と書くが、鍛冶屋が交互に相槌(あいづち)を打つべきところ、へまで、かみあわないことから、とんまな物ごとをいう。

 まさか、憲法についてトンチンカンといえないはずだが、現行憲法はトンマだ。

 だが、どうして日本国民は今日にいたるまでこれらの明らかな誤りを正すことなく、70年以上にわたって、無為に過ごしてきたのだろうか?なぜ、憲法を大切にしないのか。

 もし、日本国憲法が日本人の手によって起草され、公布されたのだったとしたら、憲法の前文、第9条などは、当然のことに、改められていたことだろう。

 このような憲法を戴いていては、日本の安全と独立を守ることが、とうていできない。

  それなのに、全国から欠陥憲法を改正しようという声が、ごうごうと起ることがない。

 “護憲派”の人々は、憲法を大切にしているどころか、憲法を粗末にしているから、憲法に見過ごしてはならない欠陥があっても、護ろうと叫んでいるのだ。憲法はどうでもよいというから、無責任だ。

 現行の日本国憲法は、日本の歴史的な伝統はおろか、日本語の読み書きもできない、占領軍のメンバーによって書かれ、日本政府に強要されたものだった。きっと外(と)つ国(くに)の神々によって降(くだ)されたものだから、国民が身近に感じることがなかったのだろう。

 政府は中東情勢が緊迫したために、海上自衛隊の護衛艦1隻と、哨戒機を急遽派遣した。

 野党が憲法が制約しているからといって、「自衛隊を危険なところに送るな」と、反対した。  それならば、まず日本の民間のタンカーを危険な中東に送ってはならないといって、反対するべきではないか。

ホルムズ海峡における日本の立場と平和憲法

    Date : 2019/09/09 (Mon)

 イランと北朝鮮が、中東とアジアの発火点となるか、世界の注目を集めている。

 両国は大きく離れているが、共通点が多い。

 イランは核兵器開発に取り組んできたかたわら、北朝鮮はすでに核弾頭を手にしているが、アメリカのトランプ政権が中心となって、核開発、あるいは核兵器を放棄するように、国際社会を捲き込んだ、厳しい経済制裁によって締めつけられて喘いでいる。

 中国、ロシア、ヨーロッパ諸国も、アメリカの制裁を恐れて、イランと北朝鮮に対する経済制裁に加わらざるをえない。

 もちろん、イランはキムチを食べないとか、イスラム教の厳しい戒律によって飲酒を禁じているとか、違いも多い。

 イランは、地理が有利だ。日本の石油・天然ガスの80%以上、ヨーロッパ諸国にとってもエネルギーの大動脈が通っている、ペルシア湾の幅37キロの狭い出入り口であるホルムズ海峡が、イランに面している。イランはイスラム教主流のスンニー派と、不俱戴天の二大宗派の一方であるシーア派の総本家で、アメリカ、イスラエルが支援するスンニー派の多くの諸国で、イラン革命防衛隊や、代理兵を使って、紛争をひき起しているが、北朝鮮は地域的な影響力がない。

 イランも、北朝鮮も、アメリカによる経済制裁を何とか緩和させようとして、駄々をこねている。イランは6月にアメリカの無人偵察機を撃墜し、革命防衛隊がホルムズ海峡周辺で、日本、イギリス、ノルウェーなどのタンカーを攻撃、拿捕(だほ)し、ウラン濃縮の度合いを高めた。北朝鮮は5月、7月に短距離ミサイルを発射し、年内に合意できなければ、アメリカともう話し合わないと脅している。

 トランプ大統領も、口では勇ましいことをいっても、戦いたくない。イランがアメリカの無人偵察機を撃墜すると、トランプ大統領はいったんイランに限定的攻撃を加えるように命じたものの、その直後に取り消した。

 イランを攻撃すれば、中東全域にわたってイランの代理兵が、米軍を攻撃することになったろう。

 トランプ大統領はアフガニスタン、イラク、シリアから、米軍を撤収することを発表しているものの、実現できないでいる。トランプ大統領は米軍を海外から引き揚げたことを、レガシーとしたい。だが、7月にサウジアラビアに小規模の米軍部隊が、派遣された。

 ペルシア湾の状況は、一触即発だ。

 トランプ大統領はこれまで3回にわたった米朝首脳会談が、北朝鮮の核実験と、中長距離弾道弾の発射を中断させてきたほかに、何一つ成果をあげず、すれ違いに終わったのにもかかわらず、話し合いを続けるといい、金正恩国家主席に対して微笑み続けている。

 だが、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師と差しで、友好的に会談しようとしない。アメリカは核開発と並んで、イランが中東全域にわたって安定を乱しているのを阻止しようとしているが、イランは北朝鮮と同じ強権による独裁国家なのに、ハメネイ師が金主席のような唯一人の独裁者ではなく、僧侶勢力、革命防衛隊など、八岐大蛇(やまたのおろち)のような集団指導体制にあるからだ。

 だが、アメリカはイランの核開発と、北朝鮮の核兵器を放棄させることに、成功するだろうか。核開発と核戦力の増強を先送りできても、放棄させることはできないだろう。

 トランプ政権は、ホルムズ海峡の自由航行を確保するために、ペルシア湾にエネルギーを依存している諸国が有志連合を結成して、海軍部隊を派遣することを求めている。日本はホルムズ海峡に対して、依存度がどの国より高い。

 “平和憲法”を楯にして、アメリカにホルムズ海峡において日本のタンカーを護るのを委ねるべきだというのなら、京都アニメーションのような火災も、アメリカの消防隊に消してもらったらよいだろう。

平和憲法の「平和」という言葉の危うさ

    Date : 2019/09/02 (Mon)

 青年時代に、私は鶴田浩二や、高倉健の任侠映画を楽しんだ。人気が高かったから、つぎつぎと続篇がつくられた。

 任侠といえば、弱きをたすけ、悪――強きをくじくという意味だが、主人公が男気に富んだ役を演じて、勧善懲悪の物語となっていたから、爽快感があった。

 座敷か、洋間の組の本部には、組長が座る背後に、かならず『誠』とか『仁義』とか揮毫された掛軸がかかっていた。任侠映画によって暴力団に憧れた若者も、いたことだろう。

 もっとも、暴力団はこのところは、警察の取締りが厳しくなって、「反社会勢力」と呼ばれるようになり、目を背けたくなる暗いイメージを持っている。暴力団を美化する任侠映画を、つくられなくなった。

 任侠という美名をかたりながら、弱い飲食店や、商店から、他の暴力団から保護するといって、“見ヶ〆料(みかじめりょう)”を強要したり、不法な賭博、高利貸し、麻薬売買などを行ってきた。

 しかし『誠』とか、『仁』『義』と書かれた掛軸の字には、不思議な力が宿っているから、それだけで人を説き伏せてしまう力が籠(こも)っている。

 だが、さまざまな悪事を働いている団体に、『誠』とか、『仁』『義』といった言葉は、まったく似つかわしくないものだ。

 ちょっと立ち停まって考えれば、現行憲法は「平和憲法」と呼ばれているが、この言葉も同じことではないだろうか。
暴力団の本部の床の間にかかっている、掛軸の「仁」とか、「義」という言葉によく似ている。

 「平和」は美しい言葉だ。だが「平和」という誰もが反対できない言葉の裏で、日本の安全を危うくする力が働いている現実から、目をふさがれているのではないか。

 日本には神代――古代から、言葉そのものに霊力が宿っているという信仰が、存在してきた。言葉を発すると、その言葉に合わせて現実が変わるというものであり、今日でも日本では言葉に超自然的な力がこもっている。

 英語をはじめとするヨーロッパ諸語であれば、「シンシアリティーSincerity」(誠)とか、「ジャスティスJustice」(義)という単語を額装して掛けたとしても、見る人が「『まこと』といっても、いったい何を意味しているのか? 何が『まこと』なのか?」「何が『正義』なのか?」と、その内容についていぶかることだろう。

 日本では「験(げん)」(縁起)を担いで、不吉な言葉を発することを慎む。もし家族に受験生がいたとしたら、「落ちる」という言葉を使うことを避ける。私たちは日常、意識しないで験(げん)を担いでいる。「開く」といえば始まることだが、宴会が終わる時には「これでお開きとします」という。

 いまから74年前の敗戦までは、「無敵日本」「無敵海軍」とか、「神州不滅」という言葉が、罷り通っていた。
 験(げん)を担いで、全滅は「玉砕」、退却は「転進」と呼び替えられた。軍部は戦争末期に、本土決戦を戦うといって、「一億総特攻」を呼号したが、昭和天皇の終戦の御聖断によって、亡国を免れることができた。

 口先だけのことなのに、言葉は景気づけにも使われるから、警戒しなければならない。

 「平和憲法」の平和という言葉を鵜呑(うの)みにして、騙されてはなるまい。「一億総特攻」を繰り返すことになりかねない。

亡父の薫陶

    Date : 2019/08/30 (Fri)

 私は幼いころから、父から「女と動物を苛めてはならない」と教えられて、育った。

 もう一つ、小学校に進むようになってから、正座して『論語』の素読をさせられた。父が同じ歳のころに、祖父から強いられたことだった。

 私が漢籍から引用できるようになったのと、女性と動物を大切にするようになったのは、この2つの躾によるもので、感謝している。

 父は私が高校生のころから、馴染みの座敷に連れていってくれて、芸妓の伽羅の香りや、絃歌の世界を知った。私は父の秘密を共有するようになったから、父をいっそう好きになったし、母を大切にするようになった。

 父は人が羨むほど夫婦仲がよかったし、犬と猫を可愛がった。母が逝ってからは、純白の雌のペルシア猫を溺愛した。

 それでも、生物のなかで、ペットが存在するのは人間だけだが、なぜなのだろうか。

 動物はいつも本心だけで、嘘をつかない。そこで私たちの心が和み、癒されるからだろう。

 父がある時、愛犬の頭を撫でながら、「もし、人間に尻尾があったら、この世から騙し合いがなくなることだろう」といった。私は人間は進化が遅れているから、まだ尻尾がはえていないにちがいないと、思った。

 植物も、嘘をつかない。だから森のなかを散歩すると、爽快になる。人は自分を偽って生きなければならないから、疲れる。

 女性に出会うとおだてるのは、父譲りである。女性のほうが男性よりも強いから、諍わないほうがよい。

 科学的にいって、女性と言い争ったら、男に勝ち目はない。女性の声の高さは200から300ヘルツであるのに対して、男性は100から150ヘルツしかない。100ヘルツは声帯が1秒間に、100回震動しているのをいう。

 女性は男性よりエネルギーに溢れているから、際限なく喋ることができるが、男性はすぐに畏縮してしまう。「君子危キニ近カヨラズ」と、中国の聖賢が宣うているではないか。

 男が女性に甘えるのは、弱いからだ。女性は男性より強いから、耐える。男性は合理的だから、女性に負ける。女性はその証拠に占いを信じるが、占いの語源は「うらづけがない」というものだ。

 明治の日本を創った賢人の福沢諭吉先生が、「無力な道理は、有力な無道理に勝てず」と諭しておられる。

少子化対策ではなく人口政策の確立を

    Date : 2019/08/26 (Mon)

 多くの識者が少子化によって、日本が衰退してゆくことを憂いている。

 これまでは年間出生数が200万人台だったのが、90万人台を割ってしまうことになるとみられる。

 この30年ほどか、日本の都会に住んでいると、誰もがかつての王侯貴族のような生活を営んでいる。

 贅を極めているのに、贅に耽っているのに気付かないほどの贅沢はない。スマホを使って世界中の料理が、自宅に届く。タクシーを拾って、運転手に行き先をいえばよい。
指先1つで家電を動かせる。テレビによって、バラエティー・ニュース・ショーをはじめ、居間で滑稽劇(おわらいげき)を楽しむことができる。

 身の回りに、あらゆるサービスがある。サービスserviceの語源は、ヨーロッパ諸語のもとのラテン語で、「奴隷」を意味する「セルヴスservus」だ。大勢の奴隷にかしづかれているのだ。

 それなのに、国民が不満でいっぱいだ。狂言『節分』に「えっ、この罰当りめが」という台詞(せりふ)があるが、これほど恵まれた生活をしているのに、そう思わない。

 亡国を免れるためには、子を産む女性や、子育てを望む若い夫婦に、国が補助金を支給すべきだ、金(かね)をぶつければ出生率があがると、説く人々がいる。だが、私は社会が豊かになるにしたがって、出生率が減ってきたのに、金(かね)で解決できるというのは理解できない。経済成長による物質的な豊かさこそが、少子化の惨状をもたらしたのではないか。

 スウェーデンや、フランスが子を産むシングル・マザーや、夫婦に、児童手当や、住宅、教育費など給付を増やすことによって、出生率が向上したと喧伝されるが、その後、出生率が低下している。

 いまでは工業ロボットやAIが、私たちの生活を支えている。テクノロジーが私たちの生活を、大きく変えている。

 このところ先進諸国は、どの国も「人手不足」の悲鳴をあげている。アメリカでは失業率が半世紀ぶりに、3・6%まで落ちている。イギリス、ドイツ、フランスなどの諸国でも、求人難が深刻だ。日本でも10年前の平成11年に失業率が5・09%だったのが、2・4%まで落ちている。技術革命によるもので、政府の施策がもたらしたものでない。

 ハイ・テクノロジーと金(かね)と数字が、私たちを支配するようになっている。金(かね)は空腹などその場を凌(しの)ぐために、使われる。人と人との絆が金(かね)によって結ばれているから、短時間で使い捨てにされる。男女の結びつきも例外ではない。

 テクノロジーも数字も、理によってつくられているから、心も情もない。

 だが、心は生きているから、金(かね)とテクノロジーと数字だけになると、家族も、家族的経営も崩壊して、人々が神経症を患って、子殺しや親殺しに走る者が急増する。

 私は「少子化対策」という言葉が気に入らない。なぜ、「人口政策」といわないのか。

 対米戦争が始まった昭和16(1941)年に、政府が国の将来を想い量って「人口政策確立要綱」を決定した。戦後、日本が国であるべきでないと信じるようになったために、かつての「産めよ増やせよ」という言葉を連想させるといって、「人口政策」という言葉が抹消されたためだ。

 私は平成6(1994)年に、厚生省(現厚労省)が「少子化」対策として、子育て支援などの「エンゼルプラン」を発表した時に、意味不明な「エンゼル」という言葉を使ったのに、憤ったのを覚えている。英語の天使「エンジェル」だったのか。外国に魂を売った小(こ)っ端(ぱ)役人が造語したにちがいない。

 数年前に、友人と小料理屋で浅酌した時に、友人が「手鍋提げても」といったところ、若い女子従業員が「手鍋って、どんな料理ですが?」と質問したので、呆れたことがあった。もちろん、好きな男と夫婦になれるなら、どんな貧困もいとわないという意味だ。

 政府が1990年代に“フェミニズム運動”を煽って、「男女共同参画社会」を推進したことも、少子化を悪化させた。女性は家庭を築くことが何より大切な役割であるのに、家族を否定することをはかったものだった。

 あわせて軽佻浮薄な言葉狩りが進められて、「婦」は女性が帚をかかえているから差別だといって、警察庁が「婦人警察官」を「女性警察官」、防衛省が「婦人自衛官」を「女性自衛官」と改称した。

 私は母親が座敷や、家の前の路地を掃くのを見て、帚が母の心の延長だと信じていたから、母が冒涜されたと思った。
私は松下政経塾の役員を永年勤めたから、そういうべきではないが、家電製品はすべて心を省くものだ。

 警察や、自衛隊では「婦道、婦徳」という言葉を使うことを、禁じているにちがいない。だが、いまでも「妊婦」という言葉が使われている。どちらかにしてほしい。「家族」もウ冠の下に豕(ぶた)と書くから、差別語ではないか。

 女性の高学歴化が結婚年齢を引き上げ、子供の教育費がかかりすぎることが、子を産む意欲を減退させているという。
学歴崇拝が日本を滅ぼす。高収入を望んで、自分をひたすら他に委ねて、合わせる受験戦争が、幼稚園から就職まで続く。

 二宮尊徳、伊能忠敬、渋沢栄一の3人をあげれば、農家の子だったから、最終学歴は寺子屋の4年ばかりだが、まず自分で自分を創ったうえで、日本を創った。虚ろな教育に国費を浪費するべきでない。

 個人が何よりも尊重される。だが、「個人」という醜い言葉は、明治に入るまで日本語のなかに存在しなかった明治翻訳語だ。私たちは人と人との絆のなかで、生きてきた。

 どうしたら、少子化を防ぐことができるのだろうか。

 愛国心を鼓吹するほかない。

日本を守る④ 日本最大の脅威は「憲法」

    Date : 2019/08/21 (Wed)

 日本が直面する最大の脅威は何だろうか? 中国でも、北朝鮮でも、ロシアでもない。

 正解は日本国憲法だ。こんな間抜けた憲法を戴いている国は、世界に日本しかない。

 イギリスの大歴史家トインビーは、「古代ローマ帝国を滅ぼしたのは、帝国の辺境を脅かしていた野蛮人ではなく、国内で“パンとサーカス”の享楽に耽(ふけ)っていた野蛮人だった」と、ローマ国民だったと断じている。

 日本国民の多くが一国平和主義をほめたたえているが、一国享楽主義でしかない。

 現行憲法は米国が占領下で日本から永久に軍備を奪って属領にすることをはかった、どう読んでもべらぼうな代物(しろもの)だ。箆棒(べらぼう)は江戸時代前期の見世物の信じがたい異様な化物の名で、馬鹿、たわけを意味するようになった。

 日本は独立を回復して67年たつが、日本国民はこのべらぼうな憲法を改めていない。日本国民はそれほどたわけなのか?

 いや、日本はアジアで唯一つ先進国となった利発な国だ。だったら、原因は何だろうか。

 江戸時代に3世紀近く平和が続いた。徳川家の支配を永続させるのを目的としたから、新しい政治思想を禁じ、能力主義を斥けて、血筋と年功序列による硬直した体制をとった。

 徳川幕府による平和は、明治以後の日本の呪いとなった。
幕府は泰平を維持するために、何より戦乱を恐れた。武士は幕府が統治思想とした儒教漬けにされたが、孫子の兵法の心髄である「兵者詭道也(へいはきどうなり)」(敵を騙すこと)を学ばせなかった。幕府は儒教の王道を重んじて、詭計を否定し、戦略思考がタブーとなった。

 武士道は戦うことが目的でなくなり、勝つことではなく、「死ぬ」ことに価値が与えられ、精神修養の哲学に退化した。

 江戸時代の庶民を涌かせた『忠臣蔵』は、吉良邸に突入する前に、正門前で大石内蔵助が山鹿(やまが)流の陣太鼓を高らかに打ち鳴らすのが、見世場となっている。47士は奇襲したはずだったが、奇襲となると王道に反した。

 明治維新が徳川体制を一新したから、才気ある人々が国を導いたが、日清日露戦争に勝つと、自信過剰を患って江戸時代へ戻った。

 日本は先の対米戦争で、軍官が年功序列によったために、ボロ負けした。戦後、高度経済成長によって、世界第2位の経済大国となると、日露戦争後に似るようになった。

 日本国憲法が戦略思考を奪ったために、憲法が家康公の祖法となってしまった。

日本を守る③ 中国・習主席の勘違いで“救われた日本”

    Date : 2019/08/19 (Mon)

 日本は72年前に占領下で強要された“平和憲法”と引き替えに、独立の気概を失って、北朝鮮から、ホルムズ海峡の安全航行まで、米国に頼っている。

 日本は北朝鮮によって拉致された日本国民を、自分の力で救えない。トランプ大統領に訴えるほかない。まるで米国が拉致したようだ。拉致被害者は“平和憲法”の被害者だ。

 習近平主席は台湾を軍事力を用いて「統一する」と、繰り返し言明している。台湾が中国に奪われたら、日本は海上交通路を絶たれて、独立を維持することができない。

 日本と台湾は一蓮托生の関係にある。一身同体だ。それなのに台湾の安全も、米国に委ねて傍観している。

 中国の日本に対する脅威が募っている。日本は米国なしに、まったく対処できない。

 日本を守るために米国様(さま)々に、ひたすらお縋(すが)りしなければならない。

 ところが、トランプ政権が2年前に登場すると、米国はトランプ支持派と、リベラル派の民主党を支持者の真2つに、分断された。

 日本が縋ってきた米国が、国内対立によって頼れないようにみえた。

 日本が危なかった! ところが、この危機を意外な助っ人が現われて、救ってくれた。中国の習近平主席である。

 トランプ政権が発足すると、習主席は米国が混乱して、力が衰えたと勘違いして、いよいよ中国の時代がきたと、舞いあがった。オバマ前政権に南シナ海の人工島を軍事化しないと明言したのにミサイルを配備し、野心的な「一帯一路」計画を暴走させて、スリランカ、カンボジアなどの軍港を借款のカタに取りあげるなど、傍若無人に振る舞いはじめた。

 中国は米国市場に経済を、依存している。先端技術も米国から盗んできた。寄生虫のような存在なのに、米国に対して牙をむいた。

 いってみれば、子会社が親会社を乗っ取ろうとしたのだ。
トランプ政権は中国と正面から対決することを決断し、関税戦争を始めるとともに、中国へのハイテクノロジーの供給を絶った。

 米国では、中国の目に余る振舞いに、民主党も中国を抑えつけようと、全国民が歩調を合わせている。

 習主席が分断されていた米国を、団結させたのだ。そのために巨大な米国の力が損なわれることが、なかった。

 日本が救われた。習さん、ありがとう!

日本を守る② イランの核開発と北朝鮮の核兵器放棄 トランプどう解決するのか

    Date : 2019/08/19 (Mon)

 いったい、トランプ大統領はイランと北朝鮮を、どうするつもりなのか?

 イランは幅36キロのホルムズ海峡に面して、日本の首根っこを押さえ、北朝鮮は米朝交渉が行き詰まったら、日本の近海にミサイルを撃ち込んで、日本国民を震えあがらせよう。

 トランプ大統領はイランとも、北朝鮮とも戦いたくない。
トランプ大統領は昨年、米軍を中東から全面的に撤収することを発表したものの、実現できないでいるが、7月末にまずアフガニスタンから始めることを明らかにした。

 トランプ大統領は、米軍を海外から引き揚げたことを、レガシーとしたい。

 来年11月の大統領選挙の前に、アフガニスタンから足を洗ったことを功績としたいのだ。

 ところが、7月にサウジアラビアに小規模の米軍部隊を派遣した。

 トランプ大統領は3回にわたった米朝首脳会談が、北朝鮮に核実験と中長距離弾道弾の発射を休ませたほかに何一つ成果がなく、すれ違いに終わったのに、まだ話し合うといい、金正恩主席に微笑み続けている。

 米国はイランに核開発と並んで、中東の安定を乱しているのをやめさせたい。だが、イランの最高指導者ハメネイ師を擁抱して会談しようとしない。

 イランは北朝鮮と同じ強権による独裁国家なのに、ハメネイ師が金主席のような唯一人の独裁者ではなく、僧侶勢力、革命防衛隊など、頭が多い八岐大蛇(やまたのおろち)もどきの体制だからだ。

 イスラム教は2大宗派に分かれて、デスマッチを展開している。イランが率いるシーア派と、サウジアラビアなど中東の大多数の諸国のスンニー派の死闘だ。

 ヨーロッパでは16世紀、17世紀にかけて、キリスト教がカトリック旧教とプロテスタント新教のあいだで凄惨な宗教戦争を戦い、ヨーロッパ全土を荒廃させた。イスラム教は紀元7世紀に生まれた、まだ若い宗教だ。

 アメリカはイランの核開発と、北朝鮮の核兵器を放棄させるのに、成功するのだろうか。

 核開発と核戦力の増強を先送りできても、放棄させることはできるはずがない。

 日本は“平和国家”だから、北朝鮮もホルムズ海峡の安全も、米国にまかせている。

 もし日本が戦後独立を回復して、占領憲法をすぐに改めて、日本の経済規模の半分しかないイギリスか、フランス程度の軍事力を持っていたら、拉致問題も起らなかったはずだ。

日本を守る① 韓国「反日」熱の裏側

    Date : 2019/08/19 (Mon)

 韓国の反日熱が燃えさかって、日本国民が嫌韓感情をいやおうにも募らせている。

 フランスと韓国はよく似ている。ナチス・ドイツの占領下でフランス国民はナチスに協力したが、ユダヤ人狩りを行い、アウシュビッツなどの絶滅収容所へ送った。だが、連合軍の手で独立を回復すると、全員がレジスタンスに加わったふりをするようになった。

 韓国民は36年の日本統治にあげて協力した。日韓併合10年目に3・1独立運動事件が起ったのが唯一つの例外だが、一過性のものだった。裁判で誰1人死刑にならなかった。

 外国による占領、統治に積極的に協力した国民ほど独立を回復すると、負い目を晴らすために過剰な愛国的行動に走る。韓国の反日熱は、いかに日本統治を喜んだか証している。

 6月にイランをめぐる危機が燃えあがった。

 イランと北朝鮮は共通点が多い。イランが核兵器開発を進めてきたかたわら、北朝鮮はすでに核弾頭を持っているが、トランプ政権による厳しい経済制裁により喘いでいる。中露なども、米国の制裁を恐れて加わっている。

 イランと北朝鮮はイランがキムチを食べないし、禁酒とか違いも多い。

 イランは地理が有利だ。ペルシア湾の狭い入り口のホルムズ海峡の東側がイランだ。日本の石油・天然ガスの80%以上、西欧諸国にとってもエネルギーの大動脈だ。イランはイスラム教主流のスンニーと、不俱戴天の2大宗派の一方のシーアの総本家で、米国、イスラエルが支援するスンニー諸国でシーアや、イラン革命防衛隊や、代理兵を使って紛争を起している。北朝鮮は地域的な影響力がない。

 イランも北朝鮮も、米国による経済制裁を何とか緩和させようとして、駄々をこねている。イランは米国の無人偵察機を撃墜し、ホルムズ海峡周辺で日本などのタンカーを攻撃、イギリスのタンカーを拿捕(だほ)し、ウラン濃縮の度合いを高めた。北朝鮮は5月と7月に、短距離ミサイルを発射した。

 ペルシア湾は一触即発だ。だが、トランプ大統領も口では勇ましいことをいっても、戦いたくない。イランを攻撃したら、中東各地でイランの代理兵が、米軍を攻撃しよう。

 トランプ政権はホルムズ海峡の自由航行を確保するために、有志連合を結成して、海軍部隊を派遣するように求めている。

 日本が米国に日本船を護るのを委ねたいというのなら、京都アニメのような火災も、米国の消防隊に消してもらおう。

人間社会を蝕むカネとテクノロジー

    Date : 2019/08/09 (Fri)

 この30年ほどだろうか、日本の都会に住んでいると、市井の人々もかつての王侯貴族のような生活を営んでいる。

 贅を極めているのに、贅に耽っていることに、気付かないほどの贅沢はない。私たちの日常がまさにそうだ。

 スマホを使って世界中の料理が、自宅まで届けられる。タクシーを拾って、運転手に行き先をいえばよい。指先1つで冷房、暖房によって、冷暖がもたらされる。昔だったら召使が大きな扇であおるか、氷柱を据えるか、暖炉の薪を燃した。

 いまでは、あらゆるサービスが身の回りにある。サービスserviceの語源は、ラテン語で「奴隷」を意味する、「セルヴスservus」だ。

 日本は世界のなかで奴隷が存在しなかった、珍しい文化だ。民主主義が発祥したといわれる古代ギリシアの市民生活は、奴隷によって支えられていたが、ヨーロッパ、アメリカでは19世紀というと、このあいだまで奴隷が存在した。
英語の召使サーバントservantという言葉も、「セルヴラservula」女奴隷、「セルヴラス男奴隷servulus」から発している。

 日産のゴーン前会長が、巨額を横領した容疑で起訴されているが、日本の常識からして、古い言葉を使えば、箆棒(べらぼう)な報酬を得ていた。べらぼうは信じがたい、という意味だ。

 アメリカや、ヨーロッパの友人と、ゴーン前会長の桁外れの報酬について話題にしても、少しも驚かない。日産よりも小さなGM(ジェネラル・モーターズ)の会長の給料は、ゴーン氏よりはるかに高いものだ。日本のトヨタの会長の報酬の100倍以上も、貰っている。

 やはり西洋は長いあいだにわたって、奴隷社会であったからだ。経営者からみれば、下積みの社員は奴隷でしかない。

 いまでは工業用ロボットや、AIが、私たちの日常生活を支えている。

 新しいテクノロジーが私たちの生活に、大きな変革をもたらしていることを、毎日、肌で感じさせられる。

 日本はOECD(経済開発協力機構)に、加盟している。36ヶ国が加わる先進国の経済クラブだが、メキシコとか、スロベニア、リトアニアのような新興経済諸国も、入っている。

 OECDのなかの先進諸国は、どの国も「人手不足」の悲鳴をあげている。日本も例外ではない。

 アメリカでは、失業率が3.6%まで落ちているが、半世紀ぶりのことだ。日本では10年前の平成11(2009)年には、失業率が5.09%だったのが、今年4月には2.4%まで急落している。イギリス、ドイツ、フランスをはじめとする諸国でも、「求人難」が深刻だ。

 「ジョブス・ブーム」(就業ブーム)といわれるが、これは政府の政策によって、景気が上向いたからではない。

 庶民のなかにはロボットや、AIによる自動化によって、人々が職を奪われることになると杞憂する声があるが、杞憂は古代中国の杞の国の無知な民衆が、空が落ちてくることを憂えた偶話にもとづいている。

 どうして就業ブームが、起っているのだろうか。ハイ・テクノロジーがつぎつぎと新しい職業を、生み出しているのだ。サービス業は、人手を必要とする。求人については、先進諸国ではパソコン、スマホによって、新聞から三行広告が消えて、求人と求職が効率よく結ばれるようになっている。

 ハイ・テクノロジーと金(かね)が、私たちを支配するようになっている。人と人との絆が金(かね)によって結ばれるから、絆が短時間で使い捨てになる。家族の結びつきが、弱まる。

 そのうえ、テクノロジーは理によってつくられているから、心も情もない。だが、人の心は生きているから、金(かね)とテクノロジーだけを相手にすると、神経症を患う者が急増する。

国民が互いに心と情を分かちあう国に

    Date : 2019/08/06 (Tue)

 今日の社会は、お金とハイテクノロジーによって、支配されている。右を向いても、左を見ても、お金とハイテクノロジーだ。

 ほとんどの人にとって、人と人との繋(つな)がりも、金(かね)による。お金もハイテクノロジーも、数字によって成り立っている。だが、お金やハイテクノロジーや数字には、心も情もない。

 私たちの身の回りのあらゆることが、数字によって計られている。老後は貯蓄が二千万円なければ暮してゆけないとか、経済成長率、物価上昇率、時間、血圧、血糖値、ものの値段‥‥によって、頭がいっぱいだ。

 個人が何よりも、大切だ。いつの間にか、個人がもっとも尊い存在となっている。家族や一族や国は、個人の下に位置している。

 個人という言葉は明治に入るまで、日本語のなかに存在しなかった。西洋語を翻訳してつくった、明治新語の1つだ。

 それまでは、日本人は持ちつ持たれつで、心と情を共有して生きていたから、自己だけを主張する「個人」という発想がなかった。

 つい3、40年前までは、人々は心と情によって結ばれていた。縁を大切にして「ご縁をいただいて」と、いったものだった。いまではお金の「円」が、縁を駆逐してしまった。

 お金はいったんつかってしまったら、何も残らない。金(かね)が人と人の絆(きずな)になると、刹那(せつな)の結びつきになる。

 人々がお金とハイテクノロジーによって動かされ、心も情もない社会に生きるようになると、人の心は生きているから、心が傷ついて、神経症を患う者が増えることになる。

 全員が口を揃えて、現代生活の「ストレス」を訴えるが、この言葉も3、40年前に存在しなかった。そのために家庭内暴力や、60歳になっても引きこもる人々が、珍しくない。

 かつては、お金やハイテクノロジーにかわって、道徳や、一族、地域の絆、理想が生活を律していた。

 明治22(1889)年に公布された大日本国憲法と『教育勅語』は、アメリカ占領軍によって廃止されたが、理想を説いていた。

 アメリカが占領下で、主権を失った日本に強要した日本国憲法は、日本精神を失わせて、日本に武装を禁じ丸裸にすることによって、日本がアメリカに永久に従属する国となるように、日本国民から誇りと独立精神を奪うことを、はかったものだった。

 現行憲法は、“アメリカの平和のための”「平和憲法」だった。

 ところが、日本国憲法が公布された僅か四年後に、ソ連と中国が北朝鮮を嗾(けしか)けて朝鮮戦争が始まったために、日本政府に慌てて自衛隊の前身となった警察予備隊を創設するように命じて、日本の再軍備が始まった。

 「平和憲法」は大失敗作だった。日本国憲法の賞味期間は、4年しかなかったのだ。

 その後、日本国民は賞味期限が数十年も前に切れた憲法を、食べ続けている。腐敗した、異臭がある食物をたべているようで、心身ともに健康を害している。

 現行憲法は前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることがないやうに」といって、先の戦争はアメリカが仕掛けたのに、責任を日本だけに負わせて、日本が“性悪の国”だときめつけている。

 このままでは、日本が滅びる。現行憲法を改正して、前文に日本が誇るに価する国であって、家族と社会の絆を尊び、国民が心と情を分かち合う理想を、高らかに謳(うた)いたい。

憲法を改められないのは江戸時代の呪いか

Date : 2019/07/31 (Tue)

 6月はじめに、日本を代表する刀匠の後援会が千葉市で催された。

 松田次泰刀匠は千葉県が誇る刀工だが、鎌倉時代の古刀の作刀によって知られ、日本刀文化の継承に努めてきた。

 役員や来賓が、かわるがわる挨拶した。

 私の番になったので、「令和の御代が明けてはじめての総会ですが、『令』は『令日』『令夫人』などの『よい』を意味し、『和』は日本文化を支える、何よりももっとも基本となってきました」と前置きして、次のように述べた。

 日本の文化の源は「和」

 「日本刀、武道、女性がたの和装、茶道、華道などの日本文化は、すべてが和をもたらす基(もと)となる自制心のうえに、成り立っています。日本刀は武器であるよりも、優れた美術品であり、持ち主の邪気を祓い、心を研ぎ澄ませ、節度を持って振る舞うように求めます」

 「世界の諸国のなかで、このような清さと美しさを追求した刀剣は、他に存在しません。『清く正しく美しく』といえば、宝塚歌劇団のモットーですが、まさに日本刀をはじめとする、日本文化に当て嵌まります」

 日本刀は付属する品々とともに、国宝のなかで件数がもっとも多いが、武器として使われることが、ほとんどなかったからだ。日本刀がもっとも多く用いられたのは、幕末の京都だったろう。

 アメリカのトランプ大統領が、この前の月の5月に訪日した。

 これまでアメリカから多くの大統領を迎えたが、トランプ大統領の訪日は日米の絆がかつてないほどまでに、強いものとなったことを示した。

 アメリカはイギリスと他にない結びつきである「スペシャル・リレイションズ」によって、固く繋がれているといわれる。日米関係も米英関係に近いものとなりつつあると、痛感させられた。

 アジア太平洋はアメリカの生命線

 アジア太平洋はインド洋も加えて、アメリカの生存にとって欠かせない地域である。

 しかし、アメリカがこの地域において信頼できる国は、どこにあるだろうか? インド、タイ、ベトナム、フィリピン、ましてや韓国ではない。アメリカにとって日本しか、寄り掛かれる国はない。

 トランプ大統領と安倍首相は、5月27日に横須賀港を訪れて、海上自衛隊のヘリコプター搭載大型護衛艦『かが』に乗艦して、日米の絆を称えた。

 日本にとってこの日は、栄えある『海軍記念日』だった。明治38(1905)年に、日本海海戦によってロシア艦隊を撃滅した日だった。

 『かが』はF35B最新鋭ステルス戦闘機の母艦として、本格的な空母に改装されることになっているが、真珠湾攻撃に参加した空母の1隻である、栄光の軍艦『加賀』の艦名を継承している。

 栄光の艦『加賀』と『ワスプ』

 トランプ大統領は『かが』から退艦すると、安倍首相に見送られて、米海兵隊のヘリコプターに乗って、港内に停泊する米大型揚陸艦『ワスプ』へ移った。

『ワスプ』は昭和17(1942)年9月に、わが伊19号潜水艦がガダルカナル戦中に、南太平洋で撃沈して凱歌をあげた米空母『ワスプ』の艦名を、受け継いでいる。

 日米戦争から74年もの歳月が流れて、日米が和解したのだ。このような日米関係が常(とわ)に続いてゆくことを願いたい。

 だが、アメリカとイギリスの特殊な関係(スペシャル・リレイションズ)は、アメリカの歴史が17世紀初頭に、イギリスから『メイフラワー』号に乗って迫害から逃れた清教徒が、北アメリカ大陸に上陸した国産みから始まり、英語を分かち合っているのに対して、日米同盟は両国の一時的な便宜の産物でしかない。

 来年のアメリカ大統領選の行方は

 私はトランプ大統領がこのままゆけば、来年再選されると信じているが、対中融和政策を説くバイデン前副大統領をはじめ、次期大統領選へ向けて20数人が競っており、多くの候補が富裕税の導入、所得格差の解消、国民健康皆保険、国防費の大幅削減など、アメリカを北欧型の高度福祉国家に変えようなどと主張している。このなかの1人がホワイトハウスの金的を射止めれば、秤(はかり)が日本を軽視するほうへ傾くことになろう。

 中国が太平洋の覇権を握ろうとして、異常な軍拡を強行しているかたわら、北朝鮮が核兵器を手離すことはありえない。日本は薄氷のうえを歩んでいる。

 御代が替わったが、私は平成の30年間を、日本の周辺が風雲急を告げているというのに、何よりもアメリカの占領下で強要された欠陥憲法を改められなかったことによって、記憶しよう。

 最高法規であるべき憲法の前文の日本語の文法が、誤まっている。どうして、国語審議会が目を瞑(つむ)ってきたのか。

 現行憲法は「平和憲法」として罷り通っているが、占領軍が当時「アメリカの平和」のために強いたもので、日本政府に「これを呑まないと、天皇の一身の安全を保障できない」といって、英文の原案を手渡してから1年3ヶ月後に公布された。

 帝国憲法を全面的に書き改めたものだから、もし日本国民の手で改正したのだったら、まさか1年あまりで公布できなかったろう。

 日本国民は賢明であるのに、講和条約によって日本が独立を回復してから67年の歳月(さいげつ)を重ねたというのに、日本が独立国であることを頭から否定して、憲法ととうてい呼べない憲法を、いったいどうして、長いあいだ崇めてきたのか。

 占領軍が日本国民を洗脳して、東京裁判史観を植えつけたからだと説明されるが、日本国民はそれほど愚かなのだろうか。

 江戸時代の呪縛が続いている

 平成3年は、江戸開府400年に当たった。日光東照宮が記念事業として「江戸研究学会」を立ちあげたが、私は世界のなかで江戸時代は庶民がもっとも恵まれていたと書いたり、講演してきたので、求められて会長を引き受けた。

 江戸時代は平和がずっと続いて、庶民が豊かな生活を営み、絢爛たる文化を創り出した。

 だが、300年近く続いた平和は、明治以後の日本にとって呪いともなった。  

     江戸時代の日本は、徳川家による支配を永続させることを目的としたから、新しい政治思想や、能力主義をいっさい斥けて、血筋と年功序列による、硬直した体制をつくりあげた。

 幕府は泰平を維持するために、何よりも戦乱を恐れた。武士は幕府が統治思想とした儒教漬けにされたが、孫子の心髄である「兵者詭道也(へいはきどうなり)」(敵を騙すこと)を学ばせなかった。幕府は儒教の王道を重んじて、詭計を許さなかった。兵法(ひょうほう)が軽視されて、戦略思考が否定された。

 武士道は死ぬことに価値を置いた

 武士道は戦うことが目的でなくなり、勝つことではなく、「死ぬ」ことに価値が与えられ、精神修養の哲学に退化した。

 江戸時代に庶民を涌かせた『忠臣蔵』は、吉良邸に突入する前に、馬鹿ばかしいことに、正門前で大石内蔵助が山鹿(やまが)流の陣太鼓を高らかに打ち鳴らすのが、見世場となっている。47士は奇襲したのではなかったのか。だが、奇襲したとなると、王道に反した。

 明治維新は徳川体制を根底からつくり直したから、才気ある人々が登場して国を導いた。ところが、日清、日露戦争に勝つと、自信過剰の自家中毒を患って、国の仕組みが江戸時代へ戻ってしまった。

 日本は先の対米戦争でボロ負けした。陸海軍から官界までが、年功序列によった。帝国の興亡がかった真珠湾攻撃、ミッドウェー作戦の司令官は南雲忠一中将で、砲術の権威だったが、航空戦についてまったく無知だった。

 戦後、高度経済成長によって世界第2位の経済大国となると、日露戦争の後に似た。

 いつの間にか、日本国憲法が権現様――家康公の祖法になってしまったと思う。

権現様はまだ生きていらっしゃるの?

Date : 2019/07/19 (Fri)

 令和の御代が明けた。

 平成の最後の統一地方選挙中に広島に応援に行った帰りの航空便で、スチュワーデスに読むものを頼んだら、『週刊朝日』をくれた。

 すると、新しい元号の『令和』は、命令、指令、令状の令であって、“安倍一強”の傲りを示していると腐(くさ)していた。

 私は令和から、令日、令人、令節とか、美徳や、善行を意味する令徳、ほまれの令聞、よい評判の令望などを連想していたので、きっと版元の新聞社の雑誌担当者の令夫人が、夫を四六時中、小突き回すので、令の字に恨みがあるのだろうと思って、身につまされた。

 結婚は1国2制度だから、難しい。イギリスの大詩人のバイロンが、長編風刺詩『ドン・ジュアン』のなかで、「人生という芝居の第1幕は恋愛という喜劇、第2幕は結婚という悲劇」と指摘しているが、きっと人生は悲喜劇なのだろう。だから人生は面白い。

 機窓の外には、どこまでも青い空がひろがっていた。

 私は鳥を飼ったことがないが、小鳥は美しくみえる黄金の籠のなかに住みたいと願い、籠のなかに閉じ込められてしまった鳥は、大空をまた自由に飛びまわりたいと、絶望に駆られるにちがいない。

 フランスの諺に、「結婚の鎖は重い」というものがある。「だから3人で運ばなければならない」と続いている。女房に秘密で恋人をもたねばならないという、勧めだ。

 平成が終わった。私は平成の30年間を、日本の周辺が風雲急を告げているのに、アメリカによって押し付けられた欠陥憲法を、1行すら改められなかったことによって、記憶しよう。

 最高法規であるべき憲法の前文は、日本語として文法が目茶苦茶だ。どうして国語審議会が目を瞑(つむ)ってきたのか。

 この不真面目(ちゃらんぽらん)な憲法を真面目(きまじめ)に解釈する法律学者たちが、「専守防衛」とか、「必要最小限度の防衛力」とか、泥酔して錯乱したとしか思えないが、意味不明に解釈して国民の目を覆っている。

 戦後の日本の金科玉条となっている「専守防衛」という言葉は、意味がまったくないので、英語や、ヨーロッパ諸語に訳することができない。

 そこで諸外国民を理解させるためには、来年、野球が東京オリンピックの種目入りしたのを好機として、日本の選手がバッターボックスに立つ時には、バットを持たせないことにしよう。「専守」だから、日本チームに攻撃となる打球を禁じる。

 きっと、全世界が日本国憲法の崇高な精神に打たれて、感動しよう。

 妻か夫が重い病いにかかったら、病院に「必要最小限度」の医療を施すように、頼もう。だが、いったい「必要最小限度」の医療なぞ、あるものだろうか? それなら「必要最小限度」の国防も、あるはずがない。

 妻か愛人に「これからは、必要最小限度の愛情を濯ごう」といったら、「あほ! ふざけるな!」と一喝されて、たちまち張り飛ばされてしまおう。

 こんなことを、毎日のように口角沫(あわ)を飛ばして議論している国会は、精神科重症患者病棟という看板を掛けるべきだ。

 日本国憲法の精神は、互いに「公正と信義」に委ねるべき夫婦のあいだか、愛人関係のなかに留めたい。

 現行憲法は「平和憲法」の愛称によって罷り通っているが、「アメリカの平和」のために強要したもので、占領軍総司令部が日本政府に「これを呑まないと、天皇の一身の安全を保障できない」といって、英文の原案を手渡してから、1年3ヶ月後に公布された。

 大日本帝国憲法を全面的に書き改めたものだから、もし日本国民の手で改正したのだったら、まさか、1年3ヶ月で公布できなかったろう。

 アメリカ軍の施政下で現行憲法が施行されてから、今年で72年の歳月(さいげつ)が流れている。

 いったい、どうして日本が独立国であることを頭から否定している、憲法ととうてい呼べない憲法を、こんなに長いあいだ崇めてきたのだろうか。

 占領軍が日本国民を洗脳して、東京裁判史観を植えつけたからだと説明されるが、日本国民はそんなに愚かなのだろうか。

 平成3年は、江戸開府400年に当たった。

 日光東照宮が「江戸研究学会」を記念事業として立ちあげたが、私は江戸時代は庶民が世界のなかでもっとも恵まれていた時代だったと書いたり、講演してきたので、求められて会長を引き受けた。

 江戸時代は平和がずっと続いて、庶民が豊かな生活を営み、絢爛たる文化を創り出した。

 だが、300年近く続いた平和は、明治以後の日本にとって呪いともなった。  

     徳川時代の日本は徳川家による支配を持続することが目的だったために、新しい政治思想や、能力主義をいっさい斥けて、血筋と年功序列による硬直した体制を墨守した。明治維新は徳川体制を根底からつくり直したから、才気ある人々が国を導いたが、日清、日露戦争に勝つと、過剰な自信の自家中毒を患うようになって、江戸時代へ戻ってしまった。

 先の対米戦争で、日本はボロ負けした。政界から陸海軍まで、年功序列によった。帝国の興亡がかった真珠湾攻撃、ミッドウェー作戦の司令官は南雲中将で、砲術の権威だったが、航空戦について無知だった。

 江戸時代の武士は儒教漬けにされたのに、孫子の心髄の「兵は詭道也」(敵を騙すこと)は、学ばなかった。武士道は精神修養の哲学に退化してしまい、勝つことではなく、「死ぬ」ことに価値が与えられた。

 高度経済成長による経済大国化は、日露戦争の勝利に似ていた。日本国憲法がいつの間にか、権現様の祖法になってしまった。

天啓のアフリカ

Date : 2019/07/11 (Thu)

私は仕事で、国内、国外を頻繁に旅行する。海外が200回を数えよう。

 草鞋を脱ぐ暇がない。懐かしい思い出がいっぱいに詰まった、宝石箱のようだ。

 私はアフリカを訪れるのを夢見ていた。80年代に希少金属の国家備蓄計画を提言したところ、通産省から希少金属が集中して産出するアフリカ南部へお使いすることになった。

 ジンバブエで大臣に接待された。ワインで喉を潤しながら、「わが国にお出下さる貴国の方々のパスポートに生年が記されていますが、戸籍制度がないのにどうしてお分かりになりますか」と質問した。すると、「自分で申告します。自分でそう思っている歳のほうが、正しいでしよう?」と切り返された。

 天啓だった。私がいまでも若いと思っているのは、そのためだ。

 ナミビアでも閣僚が歓待してくれた。父親は族長で妻が12人いるが、自分は妻が1人だと語った。「私も妻が1人ですが、苦労しています」と苦笑したら、「12人もいれば妻たちが自治会をつくっているので、問題ありません。それより1人が大変です。人間関係は1対1が、いちばん難しいでしよう?」とたしなめられたのを、忘れられない。

欠陥憲法を墨守しつづける愚

Date : 2019/07/10 (Wed)

 令和の御代が明けたが、平成の30年、日本の周辺が風雲急を告げているのに、なぜなのか、欠陥憲法を改めることができなかった。

 最高法規であるはずの憲法の前文は、日本語として文法が目茶苦茶だ。どうして国語審議会が、目を瞑(つむ)ってきたのか。

 このちゃらんぽらんな憲法を真面目(きまじめ)に解釈する法律学者たちが「専守防衛」とか、「必要最小限度の防衛力」とか解釈しているが、泥酔して錯乱したとしか思えない。

 金科玉条となっている「専守防衛」という言葉は、まったく意味が不明だ。英語や、外国語に訳することができない。

 外国人に理解させるために、来年、野球が東京オリンピックの種目入りしたのを好機として、日本の選手がバッターボックスに立つ時には、バットを持たせなかったらどうか。「専守」だから、攻撃である打球を禁じる。

 家族が重病を患ったら、病院に「必要最小限度」の医療を施すように頼もう。だが、「必要最小限度」の医療なぞあるだろうか? 「必要最小限度」の国防も、あるはずがない。

 こんなことを議論している国会は、重症精神患者病棟という看板を掛けるべきだ。

 現行憲法は「平和憲法」だというが、「アメリカの平和」のために強要したもので、占領軍総司令部が日本政府に「これを呑まないと、天皇の一身の安全を保障できない」といって、英文の原案を手渡してから、1年3ヶ月後に公布された。帝国憲法を全面的に書き改めたのだから、もし日本国民が改正したのなら、1年3ヶ月で公布できなかったろう。

 アメリカ軍の施政下で現行憲法が施行されてから、今年で72年もの歳月(さいげつ)が流れた。

 どうして日本が独立国であることを否定して、とうてい憲法と呼べないのに、改められないのか。占領軍が日本国民を洗脳して反日思想を植えつけたというが、国民はそれほど愚かであるはずがない。

 平成3年は、江戸開府400年に当たった。

 日光東照宮が「江戸研究学会」を記念事業として立ちあげたが、私は江戸時代は庶民が世界のなかでもっとも恵まれていた時代だったと書いたり、講演してきたので、求められて会長を引き受けた。

 江戸時代は平和が300年近く続いて、庶民が豊かな生活を営み、絢爛たる文化を創り出した。だが、平和だった江戸時代は、明治以後の日本にとって呪いともなった。

 江戸時代は徳川家の支配を持続することを目的としたために、新しい政治思想や能力主義を斥けて、血筋と年功序列による硬直した体制を墨守した。明治維新は徳川体制をつくり直して、才気ある人々が国を導いたが、日清、日露戦争に勝つと、過剰な自信をいだくようになって、江戸時代へ戻ってしまった。

 先の対米戦争で、日本はボロ負けした。政界から陸海軍まで年功序列によった。帝国の興亡を賭けた真珠湾攻撃、ミッドウェー作戦の司令官は南雲中将で、砲術の権威だったが、航空戦について無知だった。

 江戸時代に入ると、戦国時代の戦略思想が消し去られた。武士は儒教漬けにされたが、孫子の心髄の「兵は詭道也」(敵を騙すこと)は学ばなかった。武士道は精神修養の哲学に退化してしまい、勝つことではなく、「死ぬ」ことに価値が与えられた。

 高度経済成長による経済大国化は、日露戦争の勝利に似ていた。日本国憲法が家康公の権現様の祖法と同じものに、なってしまったのだ。

飢餓状態の国民を無視して核開発にすがる北朝鮮

Date : 2019/07/10 (Wed)

 アメリカが北朝鮮という弱小国に、翻弄されている。

 いや、北朝鮮の金正恩委員長がアメリカによって、翻弄されているのかもしれない。

 2月のハノイにおける第2回目の米朝首脳会談が、金正恩委員長がトランプ大統領に対して、過大な要求を行ったために物別れに終わってから、北朝鮮の核放棄をはかる米朝交渉が袋小路に向かっている。

 そのわきで米中関係が激化する関税戦争によって、隘路にはまっている。

 いまや、アメリカの覇権に挑戦する中国を抑えつけようとするのは、トランプ大統領だけではなく、民主党が下院で多数を占める議会の強い意志でもある。

 習近平主席はこのままゆくと、中国がよろめいてしまうから、アメリカに譲歩したくても、独裁者として権威を守るために、容易に引き下がるわけにゆかない。今後、長期化する米中の対決が、日本経済を急速に冷やしてゆくから、10月の消費税は凍結されよう。

 国連世界食糧計画(WFP)によれば、北朝鮮は今世紀に入ってから最悪の食糧不足に直面しており、人口2300万人のうち40%以上に当たる1000万人が、飢餓状態に陥っているという。核弾頭や、各種のミサイルの開発に、国費を注ぎ込んだためだ。

 さっそく韓国の文在寅大統領が国連を通じて、お気に入りの国・北朝鮮に、8億ドル(約880億円)相当の食糧人道援助を行うことを発表した。軍人の腹をみたそうが、人民にとって焼け石に水にしかならない。

 北朝鮮はそのようななかで、5月に2回にわたって短距離ミサイルを、日本海に撃ち込んだ。短距離ミサイルを発射することによって、アメリカに向かって米朝協議を早く再開してほしいと、駄々をこねたのだった。

 日本政府は弾道弾の発射を、国連安保理事会による決議違反だとして抗議したが、トランプ大統領は北朝鮮の非核化へ向けて米朝協議を続けてゆきたいと望んでいるので、まったく問題にしなかった。金正恩委員長は肩すかしにあって、落胆しただろう。

 トランプ政権は協議再開を呼び掛けているものの、北朝鮮が完全な非核化へ向けて具体的な措置をとらないかぎり、応じないという態度をとっている。それに対して、北朝鮮はアメリカがこの年末までに経済制裁の緩和について譲歩しないかぎり、危機がもたらせられると、脅している。

 金正恩氏が頼りにしている中国は、中米関係をこれ以上悪化させたくないから、北朝鮮どころでない。ロシアも同じことだ。

 金正恩氏はハノイに乗り込むまでは得意満面だったが、孤立してしまった。アジアの孤児となって、鬱々たる日を送っていよう。

 それにしても、金正恩氏は国民の10人に4人が餓えているというのに、ただ1人、肥満体をかかえている。

 古代ギリシアの歴史家で、ソクラテスの弟子だった、クセノフォン(紀元前430年頃~前355年頃)が、紀元前5世紀のイタリア南部にあった、都市国家のシラクの残虐な専制王だったヒロエン1世(在位前474年~467年)との対話を創作している。

 「毎日、贅を盡して楽しいでしよう?」とたずねると、ヒロエンが「暗殺に怯えているから、惨めだ」と答える。

 「国中から賞讃されて、快感に浸れるでしよう」というと、「うわべだけのことだ」と、吐き捨てる。

 「でも、美女をほしいままに抱く楽しみがあるでしよう?」と問うと、「女であれ、男であれ、友が1人もいない。索漠とした毎日だ」と、告白する。「毎食、最上の料理を口にできるでしよう?」ときくと、「美食に飽々としてしまうから、美食の楽しみを奪われる。何一つ楽しみがない」と、嘆く。

 金正恩氏を憐れんではなるまい。日本にとって、北朝鮮は同情に価しない国だ。

パリのノートルダム聖堂が炎上した

Date : 2019/07/02 (Tue)

 4月15日にパリのノートルダム聖堂が、キリスト教の最大の祝日とされる復活祭のさなかに、炎上した。

 イエス・キリストが十字架に磔(はりつけ)られ、3日後に復活したと伝えられるのを祝う祭である。

 私はテレビのニュースで尖塔が燃え落ちるのを観ながら、セーヌ川の中洲のシテ島に建つ大伽藍といえば、エッフェル塔と並ぶパリの観光名所だが、もはや信仰の対象でなくなっていることを思った。

 ノートルダム聖堂は歴史の博物館だ

 ヨーロッパでは、キリスト教というより宗教離れが、進んでいる。フランスも例外ではない。最近、フランスで行われた調査によれば、フランスの若者の7%しか教会に通わない。

 いや、ノートルダム聖堂は観光施設になっているというよりも、貴重な歴史博物館といったほうがよい。

 ノートルダム聖堂はいまから800年前に着工され、200年かけて完成した。「ノートル・ダムNotre Dame」は「わが婦人」を意味するが、聖母マリアのことだ。

 フランスといえば、すぐにフランス革命を連想させられる。

 フランス革命は、国王、王妃をはじめ、5万人以上の貴族、地主など富裕階層、僧侶、尼、政敵などを大量処刑した蛮行だったのに、いまでも「パリ祭」として盛大に祝われている。

 情――心よりも、理を優先するヨーロッパ人や、中国人は恐ろしい。日本に生まれて幸せだったと安堵する。

 5年以内に再建するというが

 フランス革命は1789年に始まったとされているが、革命派はキリスト教を敵視して、徹底的に弾圧した。

 1793年に、ノートルダム聖堂から十字架や聖像をいっさい取り払って、かわりに祭壇に革命の象徴とされた、裸身に腰巻きをまいた猥雑な女性像が安置され、“自由、平等、博愛”の殿堂となった。

 ナポレオンが1804年に皇帝として戴冠式を行うために、再び教会とした。  

     ノートルダム聖堂が炎上すると、マクロン大統領がただちに「5年以内に聖堂を再建する」と述べた。2024年にパリ・オリンピック大会が、開催される。

 私はフランスだけでなく、西ヨーロッパ諸国でキリスト教が力を失っているが、いったいノートルダム聖堂が再建されたとしても、ヨーロッパでキリスト教が力を復活できるのか、疑った。

 フランスでは、イスラム移民が人口の10パーセントに当たることから、再建したノートルダム聖堂は多文化を尊重して、イスラム教の礼拝も合わせて行うべきだという議論がある。

 それにしても、ノートルダム聖堂の火災が、宗教や人種対立のテロによるものではなく、失火だったと知って、胸を撫でおろした。宗教・人種間のテロのグローバリゼーションの恐怖が、世界を覆うようになっている。

 ニュージーランドのクリスチャン・チャーチにおける、白人至上主義者による大量殺戮が起ったばかりだ。もし、スリランカのようなイスラム過激派による放火だったとしたら、ヨーロッパにおける宗教・人種間のテロが激化した。

 西洋の信仰心の行方は

 ヨーロッパにおいてキリスト教の信仰心が衰えたといっても、ヨーロッパの人々はヨーロッパをキリスト教文明圏だとみなしており、イスラム住民に対する嫌悪を強めたことになったろう。

 宗教・人種対立の根は深い。ユダヤ教から分かれたキリスト教が、ユダヤ教の唯一つの聖書を、神の古い約束である『旧約聖書』と呼んでいるが、『旧約聖書』と、ユダヤ・キリスト教から派生したイスラム教の聖典『コーラン』を読むと、宗派や、部族間の憎悪を煽っていることに、呆然(ぼうぜん)とさせられる。

 神武天皇が即位された時に発せられた詔(みことのり)に、世界の全ての人々が一つの家族として睦みえという、「八紘一宇(はっこういちう)」の教えがあるのと比較すると、地球と別の惑星が存在しているようにすら思える。

  神道が森羅万象の和を説く、心の信仰であるのに対して、宗教は信じること――理のうえに、成り立っている。

 紀元1世紀頃に生きたローマの大学者だったケルススが、キリスト教を論じた著作がある。

 「キリスト教徒は十字架を力の象徴として仰いでいるが、もし、キリストが絶壁から投げ下ろされて死んだとしたら、壁を拝むのだろうか」「なぜ、全知全能の神が人の姿をして、地上に降りる必要があったのか」「どうして完全無欠の神が、欠陥だらけの人を装うことができたのか」「なぜ、この時になって人を救おうとしたのか。世界のなかでたった一つの地域だけ、選んだのか」「神とイエスの二人の神がいるのなら、その上に最高神がいるはずだ」と、辛辣に批判している。

 ケルススはセルサスとしても、知られている。百科事典を編纂したといわれるが、このなかの薬科全書だけが遺っており、ヒポクラテスと並ぶ碩学として称えられてきた。

 キリスト教離れが進んでいる

 キリスト教の教義のなかで、もっとも難解なのが、神とその子のイエスと精霊の3つが1つの存在であるという三位一体であり、教義の基本となっている。

 私が親しくしているフランス人のジャーナリストは、もはやキリスト教を信じていないが、「三位一体はスーパーマーケットで、1つの値段で3つ買えるというものだ」といって、笑っている。

 フランシス教皇が来日する

 この11月に、カトリック教会のフランシス教皇が来日して、長崎、広島を訪れることになっているが、このところカトリック教会は崩壊の危機に瀕している。  

     今世紀に入ってから、カトリック教会では全世界にわたって、枢機卿、大司教、司教、神父をはじめとして、多くの聖職者が、青少年、女性や、尼僧に性暴行を加えたかどで告発され、教会の土台が大きく揺ぐようになっている。

 教会は性的な紊乱によって蝕まれてきたのを、長いあいだにわたって隠蔽してきた。

 イエス・キリストが「人を獲る漁師」と呼ばれたことから、魚がカトリック教会のシンボルの1つとなってきたが、在京のイタリアの外交官と教会の性スキャンダルについて話していたら、「イタリアには『ロ・ソホ・コメ・ウンペチェ・ノン・ポソ・パルラーレ』(魚は口をきかない)という諺(ことわざ)がありますよ」と、教えてくれた。

 エコロジーが新しい信仰だ

 フランシス教皇は2013年から“神の代理人”として、カトリック教会の頂点に立ってきたが、カトリック史上、離婚者の再婚をはじめて容認し、聖書で固く禁じている同性愛者を祝福するなど、物議をかもしている。フランシス教皇はバチカン法王庁教皇補佐役のクリストフ・カラムサ神父と、同性愛のパートナーとして同棲してきたことを認めたと、欧米で報じられている。

 アメリカの大都市部でも、キリスト教離れが進んでおり、人々が自然に神性を感じるようになっている。宗教にかわって、エコロジーが人々の新しい信仰となりつつある。

 日本は自国の文化を大切にしよう

 宗教、人種間のテロがグローバル化しているかたわら、人が八百万千万(やおろずちよろず)の森羅万象によって生かされており、自然を敬う日本の心に当たる、エコロジーが力をえるようになっている。

 幕末から明治にかけて、浮世絵を中心としたジャポニズムが、西洋の絵画芸術、ファッション、庭園、建築などに、深奥な影響を与えた。だが、この時代のジャポニズムは、視覚的なものだった。

 だが、いまや万物に霊(アニマ)が宿っている日本のアニメから、自然を食する和食、武道、茶道、おもてなしの心まで、精神的なジャポニズムが新たな高波となって、西洋を洗いつつある。

 日本国民として、いまこそ自国の文化を大切にしたい。

昭和天皇 そのご動静と苦悩

Date : 2019/06/24 (Mon)

    私は先の大戦の最後の年の昭和20年の元日の夜明けから、対日占領が終わった1年前にマッカーサー元帥が罷免され離日するまで、昭和天皇のご動静を、『週刊新潮』に昭和49年5月から50週にわたって連載した。

  天皇を囲んでいた皇族、政府・軍幹部、侍従、身のまわりをお世話する内舎人(うどねり)、祭祀を介添えする掌典(しょうてん)、巫女の内掌典など160人以上に、克明なインタビューを行ったものだった。

 空襲が激しくなるなか、天皇が皇居でどのように過されていたのか、徹底抗戦を叫ぶ軍と、現実との和戦の狭間(はざま)に立たれて、どのように苦悩されたか、知られなかった真実があきらかにされたために、大きな反響を呼んだ。

 連載が始まると、海軍軍令部に勤務されていた高松宮殿下が、開戦翌年に海軍がミッドウェー海戦で主力の機動艦隊を失った直後に、「兄宮」(天皇)に宛てて、「この戦争に勝てない」と私信を届けられた秘話を伺って書いたが、殿下がそれまで語られることがなかったので、大きな話題を呼んだ。

 昭和天皇は弟宮と会われても、その職責にない者の意見を、取り上げられなかった。

 昭和天皇は私たちとまったく違う時間の尺度を持っておられた。日本を2000年以上にわたる物差しで、考えておられた。

 昭和20年に戻ろう。天皇は軍がまだ勝利を収めることができると、信じられていた。

 2月に近衛文麿公が拝謁して、「日本は戦争に敗れた。今降伏しないと共産革命が起る」と上奏すると、「もう一度戦果を挙げたうえでないと難しいと思う」と、仰言せられた。

 天皇は幼少時から、乃木希典大将、東郷平八郎元帥などの薫陶を受けられて、軍を信頼されていた。梅津治美郎参謀総長が皇居内の防空舎に連日参内して、フィリピンにおける戦況を地図をひろげて上奏すると、「それで大丈夫か。兵站(へいたん)はどうなっておるか」と鋭く指摘されたが、命令されることはなかった。

 硫黄島が失陥し、4月に米軍が沖縄本島に上陸した6日後に、鈴木貫太郎海軍大将に組閣を命じられた。鈴木は木戸幸一宮内相から陛下が「終戦を考慮あそばしておられるように拝察する」ときかされた。

 天皇皇后は御住まいを兼ねた防空舎の御文庫で、しばしば夜、侍従、侍従武官、女官などを招かれて、かるたを楽しまれた。侍従武官が「夜ハ謡かるたノ御相手ニ興ズ。賑ヤカニ遊バサル」と、日記に記している。

 天皇は懊悩されていた。「あのあの」とか、「どうもどうも」とよく独り言をいわれ、朝晩歯ブラシをくわえられたまま、注意申し上げるまで呆然とされておられた。

 5月に木戸と連合国の和平条件について相談され、「和平は早いほうがよい。だが、鈴木は講和の条件についてどうも弱い。軍の完全武装解除について、何とか3000人か5000人残せないか」と仰言られた。木戸が「5000人残しても、有名無実です」とお答えした。

 7月に入ると、天皇は伊勢神宮にある八咫鏡(やたのかがみ)と、熱田神宮にある草薙剣(くさなぎのつるぎ)が米軍に奪われることを、憂慮された。三種の神器のもう一つである勾瓊(まがたま)は、皇居にあった。天皇は木戸に、「万一の場合は、自分がお守りして運命を共にするつもりだ」と、いわれた。  昭和天皇は、いつ終戦を決意されたのだろうか?

  天皇は前年10月に靖国神社の例大祭に御幸されたのを最後に、東京空襲が始まったので、皇居から出られなかったが、3月10日に東京大空襲によって10万人が死亡したと推計されると、被災地を視察されたいといわれた。

 軍は「一億玉砕」の本土決戦を決めていたから強く反対したが、3月18日に皇居を出られて、1時間以内に往復できる深川の富岡八幡宮に御幸された。

 天皇は神社の境内から四囲の焼け野原を見入られて、「こんなに焼けたか‥‥」と絶句され、御料車へ促されるようにして戻られた。私は天皇がこの時に、終戦を決意されたにちがいないと確信した。だが、私の推測でしかなかったので、そう書くことができなかった。

 富岡八幡宮の大鳥居を潜ると、伊能忠敬の銅像がある。忠敬はここで成功祈願を行ってから、全国測量の第一歩を踏み出した。

 私は忠敬の玄孫(やしゃご)に当たるので、“江戸の三大祭”といわれた富岡八幡宮の例大祭が江戸時代を通じて、8月15日であることを知っていた。天皇が終戦を決意され、例大祭の日に大戦が終わったのは、御祭神の神威によるものだったと考えたが、これもオカルトのようだったので書けなかった。

 天皇はこの後空襲を恐れて、終戦まで皇居の外にお出になられなかった。

 8月に終戦を決定した御前会議が開かれ、天皇は「ほかに意見がないようだから、わたしの意見を述べる。わたしは国内の事情と世界の情勢を考え合せたうえで、これ以上、戦争を続けるのは無理だと思う」と仰言せられて、御聖断を下された。天皇は白手袋の指先で、頬を伝わる涙をしきりに拭われた。

 天皇は阿南惟幾陸相が号泣しているのを見られて、「阿南、阿南! わたしには国体を護る自信がある」と叫ばれた。

 軍人は天皇と軍が一体だと、信じていた。「特攻隊の父」といわれた大西滝治郎軍令部次長をはじめ、「天皇は先頭に立たれず、皇居で女官と遊んでおられる」と批判する高級軍人がいたが、天皇は日本の最高祭司であられて、武家の棟梁ではなかった。

 貞明皇太后は御前会議の決定を知られると、かえって「皇室が明治維新の前に戻るだけのことです」と、毅然としていわれた。

 歴史によって蓄えられた天皇の大きな力なしに、昭和20年夏の未曽有の危機に当たって、大戦を終えることができなかったろう。

(本書は3月に『昭和天皇の苦悩』『昭和天皇の苦闘』に分けて、勉誠出版新書として復刻された。)

皇位の安定的継承へ 皇室典範改正を

Date : 2019/06/07 (Fri)

 4月に都内で講演した時に、私は「天皇が日本の美徳を代表されているのに対して、政治家が悪徳を代表している」といった時に、和田政宗参議院議員が前列に座っていられるのに気づいて、「ごく少数の政治家を除いて」と、慌てていい直した。

 和田議員はNHKのアナウンサーとして知名度が高いが、皇室の崇敬者として、天皇を戴く日本の国柄を守るために、国政の場で先頭に立ってこられた。7月の参院選挙の改選に当たって、全国区から立候補されている。和田先生にぜひ投票していただきたい。

 天皇は2000年以上にわたって、日本の文化の原型を守ってくださってこられた。天皇は美徳を代表されてこられたからこそ、日本の民族意識のもっとも底にある要(かなめ)になってきた。

 日本国憲法は、天皇の地位が「主権の存する国民の総意に基く」と規定しているが、まさか、いま生きている国民だけを意味していまい。日本が開闢してから生きてきた、日本国民全員の総意に基くと、解釈すべきである。

 世界に200あまりの国があるが、元首の家系が万世一系といわれて、226代にわたって辿(たど)れる国は他にない。

 令和という元号が示すように、日本は天皇のもとで、国民の和を保ってきた。私たちは天皇がいない日本を想像することが、まったくできない。

 外国の王朝の出自はみな、覇者である。自由な選挙によって選ばれた首相も、覇者であることに変わりがない。天皇がいなければ、日本はまったく違った国となってしまおう。

 天皇、あるいは皇室のありかたが、その時代にあわせて変わってゆかねばならない、という声がある。

  「開かれた皇室が望ましい」とか、「皇室は国民のあいだに融け込む努力をするべきだ」という。そのなかで「庶民的なプリンス」とか、「庶民的なプリンセス」が人気を博する。

 だが、皇室を平民社会、大衆社会のなかに吸収させてしまって、よいものか。日本という国が現われてから、天皇家が変わることなく、文化の原型を守ってこられたからこそ敬われ、今日まで続いているのではないか。

 皇室の人気を芸能人の人気と、同じように考えてはなるまい。芸能人の人気は上がったり、下ったりする。

 天皇家は日本と世界の幸せを真摯に祈られる宮中祭祀を守られ、徳の手本として存在してくださっているから有難い。

 平成最後の年の4月に、天皇皇后両陛下が伊勢神宮に行幸啓された。テレビで拝したが、沿道を埋めた群衆のなかの中年の女性が、記者の質問に答えて、「もったいない」と語ったのが、国民感情を現わしていると思う。

 私は皇嗣殿下となられた秋篠宮殿下が、平成元年に礼宮であられたが、昭和天皇の諒闇(りょうあん)中に婚約された時に、皇室の将来について深い不安をいだいた。まだ、兄宮の御婚約が決まっていなかった。一般の家庭でも喪があけていないのに、急いで祝い事を決めないものだ。秋篠宮家のお二人の内親王殿下の奔放なお振舞いや、「一個人として」というご発言も、皇室のありかたにそぐわない。

 秋篠宮家の悠仁親王殿下が、皇位継承者第2位となられた。このままゆくと、悠仁親王がお一人だけになって、お世継が絶えて、皇統を維持することが危ふくなる。  

 先週、私の小学校の同級生のM君から、手紙を貰った。 「天皇家の将来を考えると、心配です。このままでは先細りになって、絶滅危惧種です。皇統の男子を残り少ない宮家の養子とするよう、皇室典範を改めるべきです。このままでは、全ての宮家が消滅してしまいます」

 まったく同感である。占領下で臣籍降下を強いられた旧宮家の男子を、皇籍に迎えるべきである。

 どのような社会も、その国の伝統文化によって、支えられている。

令和は未曽有の危機の御代だ

Date : 2019/06/07 (Fri)

 令和の御代は、日本にとって未曽有の危機をはらんでいる。

 トランプ政権はかつて東西冷戦下、レーガン政権がソ連を崩壊させたように、中国の共産体制を倒すことを決意している。米中関税戦争は、その入り口でしかない。

 中国が世界に対する脅威であって、中国を抑えつけようというのは、トランプ政権だけではない。アメリカ連邦議会の強い意志だ。

 中国経済が揺らいで、日本の景気も冷えきろう。10月の消費税増税は凍結されよう。

 令和の御代に、皇室の存続が問われている。日本国憲法が何をいおうと、天皇こそが国民精神の要(かなめ)となって、日本を日本たらしめてきた。

 天皇なしには日本は、中国や、韓国のような乱れた国となる。天皇が日本の美徳を代表してきたが、政治家は悪徳を代表してきた。 

  中国、朝鮮は覇者の政治文化だが、自由な選挙で選ばれた首相だって覇者だ。  

  いま、今上陛下を除けば、男性皇族が3人しかおられない。世論調査によれば、女性天皇を望む声が、80%を占めている。これまで8人の女性天皇が10代おいでになられたが、全員が独身か、寡婦だった。

 女性天皇と、女系天皇は違う。女性天皇が配偶者を迎えれば、皇統が2000年以上も男系で受け継がれてきたが、初代の女系天皇となる。遺伝子学によれば、DNAは男系によってのみ、受け継ぐことができる。女系は新しい血統になる。女系は亡国を招く。

 日本は天皇を頂点として戴く、家族国家であることを誇ってきた。日本を日本たらしめてきた家族制度が、崩壊しつつある。子孫を残すことが家の目的であったのに、「家」は住宅を意味するだけの言葉となってしまっている。

 社会が物質的に豊かになると、地域共同体や、集団を形造っている固い絆や、家族の結びつきが弱まって、個人が社会の主人公として、もっとも大事にされる存在となる。

 私たちは個人が崇められている、まったく新しい社会に生きている。個人の欲望をみたす金(かね)が、人と人を刹那的(せつなてき)に結んでいる。

 金(かね)には心も、情もない。伝統的な心の絆が力を失うと、家族愛も、愛国心も失われる。

 かつて企業は、家族といわれた。会社を家族として見なくなったために、正社員に替って、使い捨ての不正規労働者が働く場となった。愛社心も、愛国心も同じことだ。

憲法改正が実現する日こそ、主権回復の日となる

Date : 2019/06/03 (Mon)

 4月28日に、都内で「主権回復記念日国民集会」が行われて、私も弁士の1人として登壇した。

 この日は、日本がサンフランシスコ講和条約によって、昭和27(1952)年に独立――主権を回復した日に当たる。

 これまで、私はこの日の集会に参加したことがなかった。というのは、アメリカ軍による占領下で強要された憲法があるかぎり、日本が独立国として主権を回復したと思えないからである。

 現行の日本国憲法は前文の冒頭で、「日本国民は(略)政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とうたっているが、「政府」というのは、日本の政府のことである。

 私は日米近代史の研究者として、先の大戦はアメリカ政府の行為によって起ったと信じているが、この前文は不当なことに戦争の咎を、日本だけに負わせている。

 憲法第9条『戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認』では、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は」「永久にこれを放棄する」「陸海軍とその他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」と述べて、日本の主権を否定している。

 猛禽猛獣がうろつくジャングルである国際社会で、日本を赤子の生け贄のように放置しておくと述べているのだ。ここの「武力による威嚇」は、「武力による抑止力」と読むべきである。

 私は集会で登壇して、「残念だが、この憲法があるかぎり、日本が主権を回復したとはいえない」と、訴えた。憲法を改正した日を主権を回復した日として、祝いたい。

 現行憲法は日本国民に、国家権力が悪であり、戦うことがどのような場合においても、悪であると思い込ませてきた。だが、どのような国家も、国民の負託に応えて権力を行使するし、国民の生命財産と独立を守る必要に迫られた場合に、戦うものだ。

 いうまでもなく、権力は悪ではない。自国を守るために戦うことが、悪であるはずがない。日本は国旗、政府があっても、国家としての要件を満たしていない。  

 それなのに、いったいどうして日本の主権を否定する、憲法の名に価しない憲法を、今日まで戴いてきたのだろうか。

 私は現行憲法を“偽憲法”と呼んできたが、どうしてこのような重大な欠陥がある憲法を、今日に至るまで改めることがなかったのか、理解できない。

 多くの国民にとって先の敗戦は、男であれば戦勝国によって睾丸を抜き取られたか、女であれば強姦されて、処女を失ったような強い衝撃を受けて、なすことを知らず、自暴自棄になってしまった。

 そのために、自己を社会からはずされたアウトキャスト――除(の)け者とみなして、はずされた者だから何をしてもよい、何も責任がないという自虐的な態度をとるようになってしまったとしか、思えない。

 日本はまるで不良少年か、不良少女のような国になってしまったのだ。自棄(やけ)になって、自分に対する責任を負うことも拒んでいるのが、護憲派の本性なのだろう。

 護憲派を更生させなければ、日本が亡びてしまおう。

自衛隊機事故で得た違和感 憲法に自衛隊を書き込むべきだ

Date : 2019/05/21 (Tue)

 4月に、わが航空自衛隊の最新ステルス型F35戦闘機が、三沢基地から訓練飛行中に、青森県の日本海沖合で墜落する事故があった。

 はじめの報道では、パイロットが40代の2佐(国際的呼称では中佐)ということだった。尾翼が発見され、殉職した隊員が41歳の操縦幹部で、姓名が公表された。

 最新鋭の戦闘機パイロットが40代だったのは、自衛隊員の高齢化が進んでいるからだ。

 高齢化が、陸海空三自衛隊を蝕んでいる。

 列国のジェット戦闘機のパイロットは、30代で引退するものだ。

 若者が自衛隊に応募しないために、自衛隊は定員に満たず、陸上自衛隊をとれば15万人の定員に対して、13万人しかいない。中隊長は旧軍では20代か、30代だったが、陸上自衛隊では定年直前の48、9歳が、珍しくない。

 高齢化は、深刻だ。三自衛隊を年齢の樹に見立てると、幹部(国際的呼称では将校)、曹(下士官)、士(兵)のうち、曹ばかり異常に多いために、腹が突き出して、体を支えるべき脚が細い。

 このために、自衛隊は応募の年限が28歳だったのを、昨年から32歳に引き上げるかたわら、体重の制限も外した。

 それと並んで、防衛省は女性自衛官を増すことによって、補おうとしている。

 大手の保険会社が毎年行っている、青少年が憧れている職業の調査によると、警察官は入っていても、自衛官が入ったことが一度もない。国民の国防意識が弛緩しているのだ。

 私はF35戦闘機が洋上で遭難した直後に、三沢市の種市一正市長が搭乗員の安否を気づかうことも、殉職に哀悼の意を表することもまったくなく、陸地における墜落の危険のみを危惧して、飛行再開に反対したことに唖然とした。  これも、憲法に自衛隊が書き込まれていないからだ。

 もし、国軍であったとしたら、市長が国民の一人として、このような非礼を働くことができただろうか。

 岩屋防衛大臣が、今回の訓練中の事故について陳謝したが、陳謝する必要があったのだろうか。広報として必要であるならば、大臣ではなく、航空幕僚長か、制服の幹部が行えばよいことだ。

 日本を取り巻く国際環境が厳しいものとなっている時に、自衛隊を鵺(ぬえ)のような存在にしたままでいることは、許されない。鵺は伝説上の正体不明の怪獣である。

 政府は「自衛隊は軍ではない」という詭弁を、いまだに改めないでいるが、国民全員が自衛隊という呼称自体が欺瞞であることを、よく知っていよう。  江戸時代に、禁酒を強いられていた僧侶が、般若場といって誤魔化し、四つ足を食べてはならなかったので、猪を山鯨と呼んで、兎を鳥だということにして、いまでも1羽2羽と数えるようなものだ。

 自衛隊の存在を認めたうえで、応援している国民の大多数が、「普通科」(歩兵)「特科」(砲兵)「対地支援機」(攻撃機)「運用」(作戦)をはじめとする、謎めいた“自衛隊特殊語”を、理解できないでいる。

 いうまでもないことだが、自衛隊と国民、軍と国民は一体でなければならない。

 一日も早く、継子(ままこ)となっている自衛隊を憲法に書き込み、国民の実子にしなければならない。

「令和」の御代にこそ憲法改正を期する

Date : 2019/05/10 (Fri)

 早春に80代の親しい婦人の夫君が、長い闘病生活の後に亡くなった。医師だったが、歌人でもあった。

 私は悲嘆に暮れる夫人に、万葉集の一首の「行く方なき空の煙となりぬとも 思ふあたりを立ちは離れじ」を手渡して、慰めた。私は万葉集に親しんできた。皇子が恋した娘に先き立たれて、口ずさんだ歌である。

 4月1日に、新しい元号が発表された。万葉集が出典だった。私は日本の歴史ではじめて、元号を中国の漢籍ではなく、国書から採ったことを、何よりも喜んだ。

 明治は文明開化とともに、日本化の時代だった。天皇は江戸時代が終わるまで、即位礼に真紅の大袖に龍の縫い取りがある中国服を、召されたものだった。

 平成が200年ぶりの御譲位によって、終わる。私は平成を占領下で強いられた憲法を、改められなかったことによって記憶しよう。

 私は今上陛下が3年前の8月8日に、テレビを通じてお言葉を読まれたのを、謹聴した。

 ご高齢によってお疲れになられたから、譲位したいと訴えられた。

 私は月刊『WiLL』誌に、「これは天皇によるクーデターだった。明治天皇によって定められ、現憲法下で継承されている皇室典範は、天皇の譲位を認めていない。お言葉のなかで、皇室典範が定めている摂政制度を斥けられたが、天皇が法を改めるよう要求されることは、あってはならない」と、寄稿した。

 NHK社会部の記者がインタビューにきたが、私は「天皇のお言葉は憲法違反だったのに、どうして護憲を日頃説くNHKが、憲法違反のお言葉を放送したのか」とたずねたが、答がなかった。

 私は現行憲法を国際法に違反した、正統性がない「偽憲法」と呼んできた。

 現憲法には、多くの重大な瑕疵(かし)がある。なかでも、天皇を「象徴」として、国民より下に置いているのは、日本が歴史を通じて守ってきた伝統を歪めている。

 国会は一昨年6月に日本共産党を含む全会一致で、「天皇退位などに関する皇室典範特例法」を可決した。国会が天皇が現憲法の上にあることを、認めたのだった。譲位を「退位」と呼んだのは、天皇の御意志によって譲位されると、憲法に違反したからだった。

 今上天皇は英邁であられる。8月8日のお言葉によって、「象徴天皇制」を一撃で破壊されたのだった。

 陛下は聡明であられるから、その後、お言葉のなかで護憲派の反発を招いて、国論が割れないように、「象徴天皇としてのありかた」に、頻繁にお触れになられている。

 占領憲法に罅(ひび)が入ったのだった。令和の御代に憲法が改正されることを、強く期待したい。

 今日、天皇は身近なご相談相手を欠いておられる。天皇は日本の要(かなめ)であられるのに、皇居で孤立されている。 旧憲法下では、内大臣が宮内官として側近にあって、日常意見を求められたし、総理大臣以下閣僚や、軍幹部が頻繁に参内して拝謁した。

 ところが、宮内庁長官と侍従長は、全員が皇室の伝統についてほとんど無知である。

 11月に皇居において、天皇を天皇たらしめる大嘗祭が、執り行われる。

 古来から大嘗祭のために建てられ、すぐに撤去される大嘗宮の仮宮は、青い茅(かや)で葺(ふ)かれてきた。ところが、皇族のお1人が経費を節減するために板張りすべきだと、意見を述べられた。伝統についてご勉強が足りないと、お諫め申し上げねばならない。

 積水ハウスか、タマホームの建て売り住宅風では、伝統の尊厳を損ねてしまう。

 会計検査院によれば、3兆円が来年の東京オリンピックに投じられる。皇室あっての日本だが、オリンピックを催さなくても、日本は日本だ。

万世一系の天皇が統べておられる国・日本

Date : 2019/05/07 (Tue)

 新帝が御位を継がれたことを、寿(ことほ)ぎたい。

 御代替りが決まってから、ことあるごとに「平成最後の」といわれた。  皇室の存在が大きなものだと、痛感した。日本国憲法がどう規定しようが、万世一系の天皇が日本を統べておられる。

 天皇こそ日本を、日本たらしめている。世界に200あまりの国があるが、元首の家系を2000年以上も辿れる国は、日本だけだ。

 いったい、126人の天皇のもっとも大きな特徴は何だろうか?

 いつも謙虚であられ、つねに国民の幸福を真剣に願ってこられたことだ。どの天皇も世界のなかで、もっとも謙虚な人であられた。

 明治天皇は「国民のうへやすかれとおもふのみ わが世にたえぬ思なりけり」と、御製を詠まれている。

 世界のどの国も、皇帝や国王は最高権力者として、誰よりも高い徳を備えていると称して、傲慢に振る舞ってきた。

 歴代の天皇は大地震や、水害や、疫病などに見舞われると、自分の徳が欠けていたために災禍を招いたことを、国民に詫びる詔(みことのり)を発しておられる。第56代の清和天皇は大地震のあとで、「百姓(ひゃくしょう)(人民)何の事ありてか、禍毒に罹(たお)れる。憮然(ぶぜん)として愧(は)じる。責(せめ)深く予(われ)に在(あ)り」と述べられた。

 天皇のなかで海外の王侯のように、贅に耽った方はおいでにならない。天皇は力や財力がなくても、国民によって敬まれてきた。

 私は皇居にあがったことがあるが、海外の宮殿が豪華なことによって、人々を威圧するのと違って、財宝のような物が一つもない。

 天皇の何よりも大切なお仕事は、皇祖神と全国の神々の天神地祇(ちぎ)と、山や川などあらゆる自然に祈られることだ。

 私は幼いころから祖母に、「八百万千万(やおろずちよろず)様(さま)に感謝しなさい」と教えられたが、八百万(やおろず)も千(ち)万(よろず)も、「無数」を意味していない。私たちは神々や、山川草木鳥獣の万象の恵みを受けている。八百万(やおろず)は日本列島の異なる風土に生きるすべての人々と、自然を意味している。

 日本国民は世界の誰よりも、「和」を大切にしている。謙虚な国民で、互いに譲り合う。私たちは行列しても、目に見えない力が働いているように順番を守るし、八年前の東北大震災の時には「和(やわらぎ)」の心を尊んで、秩序を乱す者がいなかった。

 1億2000万人もの人口を擁しているのに、国民が同質だと信じている国も他にない。

 福沢諭吉が『帝室論』(明治5年)のなかで、「帝室は直接に万機に当らずして、万機を統べ給う者なり。直接に国民の形体に触れず、其(そ)の精神を収攬し給ふものなり」と論じている。

 天皇は他の国々と違って、覇者ではない。天皇は和の文化を一身に体現されておられ、すべてを包み込む。天皇は21世紀に入っても、日本の精神的な中核でおられる。

 他の国の君主は、みな覇者の血統をひいている。今日の中国などの独裁者はいうまでもなく、民主制度をとっている諸国においても、首長は選挙に勝った覇者である。

 天皇は日本の統治者であられる。そういうと、「日本国憲法を知らないのか。憲法は国民が主権者だと規定している。国民が日本の統治者だ」といって、反論する者がいよう。 統は「ばらばらなものを一つに統(す)べる」であり、治は「治(おさ)まる」を意味する。日本は天皇がおいでになるから、一つに纏まる。

グラムシの予言に慄然 衰弱する愛国心

Date : 2019/04/24 (Wed)

 アメリカ鷲と中国龍が、アジア太平洋の未来を賭けて争っている。

 かつての米ソ間の冷戦になぞらえて、「第2の冷戦」といわれている。  といって、自由主義対共産主義の抗争ではない。

 今日の中国は毛沢東時代と違って、共産主義と呼べない。 中国共産党による専制下にあるが、習近平主席の中国は「5000年の偉大な中華文明の復興」を呼号しており、独裁制とナショナリズムである中華主義が結びついている。

 習主席の中国は、春秋時代(紀元前722年~前481年)に生きた孔子を称えているが、「5000年の中華文明」は19世紀に生まれた共産主義と、まったく無縁なものだ。

 そのかたわら、豊かな先進自由諸国ではグローバリズムによって愛国心が蝕まれて、ナショナリズムが衰弱するようになっている。

 共産主義の脅威はもはや暴力革命や、一党独裁によるものではなく、伝統社会と国家を破壊しつつあるグローバリズムとなって、私たちを襲っている。  昨秋ワシントンを訪れた時に、アントニオ・グラムシ(1891年~1937年)の著作集を求めて、久し振りに読んだ。読みなおすと、この異端で鬼才だった共産主義者による予言が当たっていることに、慄然とした。

 グラムシといえば、日本で1960年代から70年代にかけて、新左翼の青年たちによってひろく読まれたものだった。

 グラムシはイタリア共産党のイデオローグとしてグローバリストであり、「ヘゲモニー(指導)装置」と呼ぶ「国家の消滅」を目標としたが、階級闘争によって歴史の必然として革命が成就して、共産社会が実現するというマルキシズムの理論を否定して、第2次大戦前に、粗暴で権威主義だとみたロシア(ソ連、中国、北朝鮮など)モデルの社会主義体制が、瓦解することを予見していた。

 グラムシは先進国において科学技術が進み、豊かさが増した結果、上部構造に従属してきた社会集団が分解して、ヘゲモニーが理論も、革命への自覚も欠き、まったく組織されることがない一般の人々に移ることによって、国家が消滅してゆくことを、見透した。

 そして伝統が培った生活慣習を、「歴史的堆積物」と呼んで、滓(おり)とみなした。人々が在来文化の鎖に繋がれてきたが、古い鎖が溶解してゆくと説いた。

 グラムシは個人に何よりも高い価値が与えられることによって、慣習によって束縛されてきた従属社会集団が、解体することを予見した。

 私たちの身の回りでも、社会を統べてきた人と人のあいだの絆や、日常用いられてきた言葉に託されてきた意味や、伝統的な儀礼などの慣習が、人々を束ねてきた機能を急速に失うようになっている。

 年を追うごとに、新年が新年らしくなくなっている。一つの例にしかすぎない。日本が日本らしくなくなっているのだ。

 人も企業も、全世界に通用する金(かね)を崇めるようになっている。金(かね)はグローバリズムそのものだ。

 人々はつい昨日まで、先人から受け継いできた社会の伝統文化や、徳目を尊んできたが、精神的に無国籍な若者や、LGBTなど、個人が聖なる存在となったために、私たちのすぐ目の前に無政府状態がある。

「制裁継続」を決めたトランプの腹の内

Date : 2019/04/10 (Wed)

    2月末、8ヶ月ぶりにハノイで開かれた、鳴り物入りの米朝首脳会談が終わった。

 前日、私は都内の帝国ホテルで経営者団体に招かれて、講演を行った。  

     私は「もし予想が外れたとしたら、もう一度お招き下さって、なぜ予想が外れたのか、詳しくお話したいと思います。北朝鮮が核兵器を手放すことはありえない。明日から始まる米朝サミットは、成果がなく終わるでしよう」と、述べた。

 米朝首脳会談の寸前まで、テレビにさまざまな専門家が登場して、アメリカのカードはこうだ、北朝鮮のカードは何だといって、米朝間で取り引きが行われることを、まことしやかに論じていた。こういった番組はニュース番組ではなく、物見高い視聴者を満足させるエンタテインメントなのだから、おもしろおかしくなるのは仕方がない。

 2日にわたった米朝首脳会談が終わった直後に、先の経営者団体の会長が電話で「よく適中しましたね」といって、誉めてくれた。

  私は金正恩委員長がトランプ大統領と再会して握手する時には、掌(てのひら)を垂直にださずに、水平に差し出すことになるはずだ、といった。一刻も早く制裁を解除して、お金が欲しいと急(せ)いたあまり、トランプ大統領が呑めない要求を行うことになるだろうと考えた。

 米朝首脳会談が物別れだったのは、上首尾だった。トランプ大統領の技が、1本決まった。

 トランプ大統領は会談後、金委員長を「よい友人だ」と誉めそやしたが、金委員長に何1つ土産を渡すことがなかった。今後、アメリカは北朝鮮に対する経済制裁を、いささかも緩めることがないから、金委員長の苦難が深まることになる。

 金委員長はハノイでしくじった。これには、親北・反日の文在寅韓国大統領が南北融和を焦って、金委員長にアメリカが北朝鮮に譲ることになるという、甘い期待をいだかせた責任が大きい。文大統領にとって大きな挫折だ。

 それにしても、トランプ大統領はニューヨークのマンハッタンで不動産業で財をなした父の子として、少年時代からマフィアや、建築業界の労働組合の幹部たちとつきあっていたから、相手を微笑を浮べて、誉めながら脅すのに長(た)けている。アメリカの建設業界の労働幹部は、マフィアによく似ていることで知られる。

 私はシンガポールにおいて第1回米朝首脳会談が行われた前から、北朝鮮が核兵器を捨てることはありえないと、説いてきた。核兵器なしには北朝鮮は経済が破綻した、みじめな小国にしかすぎない。アメリカの大統領と会談できるのも、核兵器の効用である。

 仮に北朝鮮が「非核化」を受け入れたとしても、核弾頭の所在や、核施設を「自己申告」することになっているから、隠すことができる。北朝鮮が無条件降伏をしないかぎり、北朝鮮全土を隈なく捜すことはできない。

 北朝鮮はアメリカと話し合っているかぎり、核実験や、ミサイルの試射を行うことができない。これはトランプ大統領の大きな功績だ。

 それにしても、金正恩委員長は、トランプ大統領が“ロシア疑惑”によって追い詰められ、来年の大統領選挙へ向けて功名をたてることを焦っているという、アメリカのマスコミの報道によって騙されたのではないか。

 アメリカの主要なマスコミはこの前の大統領選挙で、ヒラリー候補を支持して惨敗したために、日本のマスコミが「反安倍」であるように、反トランプ報道に血道をあげている。

 “ロシア疑惑”がトランプ政権の致命傷となることはありえないし、トランプ大統領の支持率はかえってあがっている。

 北朝鮮の金体制が崩壊しないかぎり、北朝鮮の脅威は去らない。日本は、中国の脅威にも、備えなければならない。 日本として米朝の話合いが続くあいだ、防衛力の強化を急ぐべきである。

中国、北朝鮮、“日本国憲法”の脅威に直面する日本

Date : 2019/04/03 (Wed)

 与党が衆参両院で憲法改正を発議できる議席の3分の2を占めているのにもかかわらず、憲法改正へ向けた歩みが滞っている。

 朝日、毎日、読売新聞、共同通信社などによる世論調査をみると、「改憲を急ぐべきでない」という回答が、改憲に取り組むべきだという意見を、上回っている。

 このままゆくと、安倍政権が続くあいだに、戦後72年にもわたって、日本の国家形態、統治組織、統治作用を規定してきた“占領憲法”を、改正することができるか、不安に駆られる。

 アメリカは日本占領下で、日本がアメリカの軍事保護なしには亡国となる「日本国憲法」を、強要した。とうてい独立国の憲法といえないものだ。日本が二度と独立国となることを、否定していた。

 もうすぐ、平成の30年あまりが終わるが、このあいだに日本を取り巻く国際環境が、いっそう厳しいものとなって、日本が独立することを強いられている。

 日本が置かれた状況が、アメリカによった占領下の時代と一変したというのに、いまだにアメリカの占領下にあることを、前提としている憲法を奉じている。

 米朝首脳会談が8ヶ月ぶりにハノイにおいて鳴り物入りで行われたが、トランプ大統領は金正恩委員長が経済制裁の緩和を求めたのに対して、金委員長を「私の友人だ」とおだてながら、何一つ与えることなく物別れに終わった。  上々の首尾だった。私は以前から北朝鮮が核兵器を手放すことはありえないと論じてきたが、アメリカは経済制裁を加え続けるから、手ぶらでピョンヤンに戻った金委員長の苦境は、いっそう厳しいものになる。

 北朝鮮は米朝間で話し合いが続いているあいだは、核実験も、ミサイルの試射も慎むはずだ。これは、トランプ大統領の大きな功績である。

 といって、北朝鮮が核兵器を捨てることは、考えられない。

 習近平国家主席の中国は、アメリカによる経済の締めつけによって、蹌踉(よろ)よろめいている。アメリカの顔色を窺(うかが)って、しばらくは“よい子”を演じることになる。だが、アジア太平洋の覇権を握ろうという、野望を捨てることはない。

 北朝鮮の脅威と中国の脅威は、しばらく中休みとなるが、去ることはない。日本としては、「鬼の居ぬ間に洗濯」ならぬ、このあいだに防衛力の強化を急ぎ、憲法改正に取り組まなければならない。

 アメリカは、来年11月の大統領選挙へ向けて、動きはじめた。

 私はアメリカで、新聞、テレビの主要なマスコミが“反トランプ熱”を煽り続けているが、それにもかかわらず、トランプ大統領の支持率が上がっており、このままゆけば、トランプ大統領が再選されることになると思う。

 民主党は“金権候補”だったヒラリー夫人を担いで敗れた反動として、名乗りをあげている候補はそろって、経済格差の是正、社会福祉の充実、国防費の大幅な削減など訴えており、民主党が劇的に左傾している。

 もし、民主党が政権を奪還すれば、日本を守る意志が弱まることになりかねない。

 日本は、3つの安全保障の深刻な脅威に、直面している。中国、北朝鮮、日本国憲法だ。

 日本は世界のなかで、憲法が自国の安全を脅かしている唯一つの国なのだ。

日本はこれから世界に大きく貢献しよう

Date : 2019/03/29 (Fri)

 2月10日にフィギュアスケート四大陸選手権が、カリフォルニア州アナハイムで開催されて、宇野昌磨君が初優勝を果たした。21歳の快挙だった。  

 テレビで観戦したが、表彰台にあがった日の丸が美しかった。日の丸が外地で翻るのを見ると、目に沁みる。

 能楽堂のミュージカル

  昨年の暮れだったが、都内青山骨董通りの能楽堂で、ビートルズのジョン・レノンと、オノヨーコを主人公としたミュージカルが上演された。ヨーコが私の母方の従兄姉で、ジョンとも親しかったので、プログラムに解説を寄せた。

 「ヨーコとジョンは近代文明社会の人々が虚ろな欲望や、学位、偽りの地位によってがんじがらめに縛られているのに対して、拘束を捨てて、人間らしく生きることを求める真の革命の旗手であり、ロマンチックな破壊者だ。

 ジョンはヨーコと2人で書いた『イマジン』のなかで、『宗教がなくなれば、世界が平和になる』と歌って、キリスト教を否定したが、『私が来たのは人が生命(いのち)をえ、与えられた生命いっぱいに生きなさい』という、イエスの新約聖書の力強い言葉が響いてくる。

 2人は、今日、多くの人が人造人となっているなかで、自然人だった。近代が老いてゆくなかで、抗争や戦争を招く理性の時代が疲れ果てて、独善的な宗教や拝金社会が斥けられて、人と自然を心で感じる信仰の時代を引き寄せてくれた」

 日本に誇りを持とう

 やはり昨年になるが、私は多くの学者が集まった「国家ビジョン研究会」の会長をつとめることを懇請されて、引き受けた。分野ごとに部会が設けられているが、座長の1人のN氏から新著の原稿に目を通すことを求められた。

 そのなかで、日本のいくつかの制度について、国際的な基準から逸脱した「ガラパゴス現象」だと批判しているのが、目にとまった。もっとも、日本独自の慣習や制度を取り上げて、「ガラパゴス化」とか「ガラパゴス現象」といって、自嘲する者が少なくない。

 とくに、カルロス・ゴーン前日産会長の拘留が長期にわたったのに対して、日本の司法制度が西洋人の眼に、後進的な「ガラパゴス現象」に映るから、恥しいという声がきかれた。

 もっとも、フランスの有力紙の記者が来京して、わが家で一夕持て成したが、ゴーン氏が社費でベルサイユ宮殿で結婚披露宴を行ったのをはじめ、悪事が次々と露見してからは、日本に対する批判が消えたと語った。

  ガラパゴス諸島といえば、エクアドル西岸から西へ1000キロ離れた太平洋の離島群で、外界から隔絶されてきたために、多くの珍しい固有の動物が棲息していることで、知られる。

 明治政府が西洋の脅威から日本の独立を守る必要に迫られて、強行せざるをえなかった文明開化が行き過ぎたのか、多くの日本人がいまでも自信を欠いて、西洋を恐れることが習性となっている。もう文明開化を乗り越えて、よいのではないか。

 パリ会議の100周年

 2月12日は、日本全権団が第1次世界大戦の戦後処理を行ったベルサイユ会議としても知られるパリ会議において、国際連盟を創設するのに当たって、連盟規約に「人種平等原則」を盛り込むように提案したところ、11対5で可決されようとした寸前に、議長をつとめていたアメリカのウィルソン大統領が「このような重要な案件は、全会一致でなければ採択できない」といって票決を斥けてから、ちょうど100周年に当たった。アメリカは国内で黒人の人権を、蹂躙していた。

 この日、私が代表となって、国会議事堂前の尾崎記念会館において、日本が国際連盟規約に「人種平等原則」をかえることを求めた百周年を、記念する集会を催した。国会議員の多くの有志も駆けつけてくれた。

 ところがどの新聞も、テレビも、この世界史的な百周年に触れることが、まったくなかった。日本が先の大戦を大きな犠牲を払って戦った結果、まずアジアの諸民族が独立し、その高波がアフリカ大陸も洗って、世界の諸民族が解放された。

 日本は世界の光となった。ロシア革命や、フランス革命が行われてきたが、日本が今日の人種平等の世界を実現したことこそ、人類史における何よりも大きな革命ではないか。

 日本という太陽が昇って、世界を隅々まで照らした。日本の力によって人類のありかたが、根底から改まったのだ。

 「八紘一宇」こそ人類の理想

 日本は初代の神武天皇が橿原(かしはら)において即位された時に、「八紘(あめのした)(世界)をおおいて宇(いえ)(1つの家)にせむ」という「八紘一宇」の勅(みことのり)を発せられたが、歴史を通じて人種によって差別したことがなかった。

 日本がアメリカの不当な圧迫に耐えられず、真珠湾を攻撃した翌年1月に、東條英機首相が国会演説を行って、戦争目的として「人種差別の撤廃と、すべての民族の解放」を掲げたことを、私たちは忘れてはなるまい。

 日本は東アジアにあって、長く外界から隔絶された列島において、きわめて独特な文化を培った。「ガラパゴス現象」といって自国を嘲る人々は、日本の国柄を時代遅れのものとして、蔑んでいるにちがいない。

 「ガラパゴス現象」と日本

 私は幼少の頃から、外交官だった父から、100年前に日本全権団が晴れの国際舞台で、人種平等を主張したことに、誇りをいだくように教えられて、育った。

 6年前に、私はセルビア共和国のアダモヴィッチ・ボヤナ大使によって、大使館に昼食に招かれたことがあった。

 私は挨拶を終えると、すぐに第1次大戦後のパリ講和会議において、日本全権団が戦後世界を管理する国際機構となる国際連盟憲章に、「人種平等条項」をうたうように提案したのに対して、セルビアが賛成票を投じてくれたことに、御礼を述べた。

 すると、女性の大使が驚いて、「着任してから、このことについて御礼をいわれたのは、はじめてです」といって、喜んでくれた。

 幕末にアメリカをはじめとした、西洋諸国の艦隊が来寇するまでの日本は、まさに「ガラパゴス化」という比喩が、当たった。

 2月はじめに、宗教界の指導者が集まった新年会が、都内の明治記念館で催された。

 いつものように、仏教諸派、教派神道の領袖から、カトリック教会の司教までが和気藹藹と、テーブルを囲んでいた。

 神社本庁の田中恆清総長が開会の挨拶をされた後に、乾杯の発声を行うように依頼された。

 私は幕末から明治にかけて、日本の浮世絵を中心としたジャポニズムが、西洋の絵画、庭園、建築、服飾などに深奥な影響を及ぼしたが、視覚的なものにとどまったのが、いまでは日本の万物に霊(アニメ)が宿っているアニメや、自然と1つになった和食、エコロジーから、和の心まで、かつてのジャポニズムをはるかに大きく超える精神的な日本の高波が世界を洗っており、和の信仰をひろめることによって、抗争に明け暮れる人類を救う使命が、各位の肩にかかっていると述べて、杯をあげた。

 日本の文化の出番だ

 抗争が絶え間ない理性の時代が疲れ果て、近代が老いてしまったなかで、日本の心の文化の出番が迫っている。

 11月にローマ法王が、長崎、広島を訪れるが、このところ法王が仇敵であってきたユダヤ教のシナゴーグ(礼拝堂)の祭壇に跪いたり、ロシア正教の総司教と和解したり、かつては考えられなかったことが起るようになっている。

 西洋ではより寛容な社会が到来して、日本の和の心の根といってよいエコロジーが、キリスト教に取って代わりつつある。

 私たちは世界に日本の時代が訪れることを、目前にしている。

アントニオ・グラムシを知っていますか?

Date : 2019/03/25 (Mon)

 平成の最後となる新しい年が、明けた。

 いつものように、八百万千万様(やおろずちよろずさま)に感謝したうえで、屠蘇を酌みながら、色鮮やかな御節にしばしみとれた。

 このような親から子へ受け継がれてきた慣習が、日本を日本たらしめてきた。

 祖母や父母が、初(はつ)明り、元旦の空の色を初茜(はつあかね)、年が明けて初めて食べるものを初物(はつもの)、はじめての入浴を初湯(はつゆ)、はじめて見る雀を初雀、鳥の声を「あ、初声(はつごえ)だ」や、初買いといったものだった。

 母が初化粧、初髪、はじめて着物に袖を通すのを初袷(はつあわせ)というたびに、子供心にすべてが改まるのだと思って、心が引き締まった。

 三賀日には、友人たちが家にいても退屈なのか、年賀に訪れてくれた。それでも、年が改まってはじめて会う初会(はつえ)だから、清々(すがすが)しい。

 もう3、40年になるか、このところ新年が新年らしくなくなった。

 近くの神社に詣でるために通りに出ると、初荷もなくなった。

 初(はつ)がつく言葉といったら、初夢、初詣、出初式、魚河岸(かし)、青果市場(やっちゃば)の初商い、茶道の初釜、武道の初稽古など、数えるほどしか残っていない。昭和は遠くなった。

 年末からの休みを、昨秋ワシントンを訪れた時に、アントニオ・グラムシ(1891年~1937年)の英文の著作集を求めて、久し振りに読んだ。  グラムシはイタリア共産党の傑出した思想家だったが、私は1960年代にアメリカに留学した時に著作集に出会った。読みなおすと、この異端な共産主義者による予言が当たっていることに、慄然とさせられた。

 グラムシは当然のことに、共産主義者としてグローバリストであり、「ヘゲモニー(指導)装置」と呼ぶ「国家の消滅」を目標としたが、階級闘争によって歴史の必然として革命が成就して、共産社会が実現するというマルキシズムの理論を否定して、第2次大戦前の1937年以前に、粗暴で権威主義だとみたロシア(ソ連、中国、北朝鮮など)モデルの社会主義体制が、瓦解することを予見していた。

 グラムシは先進国において科学技術が進み、豊かさが増した結果、上部構造に従属してきた社会集団が分解して、ヘゲモニーが理論も、革命への自覚も欠き、まったく組織されることがない、一般の人々に移ることによって、国家が漸進的に消滅してゆくことになると、見透した。

 グラムシは伝統に根ざしている慣習を、「歴史的堆積物」と呼んで、滓(おり)とみなした。人々が在来文化の鎖によって繋がれてきたが、古い鎖が溶解してゆこうと説いた。

 グラムシは慣習によって束縛されてきた従属社会集団が、個人に何よりも高い価値が与えられることによって、解体してゆくことを予見していた。私たちの身の回りでも、社会を統べてきた慣習が、人々を束ねてきた機能を急速に失うようになっている。

 この10年ほど、アメリカではクリスマスが商人が仕掛けた罠にいっそうなるかたわら、「メリー・クリスマス」という挨拶を交わすことが、禁忌(タブー)となっている。

 アメリカの都市部で、多くの国民の教会離れが進んでいるが、無信者、ユダヤ教徒や、イスラム教徒などを差別するといって、「ハッピー・ホリデイズ」と挨拶するのが、良識とされるようになっている。

 オバマ政権の最後の年に、自分がみなしている性別に従って、男女どちらの便所を使ってもよいという、大統領令が発せられた。さすがに、いくつかの州が憲法違反として、連邦最高裁に提訴した。

 この大統領令は、トランプ政権によって撤回されたものの、リベラルな有権者の牙城であるカリフォルニア州では、いまだに多くの保育施設、幼稚園、学校などのトイレに、「ジェンダー・フリー」(性別なし)と掲示しており、保守派の州民が強く反発している。

 4年前になるが、『ニューヨーク・タイムズ』紙が、「ミスター、ミセス、ミス」と呼ぶと、「差別」になるから、「Mx」と呼ぶのが正しいという、かなり大きな記事を載せていた。

 その数日後に、アメリカ大使館のクリントン大使の次席だった、女性の公使と夕食会で会ったので、「Mxを何と発音するのですか?」とたずねたところ、あなたはアメリカ通を自称しているくせに、そんなことも知らないのかという表情を浮べて、「それは“ミックス”と発音します」と、教えられた。

 このところ、日本を含めて先進社会で、“差別語”を排除する“言葉狩り”が、力を増している。

 グラムシは言葉が備えている強い力に注目して、「言語は世界観を表しており、日常用いられる言葉が、人々の思考を変えてゆく」と述べているが、言葉と慣習こそが社会をつくってきた。

 私はグラムシの論集をはじめて読んだ時には、才気溢れる夢想家だとしか思わなかった。だが、未来を予見していたのだ。

 個人を聖なる地位につけると、すべての人のありかたを尊重せざるをえなくなって、差別と区別の境い目が消える。男女をはじめ、区別すること自体が差別となる。

 日本でもLGBTが市民権をえて、脚光を集めている。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスセクシュアル(性同一性障害者)の頭文字であり、先天的、後天的な性的指向をもつ人々を指している。

 昨年、杉田水脈衆議院議員が「少子化対策の予算を、LGBTに使うこと」を批判したところ、メディアによって叩かれた。1月に平沢勝栄代議士が講演会で、「LGBTなど同性愛者ばかりとなると、国が潰れてしまう」と述べて、非難を浴びた。

 私は杉田議員、平沢議員による指摘のほうが正しく、大騒ぎするほうが誤まっていると思う。

 もっとも、アメリカでは『ニューヨーク・タイムズ』をはじめ、大手の新聞、テレビは「LGBTQ」といって、かならず「Q」がついている。Qはクイアーqueer(変態)で、クイアーも差別の対象としてはならない。10年ほど前までは、「クイアー」は白眼視されたが、いまでは胸を張って「私は(アイム・)変態だ(クイアー)」といえるようになっている。いまのところ、日本ではまだQが除外されている。 イギリスでは『ロンドン・タイムス』をはじめ大手のメディアが、LGBTQIといって、Iを加えている。Iは「インターセックス」の頭文字で、自分が男か女か分からない人を指しているそうだ。

 最近、イギリスで行われた調査によると、LGBTQIが市民権をえるようになってから、LGBTQIの人口が急増している。イギリスの知識人雑誌『スペクテイター』によれば、LGBTQIが3人に1人に達しているという。

 イギリスの友人からロンドンの街角で、スシなどの日本料理を宅配するバンに、「Creating a world where everyone believes in their authenticity」(自分の価値を確認できる世界を創ろう)という宣伝文がかかれていたのを見た、という手紙を貰った。

 和食がひろまっていると知らせてくれたのだが、私にはいったいどうして、和食が自分の価値に係わっているのか、理解できなかった。

 他のあらゆる商品についても、消費者が自己中心になって、自分が聖なるものとなったために、1人ひとりの嗜好に合わせなければならない。画一的な大量生産、大量販売の時代が、過去のものになってしまった。

 それとともに、画一的だったからこそ、時代を超えて社会を束ねてきた慣習が、力を衰えさせるようになっている。

 グラムシは、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」、アンチ・グローバリズムのイデオローグの教本となっているといわれる。ホワイトハウスの国家安全会議(NSC)の親しい補佐官も、「アメリカが溶解してゆくのを防がねばならない」といって、熟読していた。

8ヶ月ぶりの米朝首脳会談 手ぶらで帰った金正恩委員長の誤算

Date : 2019/03/22 (Fri)

 8ヶ月ぶりにハノイで、米朝首脳会談が開かれた。物別れになったのは、上首尾だった。

 サミットの前日、私は都内の帝国ホテルで、経営者団体の例会で講演を行った。

 私は「北朝鮮が核兵器を手放すことはありえない。米朝サミットは、まったく成果がなく終わろう」と、予想した。

 トランプ大統領は会談後、金正恩委員長を「よい友人だ」と誉めそやしたが、何一つ土産を渡すことがなかった。アメリカは北朝鮮に対する経済制裁を緩めないから、金委員長の苦境が深まることになる。

 北朝鮮はアメリカと話し合っているかぎり、核実験や、ミサイルの試射を行えない。これは、トランプ大統領の大きな功績だ。

 金委員長は、ハノイでしくじった。トランプ大統領が“ロシア疑惑”によって追い詰められ、来年の大統領選挙へ向けて功名をたてるのを焦っているから、北朝鮮に譲ろうという、アメリカの偏向したマスコミの報道によって、日本の識者と同じように騙されたのだ。

 アメリカの主要なマスコミは、日本のマスコミが「反安倍」であるように、根のない反トランプ報道に血道をあげている。 “ロシア疑惑”はトランプ政権の致命傷にならないし、トランプ大統領の支持率はかえってあがっている。

 このままゆけば、トランプ大統領は再選されることとなろう。

 民主党はこの前の大統領選挙で、金粉に塗(まみ)れたヒラリー候補を担いで敗れてしまった反動として、これまで大統領選に名乗りをあげた候補は、全員が左旋回している。

 レースに加わった顔触れのなかで、誰よりも支持が高く、最有力といわれているのが、前の選挙でヒラリー候補に肉迫をした、77歳のバニー・サンダース上院議員だ。サンダース議員は自らを「社会主義者(ソシアリスト)」だと呼んでいるが、昔、ソ連を称えたこともあった。

 大統領候補の指名レースに参入した顔触れの大多数が、「民主社会主義者」だといって、経済格差の解消、富裕税の導入、社会保障の充実、国民健康皆保険、環境保全、国防費の削減などを訴えている。

 やはり77歳になるジョー・バイデン前副大統領は民主党主流派で、出馬すれば有力候補になるといわれる。

 「社会主義(ソシアリズム)」という言葉が、アメリカで甦ったのは、稀有(けう)なことだ。これらの候補の支持者は、北欧型の高度福祉国家を目指している。“アメリカ・ファースト”の変形だといえるが、日本を守る意欲が萎えよう。

 たしかにアメリカでは、富裕層と一般国民との所得の格差が拡大してきた。日本ではカルロス・ゴーン前日産会長が、国民からみて桁外れな報酬を手にしていたが、アメリカの新聞によれば、2017年にゴーン氏の1690万ドルに対して、日産より規模が小さいGMのマリー・バラ会長が2190万ドルを受け取っていた。世界一の自動車メーカーのトヨタの会長は、僅か400万ドルだった。

 習近平国家主席も終身主席となって悦に入っていたが、米中対決を免れようとして、トランプ大統領のもっぱら鼻息を窺っている。

 北朝鮮が非核化することはありえないし、中国も、アジアと太平洋の覇権を握る野望を、捨てることはない。

 日本が直面する大きな脅威が、3つある。中国と北朝鮮と、日本国憲法だ。日本は憲法が自国の存立を脅かしている、唯一つの国だ。

「専守防衛」ほど無意味なものはない

Date : 2019/03/04 (Mon)

 日本は世界のなかで、自国の憲法が安全保障の最大の脅威となっている、唯一つの国だ。

 憲法はその国の精神を、表わしている。

 前文が、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」と述べて、日本だけに先の大戦の全責任を、一方的に負わせて、日本が悪い国だときめつけている。

 この憲法のもとで、日本は自虐的な態度をとってきたために、国外から軽くみられ、虐げられる原因をつくってきた。

 前文はさらに、一国の安全を世界の「諸国の公正と信頼して、われらの安全と生存を保持」すると、宣言している。 日本国憲法が世界の現実を歪めてきたために、国民が危険な幻想に浸ってきた。

 日本は人にたとえれば、幻視、幻聴を病んできたために、人格が崩壊して、正常な社会的関係を結ぶことができない統合失調症を患っている。

 このところ、韓国が日本を好き放題に嬲(なぶ)っているために、日本で嫌韓感情が沸騰している。

  書店に嫌韓本が並び、雑誌も韓国に呆れ果てて、韓国を憐れむ記事で埋まっている。

 慰安婦(ウイアンプ)など両国間の合意を踏み躙ったうえで、徴用工(ジンヨンゴン)、火器管制レーダーの照射問題など、常軌を逸した振舞いがとまらない。

 韓国は現実を無視して妄想にとらわれているから、とうてい国家と呼べない。日本中が韓国を疫病のように、みるようになっている。

 韓国は国として体をなしていない。政府もどう対応したらよいか、途方に暮れている。

 だが、いったい日本に韓国を見下したり、嘲る資格があるものだろうか。

 昨年、政府が3万トン級の“いずも型”ヘリコプター搭載護衛艦を空母に改装して、F35Bステルス戦闘機を搭載すると発表すると、岩屋防衛相が「状況に応じて戦闘機を載せるから、他国への脅威とはならない」と述べ、自公与党が「専守防衛の枠内で運用する」という確認書を交換した。

 だが、危機が迫ってから、艦載機を載せるのでは、訓練や運用に支障はないのだろうか。

 テレビのワイドショーで、識者が真顔をして「攻撃空母を保有するのは、憲法違反だ」と述べていたが、番組の他の出演者は誰も非常識な発言だと、思わなかった。多くの視聴者も同じことだったろう。

 中国の国防支出は中国政府の発表によっても、1988年以後、毎年2桁で増して、日本の10倍以上もあり、アメリカにつぐ軍事大国となっている。

  私には“いずも級”護衛艦を、F35B戦闘機を8機か、10機搭載する小型空母に改装しても、どうして中国に脅威を与えることになるのか、理解できない。

 「専守防衛」という言葉は、日本国憲法と同じように、日本の国内にだけ通用して、外国語に訳することが、まったくできない。「専守」という概念自体が、世界のどこにも存在していない、無意味な言葉だ。

 日本語でも、具体的に何を意味しているのか、分からない。

 いったい「専守に徹する」スポーツ競技が、あるものだろうか。読者諸賢のなかで、説明できる方がいられるだろうか。「必要最小限の防衛力」も、意味がない言葉だ。

 日本の独立と国民の生命を、わけが分からない言葉に託して、よいはずがない。

 人体の健康と同じように、平和は努力して守らねばならない。平和を守る努力をしないのでは、平和を大切にしているといえない。

安全保障の脅威は日本国憲法 「専守防衛」は日本だけが使う言葉

Date : 2019/02/22 (Fri)

 韓国の文在寅政権が日本を好きなように嬲(なぶ)っているのに対して、日本で嫌韓感情が沸騰している。

 書店に嫌韓本が並び、雑誌も韓国に呆れ果てて、韓国を憐れむ記事で埋まっている。

 慰安婦(ウイアンプ)をめぐる合意を踏み躙ったうえで、徴用工(ジンヨンゴン)、火器管制レーダーの照射問題に続いて、文大統領が日本に「反省(パンソン)を求める」発言を行い、常軌を逸した振舞いがとまらない。

 韓国は現実に目をつむって、妄想にとらわれている。とうてい国家と呼べない。

 日本中が韓国を疫病のようにみなすようになっている。政府もどう対応したらよいか、途方に暮れている。つける薬がないのだ。

 韓国は頭痛の種だ。といっても、日韓関係を軋(きし)ませた責任は、慰安婦問題をつくりだした朝日新聞と、故なく謝罪した河野洋平官房長官(当時)など、韓国に対して毅然たる態度をとるべきところを、紙面を売るためにニュースを捏造したり、侮られるもとをつくった日本側にある。

 日本は自虐的な態度をとってきたために、は国外から軽くみられて、虐げられる原因をつくってきた。

 韓国は歴史を通じて中国の属国(ソグク)だったために、物事を自主的に決める力がなく、強い者に諂うかたわら、弱い者に対して居丈高になって、苛める習性がある。

 韓国は国として体をなしていない。このままでは、国として成り立ってゆかないだろう。

 憐れむべき国だ。だが、いったい日本に韓国を見下したり、嘲る資格があるものだろうかと思う。

 昨年、政府が3万トン級の“いずも型”ヘリコプター搭載護衛艦を空母に改装して、F35Bステルス戦闘機を搭載すると発表したが、自公与党が「専守防衛の枠内で運用する」という確認書を交換した。

 テレビで識者が真顔をして、「攻撃空母を保有するのは、憲法違反だ」と述べていたが、番組の他の出演者は、誰も非常識な発言だと思わなかった。多くの視聴者も、同じことだったにちがいない。

 中国の国防支出は中国政府の発表によっても、1988年以後、毎年2桁で増して、日本の10倍以上もあり、アメリカにつぐ軍事力を擁している。

 私には、“いずも級”護衛艦を、F35B戦闘機を8機か、10機搭載する小型空母に改装しても、どうして中国に脅威を与えることになるのか、理解することができない。

 本誌の前号でも指摘したが、「専守防衛」という言葉は、日本の国内だけで通用して、外国語に訳することがまったくできない。「専守」という概念自体が、世界のどこにも存在していない、意味がない言葉だ。

 いったい、「専守する」スポーツ競技があるものだろうか。「必要最小限の防衛力」といっても、武芸や、スポーツに適用できるだろうか。

 一国の安全を「諸国の公正に信頼して、われらの安全と生存を保持」するという日本国憲法からして、世界の現実を受けいれることを拒んで、妄想に浸っている。

 日本は人にたとえれば、幻視、幻聴を病んでいるために、人格が崩壊して、正常な社会的な関係を結べない、統合失調症を患っている。

 日本は自国の憲法が安全保障の最大の脅威となっている、唯一つの国だ。

グローバリズムを破壊したトランプ政権の功罪

Date : 2019/02/12 (Tue)

 トランプ大統領は、大手マスコミによれば乱暴・粗暴で、勝手な思い込みによって、相手構わず独り芝居をしているといわれるが、昨年11月で2年が経過した。

 トランプ大統領は、それまでアメリカの政治のまったくの部外者だったが、登場したことによって、世界に激震が走り、世界のありかたが大きく変わった。  

     トランプ政権の2年間をひと口でいえば、国際主義――グローバリズムが支配していた世界を破壊して、世界の潮流を逆流させた。僅か2年で、それぞれの国を伝統的な姿――というと、古い世界に戻した。

 グローバリズムが何だったかといえば、世界経済を支配下に置こうとする、アメリカの大企業がもたらしたものだ。 アメリカの大企業は利潤のみ追求して、自国の大衆を犠牲にして、無国籍な経営を行い、製造業を中国などの低賃金の諸国に放り投げてきた。

 そのために、どの国においても所得の格差が拡がって、伝統的な共生社会が破壊され、人と社会、人と人との繋がりが断ち切られた。

 そのかわりに「個」を尊重して、いっさいの差別や、区別を悪とみなすようになった。オバマ政権のもとで大統領令が発せられて、自分が信じる性によって、男女どちらのトイレを使ってもよいことになり、LGBTをはじめとする人々が、大手を振って闊歩するようになった。

 『ニューヨーク・タイムズ』紙をはじめとするアメリカの大手新聞は、LGBTQとかならず書いているが、日本ではさすがにQを省いている。Qはqueer(クイアー)、変態の意味であって、変態も先天的な個性とされ、今日のアメリカでは「私は変態だ」と、胸を張っていえるようになった。

 アメリカの大手メディアや、著名研究所や、富裕層、高所得の識者は、大企業によって養われて、潤(うるお)ってきたから、トランプ非難の大合唱を行っている。

 大手メディアは「トランプ大統領が、アメリカ社会を分断している」と、糾弾している。

 だが、事実はまったく違う。グローバリズムによって、アメリカ社会が分断されていたから、我慢できなくなった大衆が立ち上がって、トランプ大統領が誕生したのだった。

 金銭は国境を越えて動くから、国籍がない。グローバリズムは結局のところ、拝金主義だった。

 もっとも、拝金主義は忌まわしいが、国を富ませ、国民の活力を増すために、金(かね)を稼ぐことは、おおいに奨励されるべきことだ。

 福沢諭吉が「文明は金銭だ」と断じているが、江戸時代後期に日本精神を明らかにした国学者の本居宣長は、「金銭は有用であって、金銭が穢いという漢意(中国の偽善的な考え)に染まってはならない」と、説いている。金銭はあくまでも国力を強め、国民の福祉のために役立てなければならない。

 日本でも戦後73年にわたって「国際化」とか、「国際人」がもて囃され、グローバリズムによって蝕まれてきた。

 財務省による報告書『国際収支状況』によれば、日本企業による平成17(2005)年から平成25(2013)年までの海外直接投資額は、アメリカが1位で18兆5634億円、2位が中国で7兆890億円、3位がオランダで6兆4千億円強、4位がイギリスの5兆円強、5位がケイマン諸島の6兆2千億円あまりだった。

 多くの日本企業の工場が、アメリカ、中国、イギリスに存在するものの、オランダにはゴーン前日産会長の豪邸がある他には、ケイマン諸島と同じように何もないから、納税を回避するのを目的としていたと思われる。

 トランプ政権の「アメリカ・ファースト」は、アメリカの国益を重んじようという雄叫びだ。時代が「日本ファースト」に立ち戻ることを、求めている。